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転機ー2

 会話が途切れたので、夕食会はお開きとし、僕と京子ちゃんはメイドさんたちの部屋へ行く。

 かなでもミカエルもいるはず。


 すっかりメイドさんの部屋が話をする場みたいになっている。

 なぜなら、どこへいってもメイドさんが付いてくるようになったので、ここでも同じかと思うようになった。

 それに、少しずつメイドさんたちが、僕と京子ちゃんの関係について、意識をし始めた。

 婚約をするわけでもないのに、二人きりになったり、目の届かないところに行くのはダメらしい。

 かなでたちと一緒でも。ならと、ここが一番やましくない。




 まずは猫二匹、シロタエとリッカをこの一か月預けることをお願いする。京子ちゃんは猫好きになったので、喜んで引き受けてくれる。言わなくても、何をして欲しいかはわかっている。毎年のことだしね。

 で、次に、学園の話をする。さっきのことを報告。ここにはミレーヌもいる。


「お母さん、王都の学園に行っていいの?」


 ときらきらのお目でミレーヌに聞くかなで。


「ご主人様がいいとおっしゃっているので、いいのだろうけど、お父さんと相談だよ」


 と、まだ決定ではないと言っているミレーヌ。


「そもそもどういう立場で行くのか。平民が望んで行けるところではないんだよ。だって、考えてみなよ。平民がみんな行きたいと言ったら、学園は溢れてしまうだろう。だから、平民については、選抜されるはず。学園の中では身分差はないというコンセプトだけど、将来の関係性の構築のために行くのだから、完全にないとは言えないだろうし」

「テストの成績で貴族も平民もなく、入学できるのではないのですか?」


 と、京子ちゃん。

 それに対して、「表向きはね」っとため息のミレーヌ。まあ、そうだろうな。と言うことは、


「頑張って勉強して、トップ合格を目指せば落ちないんじゃない?」


 って、軽く言ってみる。

 が、メイドさんたちが目を見開いている。そんな難しい試験なのかな。

 というか、メイドさんたち、知っているのかな?




 そうこうするうちにお休みの時間。

 京子ちゃんは子猫二匹を受け取りに来て、部屋へ戻っていく。おやすみなさい。


 僕も、部屋に戻って、メイドさんにも下がってもらう。


「キザクラ、子供達に注意しておいてね、騎士団に稽古を求めるなって」

「にゃーん」


 と、キザクラ。

 わかっているのかいないのか。

 マイヒメたち四匹は知らん顔を決め込んでいる。

 僕としては、強くなって欲しいので、止めたくはない。だから、注意くらいがちょうどいいと思う。




 次の日、また問題が起こった。

 僕を探しに来たのは、ホーンラビット養育場の管理人さん。


「坊ちゃん、白黒と白茶と縞の入った二匹の猫をご存知ですか? 坊ちゃんが飼っていらっしゃると聞いたのですが。」


 ……第二世代だろう。

 嫌な予感がしているのを隠しつつ。「うん」と答える。何があったのか。


「猫四匹がですね、勝手にホーンラビット養育施設に入り込んで、飼育しているホーンラビット、まあ、ツノは切ってあるんですけど、それに攻撃をしているんです。というか、訓練をしているかのようです。時には一対一で戦ったり、時には四対四、さらには、四対多でやっているんです。最初はどこからやってきたのかな、と、最初は、怪我をしたらいけないな、と思って、捕まえて出そうと思ったんですが、今となっては、ホーンラビットも面白がっているのか、お互いに訓練のようになってしまいました」


 魔獣に挑む猫とか。どう言うこと? 

 第一世代といい、第二世代といい、強さを求めているんだろうか。


「伝わるかわからないけど、ホーンラビットの皮も大事だから、爪を立てないように言ってみるよ」


 管理人さんは困ったように言う。


「そういうことでは、そういうこともあるんですが、もっと困っていることがあります。ホーンラビットは長い養育の歴史の中で家畜化し、おとなしい性格になっていたんです。ところが、闘争心を思い出してしまったのか、野生を取り戻しつつあります。そうなると、我々にも危険が迫ってきて、仕事が難しくなっています」

「被害が出るまでになっちゃった?」


 他人事みたいな聞き方だけど、もし出ちゃっていたら、うちの猫たちが原因とも言える。聞かないわけにはいかない。


「いえ、出ていません。ホーンラビットが戦うところを見て危険性を感じているだけです。今の所、人に対しては大人しく接しています」


 ホーンラビットも外界を知らないから、人を襲うってことも知らないのかな。餌をくれる相手でもあるし。


「私どもは、ホーンラビットを育てて殺すことが仕事なので、いつ恨まれて暴動を起こされるかと不安でして」


 そりゃ怖いよね。


「猫については、言い聞かせてみるよ。警備については母上に聞いてみる。ごめんね。心配かけて」


 と言っておく。


 結果として、猫たちはホーンラビットの養育場で訓練することをやめた。わかってくれたみたいだ。

 その代わり、黒薔薇の訓練場に現れることが多くなり、対人戦や人との連携について訓練しているらしい。騎士団はやめろと言ったのに。

 「やっぱり猫を黒薔薇に」っておかあちゃんは言っていた。


 そういうのってさ、犬じゃないの?

 おかあちゃんは、「相手が動物を使役していることもあるから、そういった相手と対戦する訓練にもなるからいいんだ」とも言っていた。役に立っているなら何より。


 もう一つ噂を聞いた。これはメイドからだ。

 なんでも冒険者からの情報らしい。

 冒険者は森に入って魔獣を狩っているが、魔獣と戦っている猫を見たらしい。なんでも、猫たちは戦っても魔獣を完全に倒すことなく、ある程度のところで去っていくらしい。冒険者はおかげで楽に魔獣を倒せたとのことだった。

 どっちかな、第一世代かな。第二かもしれないけど。森にまで鍛えに行っているのか。うーん。騎士団でも作るつもりかな。作ったとして、騎士団に入れるのかなあ。なれるのかなあ、猫が。


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