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ロッテロッテ弾丸ツアーー7

 ここは……。知らない天井……じゃないな。キザクラ商会にある寝室だ。目を開けて天井の確認をしていると、腹に何かが突っ込んだ。痛い。


「グレイス君!」


 京子ちゃんだった。


「グレイス君、大丈夫? 痛いところない?」


 って、すごい勢いで聞いてくる。正直に、


「ごめん、おなかが痛い」


 と答えると、「はっ」とした顔をして、京子ちゃんがおなかの上からどく。


「グレイス君、自分でヒールかけてくれる? 私も勉強していたんだけど、それなりに使えるようになったつもりだったんだけど、グレイス君には効かなかったの」

「そうなんだ。ありがとうソフィ」


 と言って、自分にヒールをかける。


「フランちゃんが言うにはね、私よりグレイス君の方が魔力量が多いから、私の魔力はグレイス君の中に通らないみたいで」


 なるほど、マイナス距離の魔法が魔力量を上回らないとできないのと一緒か。


「だからね、お願い。グレイス君は、自分を自分でしか治せないの。お願いだから、無理しないで……」


 と涙目で訴えてくる。そして、


「私ね、強くなったつもりでいたの。治癒魔法も使えるようになってグレイス君の役に立てるようになったって思っていたの。でもあの時、私、二人の戦闘に手も足も出すことができなかった。じゃまにしかなれなかったの。それに、怪我をしたグレイス君を治すこともできなかった。私、私、役立たずだったよ」


 と、京子ちゃんはいって泣き崩れてしまった。その後ろでは、


「私も」

「私もです」


 っていうリリィとライラの声が聞こえる。僕は京子ちゃんのまっすぐでサラサラな銀髪をなでながら、


「お願い。役に立ちたいなんて思わないで。僕はソフィを頼るから、その時に助けて。ソフィも僕を頼ってくれれば、いつでも助ける。そんな関係でいいんじゃない? ソフィには僕にできないことがいっぱいできるし、この前のドラゴン族襲来の時もそうだったけど、たくさん助けてもらっている。感謝しているよ。ありがとう。そして、愛してる」


 そう言って、うつむいている京子ちゃんの髪にそっと口づける。


「だから、これからもずっとずっと、そばにいてにいてね。一緒に生きてね」


 と言うと、無言でうんとうなずいてくれた。


「いいなー」

「私にも言ってほしいです」


 という声は今はおいておく。


「ところで、いつも僕の役に立ちたいとか言って無理をしでかすフランはどこ?」


 と、ちょっと嫌味と愛情を込めて言ってみる。復帰した京子ちゃんが教えてくれる。


「フランちゃんは隣の部屋で寝ているよ。フランちゃんには私のヒールが通ったから。それに、その役立ちたいって言っているフランちゃんだけどね、怒っていたよ。グレイス君の前に立った時に、ひっぱって後ろに下げたでしょう。あれ、死ぬほど悔しかったみたいだよ。だからね、さっきみたいに、ちゃんと言い訳して慰めてあげなよね」


 そう言って、僕にかなでのところへ行くようにうながす。京子ちゃん達は、


「私達はここにいるから」


 と、この部屋に残るようだ。


 僕はかなでの寝ている部屋へいく。ドアをノックして


「入るよ」


 といって部屋に入る。すると、ボフッっと枕が飛んできた。そして、


「陵様のばかー!」


 すでに大泣きしている。


「どうして私を下げたんですか! あんなどうしても勝てないような相手に! 私、死神だったから知っていますよ。天使がどれだけの存在か。人である陵様も人になった私もまったくかなわないってわかっていますよ。前に鎌を交えたときもまったくかなわなかったですよね。なのに、なんで立ち向かおうとするんですか? それで私をなんでさげたんですか? 私はあなたの盾です! あなたをお守りするのが役目です! 確かに陵様に私はかなわないかもしれません。だから役立たずだと思われても仕方ないです。でも、でも! 私はあなたを守りたい! 守るために生きているんです! 悔しい、悔しいです」


