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ドワーフの国-4

 翌日は、夕方までやることがないので、ガンツとタンツにお願いして工房見学をさせてもらった。

 金属を溶かすところ、精製するところ、そして武器を作るところなど。金属の塊がドワーフの槌の一つで武器へと形を変えていく様子がとても面白かった。

 いろんな工房を見て回っていると、夕方が近くなる。ガンツとタンツは鍛冶ギルドへ行く。僕らは後で行くからと言って、昨日の細工師の店に行く。


「お待ちしていました。これ、見てください」


 と言って、二つのピンブローチを出してくる。宝石は銀色の金属で作られた台座に収まっている。


「いかがですか? シンプルですが、宝石が際立つように台座は小さくまとめています。ちなみに、台座はプラチナにしました」

「うん。かっこいいね。これ、どこにつけたらいいの?」

「多くのお客様は、コートの襟でしょうか」


 僕は、ブルーダイヤモンドのピンブローチを手に取り、かなでの団服の襟にあて、


「この辺でいいの?」


 と、お姉さんに確認をとる。


「そうです。そこにぷすっと」


 と言うので、僕はかなでにつけてあげる。


「それでは奥様も旦那様につけてあげてはいかがですか?」


 と、お姉さん。かなではブラックスターサファイアのピンブローチを僕の団服の襟につけてくれた。

 ブラックスターサファイアの輝きは、かなでの目の輝きに似ていて、黒の団服に黒の宝石であっても、存在感を出していた。


「おお、いいですね。黒に黒じゃ目立たないかと思ったんですが、よく輝いていますね。つける人がいいのかもですね」


 などとおだててくる。


「これ、箱です」


 と言って、箱ももらう。


「ありがとう。これ代金」


 といって、金貨が十枚入った袋を渡す。


「毎度ありです。またのご利用をお待ちしています」


 僕は満足して店を離れようとしたのだが、かなでが僕の服の裾をつかむ。


「フランどうした?」

「ありがとう。これ、うれしい。大事にする。でも、私だけなの、ちょっと悪い」


 と。そうだよね。そう思っちゃうのはかなでらしいね。

 なかなか立ち去らない僕達を気にしてか、お姉さんが声をかけてくる。


「いかがしました?」

「いえね、妻がね、自分だけもらって他の妻に買わないのを気にしていてね」

「え、旦那様、奥さんが何人もいるんですか?」

「うん。あと九人いるよ」


 というと、お姉さんは目を見開いて驚く。


「あの、旦那様、どんだけモテモテなんですか?」

「まあ、いろいろね。で、他の妻にもお土産が必要かなってところかな」

「申し訳ありません。ブルーダイヤモンドはちょっと在庫が少なくて、さすがに九つはすぐには。それから、もしかして、その九人の奥様の瞳の色に合わせて宝石を選ばれます? そうしますと、ちょっとお会いしないことには私の方からお勧めすることはできないのですが」

「そうだよね。ブルーダイヤモンドを集めるのにどれくらいかかるの?」

「他の細工師に当たれば九つくらいは何とかなると思いますが、それだけで結構な金額になってしまいますが」

「もちろん値切らせてもらうよ」

「女性へのプレゼントはほにゃららって言っていませんでした?」

「はは、よく覚えているね」

「大丈夫です。旦那様のそのお心をくんで、ほぼほぼ原価でお売りします。そうすれば値切る必要もないですよね」

「そうしてくれると助かるよ」

「まずは宝石を集めるところから始めますので、明日にでも寄ってください」

「わかった。ありがとう」


 あ、そうだ。


「ごめん、鍛冶ギルドってどこにあるかわかる? この道をまっすぐに行ったところって聞いていたんだけど」

「あ、鍛冶ギルドにこれから行かれるのですか? 実は私も用事があって行くんです。ご一緒しましょうか?」

「助かるよ。じゃあ、支度ができるの待っているね」


 と言い、店でアクセサリーを見ながら待たせてもらう。どれもこれも僕にはイメージできないデザインだが、センスもいいし仕事も丁寧だ。お得意先は貴族なのかな。そういえば、この店には旗がかかってないな。


「お待たせしました」


 と言って、お姉さんがやってくる。


「では行きましょうか」


 と、先を歩き出すお姉さん。


「ごめん、お姉さん。お名前聞いてもいい? 僕はグレイス。妻はフラン」


 かなでがペコっとする。


「はい。私、リカと申します。これからもごひいきに」


 僕たちは、リカにこの街のことを聞きながら歩いていく。特には、北東に広がる山脈にある鉱山のこと。様々な金属と宝石が採掘されるとのことで、その産出量があるからこそ、ここにドワーフの国ができたとのことだった。

 金属と宝石の輸出について聞いてみたところ、基本的には加工してからの輸出となっていて、原材料としてはあまりないとのこと。まあ、その方が儲かるし、ドワーフたちの矜持もあるのだろう。

 だけど、これからのことを考えると、輸出してほしいな。ということを言うと、金属も宝石も加工技術はドワーフが一番です。それを原材料で輸出なんて、金属も宝石も喜びませんよ、とのこと。

 だからこそのドワーフの引き抜きなんだが。


 鍛冶ギルドに到着する。ドアを開けて三人で入ると、そこは酒場だった。


「鍛冶ギルドであってる?」


 と、リカに聞く。


「あってますよ? ドワーフなんてこんなもんでしょ」

「そっか。リカ、連れてきてくれてありがとうね」


 とお礼を告げ、僕はガンツとタンツを探す。だけど、大事な話し合いだし、会議室とかだよな。受付で聞こう。と、受付に向かって歩き出したところで、


「おーい、来た来た。こっちだ」


 という声がするので、振り向くと、タンツが手を振っていた。


「おじさーん、きたよー」


 と手を振るリカ。


「いや、お前じゃない。会長! こっちです」


 とタンツ。


「あれ、おじさん?」

「うん。タンツさん。私のお父さんのお兄さん。つまりおじさん」

「リカもこの話し合いに参加するのか?」

「も? グレイスさんも?」


 と確認しあっていると、


「リカ、お前何で来たんだ?」


 というタンツ。


「え、だって、工房長に集まれって」

「そうか、お前も工房長だったか。今回は、後継ぎがいる引退間近の工房長に用があったんだがな」

「そうなんだ。でも、来ちゃったし、話を聞いて行ってもいい?」

「まあいいぞ」


 と、リカのことは置いておいて、タンツは僕とかなでを上座に連れていく。


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