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結婚のあいさつ回りー3

 工房ではラナとルナがなにやら仕事をしている。


「ラナ、ルナ、何をしているの?」

「えっと、前に旦那様、きゃっ、が、ガンツたちにお願いしていたあれの設計です」


 途中に挟んだのなに? 君達、仕事っていうか興味中心で生きているよね? と、考えていると、「失礼な」という視線を送ってきた。心を読むんじゃない。


「ちょっと大工の棟梁呼んできてほしいんだけど」

「はい、行ってまいります」


 と、二人で出て行った。机の上をちらっと見ると、「魔法陣の小型化と最適条件の探索」「発動を連続的に同期させる手法について」「耐久性の検討」「冷却方法について」とかいろいろ調べているみたい。すごい。研究者みたいだな。




 大工の棟梁がやってきた。


「この前の体育館の建設、ありがとうございました」


 まずはねぎらう。


「ちょっと大変だったけど、まだいろいろ使えるからいいだろう」


 と、失敗を慰められた。


「ところで、大人二人と子供一人が乗れて、ドラゴンに運んでもらえる箱? かご? ゴンドラ? みたいのを作ってもらいたいんだけど」


「乗り物かい? しかもさつき様かこはる様が持つので?」

「そうそう。二人に僕とかメイドを乗せて運んでもらおうと思ってね」

「要は、さつき様やこはる様がドラゴン形態で持てること、人が三人乗れる居住空間であること、ですね。承知しました。後でさつき様かこはる様に大きさや持ち運びやすさなど聞いておきます」

「あ、ドライアとディーネも行くから、みのりとしずくも乗るかもしれないから子供スペースは広めでね」

「承知しました」


 と言って、棟梁は出て行った。




 ところが、いつまでたってもがごができてこない。大工さん、遅いよ。

 棟梁に来てもらうと、気まずそうにする。


「かご? コンテナ? ですが、どうしても、どうしてもですが、さつき様やこはる様に合うスタイリッシュなものができなくて。しかも、物を作ると出先でそれを置く場所も困ったりして、なかなかいいものができないのです」


 まあ、確かにわかる。僕もほぼ丸投げしたとはいえ、想像してもおかもちみたいなものしか思いつかず、それを持ったさつきとかこはるなんて、想像もできない。


「かっこよさか」

「はい、かっこよさです」

「確かに、僕もさつきとこはるにはかっこよくいてほしいからね。ありがとう。はっきり言ってくれて。ちょっと考えるよ」


 と、先延ばしにしようとする。すると、


「さつき様がおっしゃるには、そのまま背に乗ってもらうのが一番いい、とのことですが」

「風とか寒さ対策は?」

「そこは風の魔法でちょちょいと」

「ちょちょいとねー。ちょっとさつきかこはるに聞いてくるよ」


 と言って工房を出る。が、探しても見つからないだろうし、訓練場か寝ているかだと思うけど、確実なのは昼食時なので、食堂に移動した。


 案の定、こはるを見つける。


「こはるー、ちょっと午後に背中に乗せてもらってもいい?」

「いいぞ。例の旅行の練習であろう? ちなみに、わらわはおかもちは持たんぞ」


 君か、反対したの。まあ、気持ちがわかるだけに仕方がない。


「二人乗れる? それとしずくと」

「それくらいならな。」

「とりあえず、今日は僕一人で。風とか寒さとかが知りたいだけだから」




 昼食をとったのち、こはると一緒にドラゴン離発着場に行く。


「どうやって乗っけてくれるの?」

「ちょっと待っとれ」


 と言って離発着場の中央付近まで歩いていくこはる。突然、ドラゴン形態になる。地に着いた足から頭までおよそ七メートルか。頭から尾の先まで十五メートルくらいありそう。翼は広げると左の先から右の先まで十五メートルくらい。ドラゴンの肌は赤というよりえんじ色に近く、うろこが輝いている。


