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ロッテロッテ弾丸ツアーー1

 イングラシア聖王国を飛び出して、そのまままっすぐグリュンデールに帰る。領都の離発着場に降り立ち、その足で、屋敷に帰った。玄関では、京子ちゃんをはじめ、妻達、そしてメイド達が出迎えてくれた。


「おかえりなさい、グレイス君」


 これは、京子ちゃん。だが、顔が笑っておらず、続きがあった。


「はい、そこに正座」

「え、なんで?」


 と言って、とりあえず、これ以上怒らせないように正座をしてみる。


「この二通の手紙、なんて書いてある?」


 京子ちゃんは二通の手紙、僕が京子ちゃん宛に書いた手紙を差し出してくる。


「よろしく?」

「そうよ、よろしくって書いてあるわ。で、これを持ってきたのは誰かしら?」

「えっと、赤のドラゴン族と、緑のドラゴン族?」

「なぜ、疑問形なのかしら?」

「い。いや」

「まあいいわ、それで、これで何をよろしくなのかしら? 私ね、まず、彼らの住むところを何とかするのにね、棟梁にお願いに行って、そして、食事の手配もして、それからね、仕事も考えて。何より、何よりね、彼ら、来た時にね、上空を旋回したのよ、百体ものドラゴンが。何が起こったと思う? パニックよ。街中が。それも二度も。それは謝ったわよ。あちらこちらに。お父様に謝るのはまだいいけど、街中でよ。そういうの何もかも含めてよろしくなわけ? その一言で済ますわけ?」

「返す言葉もございません」


 僕は、平に謝る。


「ふぅ。まあいいわ。すんだことだし」


 僕はちょっとホッとする。


「で、皆さんはどちらに?」

「街の拡張のための城壁づくりと住むところの建設を行ってもらっているわ」

「拡張は、どうするの?」

「本当は、鉄アレイ型の二つの街をくっつけて大きな丸にしたかったけど、今ある城壁を壊すのもなんだし、それに、まだ住人がドラゴン族を怖がるといけないから、街を別に作ることとして、将来的に鉄アレイを重ねた十字を目指すわ。とりあえずはTの字にね」

「お義父さんの了承は?」

「ため息をついていたわ」

「なら大丈夫だね」


 京子ちゃんもため息をつく。


「フラン、ライラ、リリィもただいま。ルナとラナもキザクラ商会をありがとう。後で相談があるけどね。子供達おいでー」


 しょうを先頭にてけてけかけてくるのでみんなを抱きしめては撫でてあげる。後ろからも同行したみずきらが背中にくっついてくる。


「元気にしてたかー」


 と聞くと、手を挙げてはばんばんと僕をたたいてくる。元気そうだ。魔力ぐるぐるのせいか、成長速いな、みんな。そろそろしゃべるかな?


「さてと。母上、シャルロッテ様、ルナとラナも、ちょっとお話があります。応接室でいいです? ソフィ達も来るかい?」



 ひとまず子供達はメイドさんに預ける。

 そして、皆で応接室に移動する。


「ついて行ったらめんどくさいことになるかな」


 なんて後ろからリリィのつぶやきが聞こえてくるが、ロッテロッテの話なので、大丈夫だと思う。秘密にする話でもないし。

 ということで、応接室に入ると、イングラシア聖王国であったことをかいつまんで話す。

 教皇が人類至上主義で、エルフや他種族を亜人扱いしてさげすんでいること。そのため、キザクラ商会が教会から狙われる可能性があること。教会の寄付金が落ち込んでいることと、信仰が薄まってきていることの原因をロッテロッテ教のせいだと思っていること。来年の春の種付け以降に何らかのロッテロッテ教排斥に向けた動きを見せそうだということ。

