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ロッテロッテ弾丸ツアーー4

 この後二か月は、皆、ツアーに向けて大忙しだった。

 僕はファレンたちとスポットライトを完成させた。

 ライラたちは棟梁と一緒にツアー用の馬車を作製。

 ラナとルナはツアーグッズの量産にいそしんだ。この量産はかなり大変だったらしく、この街にやってきた獣人たちも訓練等そっちのけで手伝わされていた。

 ロッテロッテの二人とバンドメンバーは王都で三か月の練習とリハーサルに取り組んだ。

 ドライアとディーネはリハーサルの前に呼ばれて王都へ旅立っていった。

 黒薔薇騎士団はアンのチームとミレーヌのチームに別れ、開催地を交互に設営と運営を行うことにした。

 ツアーは次のような順番となった。マイリスブルグの王都から始まり、グリュンデール、ローゼンシュタイン、アリシア帝国のリコラシュタイン、帝都オルトリア、ランドルフ辺境伯領のエライゼ、小国が集まった西方諸国連合のセデベリア、クラッスラ、アエオンと行って、最後にイングラシアだ。

 ちなみに、最後のイングラシアだけは、実施できるか不明だ。合計十か所。公演と公演の間は三日。トータルで一か月ちょっとかかる計算だ。


「今回はどうする? みんなで行く?」


 と妻達に問いかける。


「うん。子供達は大きくなったし、メイドさんに任せてもいいと思う」

「一か月もあるよ?」

「わたしとこはるが残ろう。それと、ラナとルナは行かないのだろう?」


 さつきが提案してくれる。


「じゃあ、子供の世話をお願いね」

「だが、黒薔薇がいるとはいえ、黒薔薇は基本は義母上たちの護衛だろう? グレイスたちはどうするんだ?」

「かんなたちのチームルビーを連れて行こうと思う。ルビーなら、さつきと意思の伝達ができるだろう?」

「そうだな。そうしてもらえると、こちらも助かる。いざとなったらわれらとサファイアが駆けつける。それまでは、サファイアがこの街を守ることでいいのだろう?」

「あの三チームの訓練もお願いね」

「わかった」




 僕らはオープニングの地である王都に向かう。ケルベロス馬車で。あ、違った、シンべロス馬車で。

 ライラが用意したシンべロス馬車は四頭引きで、前世の観光バスのように大きい。それが五台。

 側面にはロッテロッテの紋章が描かれている。ハートマークと二柱の女神が向かい合って祈りをささげる図柄だ。それと「LotteLotte」の文字。

 それから、シンべロスに引かせているため、マイリスブルグ王国とアリシア帝国の旗を掲げる。これがないと人々が驚く。あくまでも、この魔獣は王国および帝国の管理下にあるということを示している。本当のところは、グリュンデール管理下、いや、キザクラ商会管理下だけどね。

 さて、この馬車、なんと、車輪にゴムが付きました。おかげで、乗り心地はかなり改善された。ばね式のサスペンションも導入し、これもその効果を高めている。車輪は前に四つ、後ろに四つの八輪となっている。うん。かっこいい。


 ロッテロッテの二人と、黒薔薇五十人はすでに王都へ行っている。ドライアとディーネも。なので、五台の内二台は空のまま走っていく。

 僕らはスピードがスピードだし、シンべロスが引いていることもあって、盗賊に襲われる心配はほぼほぼない。よって、実質護衛は不要。

 とはいえ、連れて来ているチームルビーは、目立たないように先に飛んで道の警戒をしてもらう部隊、僕らに同行する部隊と分けた。さすがに全員を馬車に乗せるのは、重すぎるという判断。同行する部隊も馬車に乗るのはかんなだけで、後のメンバーは、上空を飛んで警戒をしている。


