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ロッテロッテ弾丸ツアーー9

 キザクラ商会へ戻ろうとするが、キザクラ商会の前はものすごい数の人が詰め掛けていた。目の前が大聖堂だったせいか、一般の人に混ざって教会関係者もたくさんいるようだ。

 どうしてもキザクラ商会に表から入れそうもなかったので、裏に回って建物に入る。

 部屋に戻ると、そこには母上とシャルロッテ様もドライアとディーネと一緒に戻っていた。

 で、何があったのか聞く。


「ソフィ、これ何?」


 京子ちゃんは目だけを動かして母上とシャルロッテ様をみて、


「二柱の神様がね、日中で目立つにもかかわらず、キザクラ商会に降り立ったの。しかも、城から大通りを通ってきたみたいで、たくさんの人がそれを見ちゃったのね。さらには、ここって、大聖堂の前でしょ? そっちの人にも見つかっちゃってね。昨日の今日だから、こんな感じになっちゃった。らしい」

「いや、すまん。夜はさ、下が見えなかったから、つい楽しくなってしまってな」

「空を飛ぶというのが楽しいというのはわからないでもないですが、そもそも城の窓から飛び出すのをやめてくださいよ。目立つに決まっているじゃないですか」

「ああやって、飛べるなんて鳥はなんて羨ましいのでしょう」


 とシャルロッテ様が向こうの世界に行く。


「お母様、戻ってきてください。そして解決策を」


 京子ちゃんがシャルロッテ様に声をかけるが、答えた人物は別。


「またここから飛び立てばいいのではないか?」


 安直な母上。


「そうかもですが、街中が騒動になります。もう、このままやり過ごしましょうよ」


 と提案する。ごめんねララファにラミーネ。

 皆で相談をしたが、結局、広場で昨日のグッズの売れ残りの販売をキザクラ商会として行うことで、騒動を収めた。

 僕らはそのために急いで広場にお店を出すことになったが。昨日買った人も買っていない人も並び、大盛況となった。



 その店をララファたちに任せ、そのすきに僕らは馬車に乗り込み、この街を出ることにする。

 馬車に乗って港を目指す。道行く人は、ロッテロッテの馬車とわかって、シンべロスが引いているにもかかわらず、恐れることなく手を振ってくれる。

 シンべロスとケルベロスは神の使いだと思われたかもしれないな。いや、そうだといいな。そういう風に仕向けようかな。



 港について、馬車を船に乗せていると、一人の女性が近づいてくる。恰幅の良い女性。さっきまで会っていた女性だが、服が庶民的なものに変わっている。


「女王様、どうされたのですか? 見送りに来てくださったのですか?」

「もう私は女王ではありません」

「おい、そんな簡単にやめられるわけないだろう」


 と、素でかえしてしまう。


「伸びている叔父に手紙を残してきました」

「なんて?」

「「女王はもうやめる。後を追うな。後はよろしく」と三行で」


 わかりやすくてよろしい。


「で、その庶民のアンジェラさん、お見送りに来てくださり、ありがとうございます」

「いえ、見送りではありません。」

「では、なんです?」

「再就職です」

「はあ、船員にでもなると。おつかれさまです」

「いえ、違います」


 さっきから否定ばっかりだな。僕がえっと、という顔をしていると、


「グレイス様にお仕えします」

「間にあっています」


 と即答する。こんなのばっかり。女王改めアンジェラは「えっ」って言っているけど、間に合っているものは間に合っている。

 ほら、京子ちゃんたちがまた白い目で見てくるじゃん。


「何でですか?」


 って、このやり取り疲れたよ。僕はどう断っていいか悩んで理由を探すためにアンジェラの頭から足まで眺めると、


「こ、この体ですか? この体がダメなのですか? わたし、着やせするんですよ? だから大丈夫です」


 着やせするって、ダメじゃん。


「それに、私、痩せやすい体質なので、すぐに痩せますから」


 と弁明してくる。決して体型のことではないが。後ろからも、


「グレイス君って痩せているっていうか、小さいの好きだもんね」


 これは、リリィ。


「ふん」


 と、得意げなのはかなで。そういうことではない。余計なことを言うな。

 どうしようか悩んでいたら、不思議と京子ちゃんが助け舟を出した。


「勤めたいって言っていたわよね。何か得意なことはあるの?」


 と与えられる仕事から判断するのか。さすがだ。


「洗脳と精神攻撃と……」


 京子ちゃんは目が点になる。


「待て待て、やっぱりいらない。帰れ」


 と僕は突っぱねる。


「何でですか?」


 と食い下がるアンジェラ。


「じゃあ逆に、なんでうちに勤めたいんだ?」

「それはですね、もうすでに大陸中に拠点をもって、二柱の神々がそばにいて、ドラゴン族も従えている。もう、勝ったも同然じゃないですか。大陸統一は勝ち馬に乗ることにしました」


 それが本音か。ちょっとではない。かなり疲れた。


「あのね、僕らは大陸を統一する気なんてないよ。ラブアンドピースって神々も言っていたでしょ?」

「はい。そのラブアンドピースで大陸中を治めるわけですよね」


 うん。間違ってはいないが、治める気はない。


「ちょっと協議」


 と言って、アンジェラから離れ、妻たちと相談をする。



「あれ、どうする?」

「ちょっとあほな子だけど、素直でわかりやすいと思う」


 と言うのは京子ちゃん。一国の元女王になんて表現を。だが、


「それは否定しない」

「外交担当から言わせていただきますと、他国との交渉に使えるのではないかと、腹黒そうですし」


 ライラが肯定的にとらえる。


「腹黒っていうか、表も黒いけどな」

「妻になりたいんじゃなくて、働きたいって言っているだけだからいいのかなと」


 これはリリィ。


「逆らったらしめる」


 と、かなでさん。ちょっと過激ですね。


「ドライアとディーネは?」

「「おまかせします」」


 と興味なさそう。


「じゃ、ライラ預けでいい?」

「え、あほな子はちょっと」


 と言うライラ。


「まあいいか。じゃあ、表の外交はこれまで通りライラにお願いするとして、裏はアンジェラに任せることにしようか」


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