 聖王国としてはキザクラ商会に手を出さないと言っていたが、教皇は出さないとは言っていない。

 なので、ルナとラナには全支店に注意を呼び掛けてもらう。とりあえず、キザクラ商会の方はそれで。問題はロッテロッテの方。


「ということで、母上とシャルロッテ様は新興宗教扱いされておりまして、しかも、悪魔がなんだとかかんだとか」


 母上は、若く美しい顔をニヤリとゆがませる。なんか考えているな? いやな予感しかしない。シャルロッテ様は冷静な顔を崩していない。


「教皇が動くのは来年なのだな?」

「そう言っていましたが」

「では、今年中にけりをつけようか」


 えっと、何かするのかな、と目を泳がせる。


「オータムフェス、全国ツアーだ」


 ほら、めんどくさいことを言い出した。僕はシャルロッテ様に目配せをして、何とかして、と視線だけで告げる。シャルロッテ様はうなずいて、


「お姉さま、もっとかっこいいツアー名を考えましょう」


 と。

 違うわ。というか、シャルロッテ様も賛成か。


「そうだな、それはおいおい考えよう。ちなみにな、ツアーの構想はあるぞ。それには、グレイス、お前の開発力が必要だ」


 えー。僕はラナ、ルナ達とエンジンを何とかしたい。


「まず、パフォーマンスは外で、日が暮れてから行う。だからな、光を用意してくれ」


 電気魔法の件でとん挫しているあれか。まあ、光は飛行機にも必要だからどのみち通る道か。


「わかりました。秋ってことは、三か月くらいですね。ラナ、ルナ、ガンツやファレンたちと一緒に並行してやります」


 ラナとルナは技術開発大好きっ娘なので、忙しくもうれしそうな顔をしている。だが、それもここまで。


「ラナ、ルナ、お前たちは、ツアーの会場確保と告知、それから、ツアーグッズの大量生産を頼む」


 極端にラナとルナのテンションが下がっている。こそっと、


「キザクラ商会に丸投げしなよ」


 と、伝えておく。


「ソフィリアは衣装の相談を」


 京子ちゃんは、え、私も? という顔をしている。街づくりに忙しいのだ。街づくりは、さつきとこはるにお願いだ。


「フラン、ライラ、リリィはソフィのサポートで」


 と、この三人にも役割を与える。


「多分、衣装替えが何回かあるから」


 京子ちゃんに何着も用意するようにと、暗に要求する。


「それと、演出にドライアとディーネを借りたい」


 ドライアとディーネは自分を指さして首をかしげている。


「まあ、演出だから、リハからでいいぞ」


 と、母上。まあ、大体想像がつく。


「バンドメンバーとの調整は、母上とシャルロッテ様にお願いしても?」

「もちろんだ。明日にでも王都に向かい、打ち合わせを行おう」


 気が早いなー。


「あ、そうだ。ライラ、輸送に使うケルベロス隊をお願い。輸送の馬車なんかも用意してね」

「はい、リリィにも手伝ってもらいます。馬車については棟梁にも手伝ってもらってもよろしいです?」

「もちろん。お願いするね」

「それと、後で報告をと思いましたが、ケルベロスの話が出ましたので」


  と、ライラ。


「なに? ツアーに絡む話?」

「絡むと言えば絡むかと。実は、飼育していたケルベロスですが、進化しました。全個体です」

「え、魔獣って、進化するの? 前から飼育していたやつだよね?」

「はい。というか、私も今回初めてです。先日、イングラシアからやってきた個体は違いますけど」

「どうなったの?」

「簡単には魔力が増大し、力もパワーアップしました」

「サイズは変わらないんだ?」

「はい、変わりません。ただ、毛の色が真っ黒になったのと、その、角が生えました。それから、しっぽが三本に」

「え、もしかして、足が十二本になってとかは?」

「それはありません」


 そうなんだ。


「てっきり三等分、三匹に分かれるのかと思っちゃった」

「変な想像をさせないでください」


 と、苦い顔をするライラ。


「そのため、輸送部隊も強化されるものと思います」

「それはよかった。じゃあ、馬車の強度も上げるように、棟梁に行っておいてね」

「はい、かしこまりました。ところで、馬車についてですが、あの山脈と湖を超えられない気がしますがどうしましょうか」

「そこは問題ない。ドラゴン達にブレス一発で道を作っておいてもらうよ。湖の脇にもね」


 完全なる森林破壊だが仕方ない。前に作ったウォータージェット馬車はボツだ。


「母上、こんな感じで……いないな。もう出かけたのか」


 二人の行動の速さには恐れ入る。


「それじゃ、各々行動開始ね。でも、ご飯は一緒に食べようね」

「「「はーい」」」


 と皆で行動に移した。


「衣装の打ち合わせをする二人がいないんですけど」


 という京子ちゃんのつぶやきが残った。


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