 他のメンバーと念話で情報のやり取りをしているかんなが言う。


「団長」


 団長とはかなでのことだ。


「馬車周辺及びその先も異常はありません。安全が確認されています」

「うん」


 と、シンプルに返事を返すかなで。


「ですので、ご主人様の隣の席をお譲りください」

「だめ」

「ソフィリア様―」

「だめ」


 京子ちゃんもダメだしする。かんながしゅんとしているが、僕はここで口を出してはいけないことを十二分に理解している。

 だが、それを見ていたリリィが余計なことを言う。


「かんな、どうして私達が隣に座っていないんだと思う?」

「負け組だからですよね?」

「きーっ!」


 ほら、余計なこと言うから、自爆じゃん。


「ちがうわよ。正面からグレイスの顔を見るためよ!」

「な、なるほど」

「そ、それからね、正面にいるとね、見ていなさい」


 といって、テーブルに用意してあったフルーツをピックで刺し、


「あーん」


 と僕の顔の前に持ってくる。僕は、それをぱくっといただく。


「ね?」


 リリィはかんなに向かってどや顔をする。


「それとね、馬車が急に揺れるとね、キャッ」


 と言って、リリィが僕に突っ込んでくる。馬車は揺れていない。テーブル越しに突っ込んでくるな。フルーツ、かなでがよけただろう?


「ほら、いいこともあるでしょう?」


 と、かんなを諭す。


「さすがです、リリィ様、負け組には負け組なりの楽しみ方が」

「うるさいわ」


 やっぱりリリィがいるとにぎやかになるな。

 にぎやかなまま旅は続き、王都へ着く。




 王都についた日は公園でのステージ設営に一日かかった。

 ステージ設営は基本的に黒薔薇とチームルビーが行った。

 観客席はステージの前、五十人かける五十列の二千五百人分。この二千五百人はチケットを購入してもらっている人たち。

 その席の外側は料金のかからない自由席とした。ただで見られる人がたくさん来たとしても、チケットを購入してもらった人たちは特典付きなので納得してくれるだろう。

 今回はロッテロッテの思惑があるので、いい席で見られるだけではなく、特典をつけたのだ。ちなみに採算度外視で。

 僕たちは照明の設定を行った。照明の実装は今回が初めてだが、照明係の黒薔薇とタイミングなど打ち合わせはすでに行っている。




 翌日、本番の日。午後から楽器の搬入や照明のチェック、それと、ライブ終了後のグッズ販売の準備など、急ピッチで進め、夕方には何とか準備が終わった。


 会場にチケット購入者を入れていく。そういえば、今回は貴賓席を用意しなかった。そのためか、変装した国王を見つける。ついでに変装した宰相や近衛も。

 観客席に入るお客さんにロッテロッテの文字入りのゴムで作ったブレスレットとマフラータオルを渡していく。みな、その場でブレスレットをつけ、タオルを首にまいていく。

 お金のかからない自由席との違いは、それくらいかもだけど、満足してもらえたようだ。ちなみに、ゴムが珍しいのか、みんな、手首につけたブレスレットをみよんみよんしている。


 自由席も次第に人が集まってくる。今回、チケットの買えなかった人や好奇心で集まった人など様々だ。




 次第に暗くなってきたので、ライトをつけて会場を照らしていく。

 その光が、炎ではないことに驚く人もちらほら。国王も宰相と一緒に照明を指さして何かを話しているのが目に入る。

 そういえば、今回、国王に照明の説明をするのを忘れているな。あ、国王と目が合った。というか、見つかった。


「あ、と、で、こ、い」


 と言っているようだが、忙しいので、手でばつを作っておく。国王の呼び出しを断るってよかったかな?



 さて、すっかり夜も更け、明かりは照明だけになる。そろそろ開始時間だ。

 会場アナウンスが流れる。


「本日は、ロッテロッテのミサにお越しくださりありがとうございます」


 ミサって、どこの悪魔よ。


「これよりミサを開始いたします。演出のため、この後すべての照明が消え、真っ暗になりますが、焦らず、空をご覧ください。どうぞ、よろしくお願いいたします」


 アナウンスの後、照明をすべて消す。そして、皆が空を眺める。


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