 と、普段言葉数の少ないかなでが思いを語り、大泣きした。僕はベッドに座るかなでの横に腰を下ろし、かなでを引き寄せて髪をなでてあげる。


「かなで、僕は謝らないかな。だって、僕の役目も君を守ることだから。僕は君に守ってもらう。だけどね、同時に僕は君を守る。だからお願い。僕を守るためだからって、かなでが僕の前に出るのはやめて。僕は僕が生きるためにかなでを傷つけようなんて思わない。傷つくなら一緒に傷つくべきだと思う。かなでが僕を守りたいって気持ち、わかっている。だから、僕がかなでを守りたいって気持ちもわかってね。そして、これからはさ、お互い相手の前を守るんじゃなくてさ、背中を守ろう。お互いを信じて前はまかせて。これからも一緒に戦ってくれるかい? っていうか、戦うときだけじゃなくても、一緒にいてほしいしそばにいてほしい。だからね、僕のそばからいなくなるようなことはしないでね。僕も泣くよ? ね、かなで。愛してる」


 そういってかなでを抱きしめた。かなではいつものように、僕の胸におでこをぐりぐりする。それが肯定なのか否定なのかわからなかったけど、かなでも抱きしめ返してきてくれたことで、良しとする。


「みんなも待ってるし、あっちの部屋へ行く?」


 と聞くと、


「もうちょっとこのままでいる」


 と、かなでにしては珍しく要求してくる。なので、かなでも抱きしめたまま髪をなでてあげた。


 しばらくそうしていると、かなでは顔をあげ、僕と目を合わせると、キスをしてきた。断る理由もないので、受け入れる。というか、かなでにしては積極的だな。


「行く」


 とかなでが言うので、立ち上がろうとするが、かなでは僕の首に手を回したまま放してくれない。かなでと目を合わせると


「だっこ」


 と言ってきた。また口数の少ないかなでに戻ったな。とほほえましく思ってお姫様抱っこをしてあげる。そのまま、さっきの部屋に戻る。


 部屋に戻ると、京子ちゃんたちが出迎えてくれる。かなでをお姫様抱っこしていることにリリィとライラがうらやましそうな顔をしている。

 が、その次の瞬間、二人から殺気が漏れる。見なかったふりをしたが、かなでが二人に「べっ」って舌を出した。そんなことで張り合わないように。

 僕は、かなでをベッドに座らせようとするが離れようとしない。


「ほらフラン、殺気を感じるから降りて」

「この程度の殺気」


 と、鼻で笑っている。


「じゃあ、隣に座らせて」


 そうかなでが要求してくるので、かなでをベッドにおろして座らせ、その横に座った。


「フランちゃんも落ち着いたみたいでよかった」


 と京子ちゃんが声をかける。


「ん」


 とかなで。


「ところで、今、どういう状況? もう帰れるの?」


 と聞く。


「えっとね、女王様から「目が覚めて動けるようなら城に来い」って」


 京子ちゃんが教えてくれる。


「なんの話かな。この島から帰らせてくれないとかないよね? 母上達は大丈夫なの?」

「うん。大丈夫。みんな帰り支度をしているわ」

「教会騎士団は?」

「昨日のライブの時とは逆で、馬車に背を向けて警戒している」

「そうなんだ。受け入れられたってことかな。でも教会騎士団があからさまだと、うるさいのがいるかもね」

「その辺の話も含めてじゃない? この国、国王も教皇も身内なんでしょ? 一見別だけど、完全に宗教国家だもんね」

「そこに新たな神様が現れちゃったもんな。狙ったんだろうけど」


 と、二人の悪魔の顔を思い浮かべる。


「じゃあ、後で行ってくるよ」


 と言うと、かなでが袖を引っ張る。


「フランについてきてもらおうかな」


 と言うと、


「ん」


 と了承の意を示す。


「あとはあの二人にも声をかけるか。母上ならシャルロッテ様を守ってくれるだろう。何かあっても。それから、ドライアとディーネ、精霊化してついて来られる?」

「「はい」」



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