「かっこいいなー」


 とつぶやくと、ふふん、と鼻息を返してきた。するとこはるは前足を地につけてかがみ、乗るようにうながす。

 僕は、よじ登ってもよかったけど、衝撃を与えないようにちょうど首の付け根あたりに着地するように飛ぶ。身体強化魔法さまさま。


「この辺でいいの?」

「うむ。そのあたりにいてほしい」


 と言って、翼をバッサーと羽ばたかせる。するとこの大きなドラゴンの体が垂直に浮上した。


「おおー」


 と感動していると、こはるは前方へ移動方向を変え、さらに上昇した。領都の城壁を超え、旋回するように上昇する。首の後ろにいるせいか、思ったより風が当たらない。


「こはるは寒くないの?」


 と聞くと、


「寒くないぞ。寒いのか?」


 と聞いてくるので、


「寒くないよ」


 と答える。


「で、どうしたらいい? ちょっと飛んでみるか?」

「そうだね、実際どのくらいの高さで飛ぶのかわからないけど、山脈は超えるわけだから、それくらいの高さまで行ける?」

「了解」


 と言ってこはるは、旋回しつつどんどん上昇する。領都がどんどん小さくなり、遠く森も見えるようになる。その向こうにそびえる山脈が壁のようだ。太陽がどんどん近づいてくる。雲があれば雲の中を突き抜けるのだろうが、今日は快晴。どこまでも見える気がする。

 空を飛んだのは何回目かな。一回目は夜だったな。かなでと一緒にどこまでも登り、街明かりを望んでダンスをしたっけ。などと思いをはせていると、


「高度的にはこれくらいだと思うぞ。それにこれくらい高くいれば、魔獣たちも驚いたりしないだろうし」


 と、こはるが教えてくれる。


「さすがにここまで上がってくると寒いね。でも、ちょっとスピードを上げて飛んでみてくれる? ただ、山脈の方は当日行くから、逆がいいかな」


 といって王都の方を指さす。


「わかったぞ」


 こはるはスピードを上げる。さすがにちょっと寒い。


「ちょっと魔法の実験をするね」


 と言って、風魔法で僕の前に壁を作る。すると、


「ちょっと首元がすーすーするのだが」


 と、こはるからクレーム。なるほど。風が首に当たるもんね。とはいえ、もう一つ試したいことが。氷魔法で壁を作ってみる。自分の前に。


「ひゃあい」


 こはる。


「ははは。ごめん。やっぱり冷たいよね」


 僕はあやまる。氷で空間を作るのが一番現実的かなと思ったんだけど。氷の壁を取っ払って、そこに抱き着くと、


「おおー」


 と、こはるが、それはそれでなにか感じるものがあるようだ。


「あったかかった?」

「あったかかった」


 というやり取りをする。


 二時間もすると、なんと王都が見えてきた。


「速いねー。でもあんまり速さを感じないけど」

「今日は雲もないしな。地面は遠いし速く飛んでいる感じはしないだろう」


 と。前世で飛行機に乗っていても、地面をみてあんまり速くは感じなかったな。と思い出す。


「そろそろ戻ろうか」


 こはるに帰ることを提案する。


「もういいのか? わらわはグレイスが乗っているところがあったかくて気持ちいぞ」


 こはるはもうちょっと飛びたそうにするが、帰るのにも二時間かかる。


「こはる、ありがとう」


 といって首筋をなでなでする。


「ひゃあい」


 とびくっとするこはる。かわいい。


 二時間かけて戻ってきて、離発着場に降り立つ。僕がこはるから降りると、こはるは人型にもどる。


「ありがとう。いろいろ思いついたよ。あと、あんなに速く飛んだら、一時間くらいで山脈超えちゃうね」

「それくらいで里についてしまうかもしれんな、急いだらだが」

「ふふ、期待しているよ」

「まかせておけ」




 僕はこはると別れて工房に行く。ラナとルナがいろいろと仕事をしていたけど、ガンツを呼んできてもらう。


「ちょっと盾を作ってほしいんだよね。この真ん中から風魔法が出るようにして。裏側には電池を入れられるようにしてほしいな。これを四つお願い」

「わしら、エンジンで忙しいのだがな。だが、息抜きにはいいのか」

「今日はもう遅いし、明日からでいいよ」

「その前に、大きさはどうするんだ?」

「さつきやこはるの背に乗って前に構えるから、僕の上半身くらい? 横は人が隠れられればいいくらいで。あと、軽量化もお願い」

「わかった。それで前面に魔法陣を設置するスペース、裏に電池な。さつき様やこはる様の上で使うならデザインも凝るかな」


 と、言って出て行った。

 今日は、これでおしまい。


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