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ロッテロッテ弾丸ツアーー10

「アンジェラ、それじゃ、採用します」


 と合格を告げる。


「やった! みんなーきてー」


 と、後ろを向いて手を振る。すると十人ものメイドがやってくる。


「用意してきてよかったね。じゃあ、みんなでがんばろう!」


 と、こぶしを振り上げる。おいおい。聞いていないぞ?


「その子達は?」

「私のメイドです。世話係は必要でしょう?」

「えっと、うちに勤めるということは、他のメイドと一緒になるってことだけど、大丈夫かな?」

「大丈夫よ、城で勤めてた子達だから。なんでもできるわ」


 メイドたちはうなずいている。


「うちのメイドだけどな、戦闘訓練もしていて、というか、騎士団がメイドなんだ」


 頭にクエスチョンマークを乗せるメイドたち。


「アンジェラはケルベロスにも立ち向かえるだけの戦う力があるだろうけど、うちには基本的に専属メイドはいない。戦闘訓練をした騎士団がメイドを務めているんだ。だから、うちに勤めるってことは、騎士団になるってことだけど?」

「大丈夫だと思うわよ。夜の戦闘は仕込んでね」

「夜の戦闘って、夜目が効くとかそういうことじゃないよね?」


 一応聞く。


「明かりをつけてするの?」

「却下だ」


 ほら、リリィとライラが変な想像をして赤くなっているじゃん。


「もういいよ。普通に騎士団に入って。それでだめなら、食事部門でも服飾部門でも研究開発部門でもなんでもあるから。あと、もう一つ。うちの騎士団、獣人もドラゴン族もいるから。それから、エルフとドワーフにも仕事をしてもらっているから、差別的なことを言ったら、即送り返すからね」


 と、念を押しておく。


「わかっていますわ、ラブアンドピースですよね」

「そうゆうこと」

「じゃあ、私達は許可をもらったということで」

「私達は?」

「あっちで、騎士、いや、元教会騎士団の人達が話をしたそうに待っているわよ」

「誰の長話に付き合ったと?」


 僕が、その待っている元騎士団っぽい人達の方を向く。すると先頭にいた男の人が頭を下げて、僕に近づいてくる。あ、城にいたポートって人だっけ。


「グレイス殿! お願いがあります」


 だから疲れたって。人事課を作ろうかな。


「なんでしょうか。たしか、ポート殿?」


 商会従業員として騎士を敬っておく。


「殿はやめてください。呼び捨てにしていただきたい」


 僕はうなずいておく。


「で、どうしたの、ポート」

「は、われら元教会騎士団第一大隊並びに第二大隊二百名は教皇に辞表をたたきつけてまいりましたので、亡命したく思います。どうか、連れて行ってください。こんな島国に残っては、教皇にどんな仕打ちをされるかわかりません。お願いいたします」


 と力強く力説する。でもね。


「なんで辞表を出しちゃったの?」

「私たちはあの場で神々から勅命を受けました。その時点でもう私たちは教会騎士団ではなく、神々の騎士団となりました。そのため、もう教会にはいられません」


 えー、そういう解釈か。母上達のせいじゃん。僕が責任取る必要ないな。


「なら、その神々に言えばいいんじゃないの?」

「ですが、いつ私どもの前に顕現してくださるかわかりません。このキザクラ商会の、ロッテロッテの馬車について行くことが、お会いする一番の近道だと考えました」


 その考えは正しいな。このまま残っても教皇にどうされるかわからないわけか。


「ちょっと協議」


 と言って、今度は母上たちの方へ向かう。



「ということですが、どうします?」

「どう? と言われてもな。私には黒薔薇がいるし」

「私は、リーゼお姉さまにくっついて行きますので、護衛も騎士団も不要です」

「あの人達、困ってしまうではないですか」

「お前が何とかすればよかろう? そもそもロッテロッテはキザクラ商会の商品だ」


 いや違う。勝手に始めたんですよね。という心からの突っ込み。


「だから、キザクラ商会でその辺のやりくりをすればいいのではないか?」


 丸投げか。ロッテロッテの興業も担当しているしグッズの販売もしている。そうなると、キザクラ商会が面倒を見るべきなのか。だけど。



 ポートのもとに戻る。


「えっと、神々の騎士団ってことだけど、神々がいないときはどうするの?」

「その時は、訓練をさせていただくか、なにか仕事を与えてくだされば、それをさせていただきます」


 ほぼほぼ神々は顕現しないと思うけどね。


「そう。じゃあね、マイリスブルグ王国のグリュンデール公爵領にある、キザクラ商会本部付けの騎士団とします。それでいいです?」

「神々の騎士団ですが?」

「うん。「神々の」をつけてもいいけどね。基本的にはキザクラ商会の護衛をお願いします。神々が顕現したら、そちら優先で。それでいいです?」

「わかりました。そうしましたら、キザクラ商会所属神々の騎士団を名乗ります」

「よろしく。でだ。君達の家族は?」

「もちろん連れていくつもりですが、受け入れていただけますでしょうか」


 といって、後ろを示す。そこには何百人もの女性子供がいる。ここにいても教皇に裏切者扱いされてもかわいそうだよね。


「わかったよ。だけどね、大陸に渡ってから、皆を馬車に乗せることはできない。だから、君達神々の騎士団の最初の仕事は、君達の家族を守りながらグリュンデールにたどり着くことだ。いいかな?」

「はい」

「それじゃ」


 と、紙に手紙を書く。キザクラ商会各支店長宛だ。


「えっと、これを先発隊に持たせてキザクラ商会に見せて。それで、受け入れの用意をさせる。突然何百人が行っても食事も何もないでしょ。だから、本体がたどり着く前に、各支店に準備させること。それから、手紙には小さな子供たちや荷物を乗せる馬車も用意するように書いておいたから。一か所で馬車があつまらなかったらごめんね、次の街でも探してもらって」

「何から何までありがとうございます」

「じゃ、船に乗り込んで。あ、忘れていた。家族の皆さんに伝えておいてほしいんだけど、グリュンデールについたら、女性であっても大人は働かざる者食うべからずだから。それから子供は学校必須ね」


 突然の大所帯となってしまった。仕方ないか。

 なんにしろ、今回のツアーは大成功だ。大陸中にロッテロッテを知ってもらうことができた。

 それに多分だけど、イングラシア教のたくらみをつぶすこともできただろう。よって、しばらくはまだ平和が続きそうだ。あいつだけ気になるけど。

 銀髪天使め。



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