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グリュンデールー6

 完成品の第一弾ができるまでは結局それから二週間もかかり、開発期間は一か月もかかった。

 いや、むしろ、よくそんな短期間で、というべきだよね。ガンツたちに感謝する。

 季節はもう、秋も深まって、もうすぐ冬になるころ。


「母上、シャルロッテ様、お忙しいところ申し訳ありません」


 研究室に二人に来てもらった。


「早速ですが、服を着替えてほしいのですが」


 と言って、グリーンの迷彩服を渡す。上下ツナギになっているものだ。これなら汚れても大丈夫。

 地面に寝転がってもらから、汚れてもいい服を着てもらいたい。

 着替えて出てきた二人に、同じ柄のキャップも渡す。


「なんだこの服は」


 と母上。


「えっと、森に入るのに動きやすいかなと。ちなみに、髪はポニーテールにして、その帽子の後ろから出してください」

「それはお前の趣味か?」


 ドキッとするが、表情を変えずに答える。


「いえいえ、森ではその美しい髪が邪魔ではないのですか?」

「まあ、そうだが。ところで、これから森に入るのか?」

「いえ、外の射撃場へ行きます。が、その前に、個人登録カードを作っていきます」


 といってカードを作ってもらい、二人を連れ出す。

 ところで、二人はどんな格好で森に入っていたのだろうか? 気になるけど、ここでは聞かないことにする。


 射撃場につくと、ガンツ達がライフルをもって待っている。母上は、そのライフルを見て無言になっている。


「これは新しい魔法銃ですが、魔法ライフルと呼んでいます。それでは、一丁ずつ持ってください」


 と言うと、それぞれガンツとタンツからライフルを受け取る。


「では、見ていてくださいね」


 といって、ライフルの足を出し、地面にうつぶせの体勢をとり、構える。そして、スコープを除いて照準を合わせる。


「おい、グレイス、的はどこにあるんだ?」


 と母上が聞いてくる。


「えっと、およそこの先五百メートル先です」

「……五百メートル? 的が見えるのか?」

「このライフルの上についているスコープ、望遠鏡ですが、これを除くと見えますよ」


 というと、早速母上とシャルロッテ様はスコープを覗く。立っての構えを教えると、覗く姿も様になる。


「見えましたか?」


 と聞くと、二人ともうなずく。


「それではそのまま見ていてくださいね」


 と言って、再びうつぶせになって照準を合わせる。


「それでは撃ちます。三、二、一、ファイア」


 と言って引き金を引く。すると、魔法銃よりよっぽどか大きいバシュッという音がして、ファイアバレットが撃ちだされる。二人は、スコープで的を見ていたので、当たったのが見えていたはず。


「いかがですか? これなら、かなり遠くからシカや鳥が狙えると思いますけど」


 と聞いてみる。すると、さすがに母上は行動が早く、即うつぶせになって構えている。


「シャルロッテ様も隣に構えてはいかがですか?」


 と聞くと、


「やってみます」


 と母上の横一メートル離れたところでうつぶせに構える。


「撃つときは合図をくださいね。それで交互に撃ってみてください」


 というと、母上から


「三、二、一、ファイア」「三、二、一、ファイア」「三、二、一、ファイア」「三、二、一、ファイア」


 ……と撃つ練習を続ける。


「あ、母上、すみません、大事なことを」


 と言うと、母上は撃ちながら


「なんだ?」


 と聞いてくる。


「このライフルですが、一発撃つのに使う魔力が、魔法銃の百倍必要になっています。なので、あんまり連続で何発も撃たない方がいいと思います」


 と、使用上の注意を伝える。母上もシャルロッテ様も


「わかった」

「わかりました」


 と言って、それでも撃ち続ける。意外と二人とも魔力量多いんだな。母上、脳筋だと思っていた。ごめんなさい。そうしてしばらく撃っていたかと思うと立ち上がって、


「これ、明日の狩りに持って行っていいか? 明日も元国王たちと狩りの約束をしているんだ」

「いいですけど、元国王たちの魔法銃の射程は十数メートルあるかどうかですよ? ライフルは五百メートル以上あります。お願いですから、後ろから元国王たちを撃たないでくださいね」


 と、念を押す。そして、ライフル用のケースを二人に渡す。二人はライフルをケースにしまい、肩に担ぐ。


「それと、これを」


 といって、もう一丁ずつライフルの入ったケースを渡す。


「さっきもう一枚登録カードを作りましたので、こっちも使ってみてください。こっちはアイスバレットです」

「もしかして、雷撃のライフルもあるのか?」

「いえ、雷撃はあんまり距離を延ばすと霧散してしまって。魔力を注げばいいんですけど、ちょっと効率が悪いので作りませんでした」


 と説明する。


「あと、この服はもらっていいのか?」

「ええ、よかったらキザクラ商会に言ってもらえばもう何着か作ってもらえると思います。それと、この後冬になったら、白を基調とした服もデザインしてありますので、そっちも注文してください。必要ならですけど」

「わかった。この後行ってくる」


 早速のお買い上げありがとうございます。


「あと、予想ですけど、元国王たち、ライフル欲しがるかもしれませんよね。その時は、買ってくださいって伝えてください。これもただじゃできなくて」

「それもわかっている。とりあえず、私たちは、使った感想をメモして提出するからもらっていいな」


 わかっていたから言う。


「もちろんです。ですが、スコープを覗いていると視野が狭くなりますから、必ず一人が周りを警戒してほしいです。それと、お肉を期待しています」


 二人は意気揚々と二丁のライフルを担いで去っていった。明日の晩御飯が楽しみだ。僕は一緒に取り残されたガンツたちに


「申し訳ないけど、もう少し作っておいてもらえる? で、試してみてよさそうなことは組み込んでほしい。よろしくね」


 と言って僕も戻る。この後、ガンツたちは、デザインや持ちやすさなどを検討したらしい。より良いものができたら、母上たちのものもアップグレードしてほしいな。



 翌日の夕食はカモだった。母上とシャルロッテ様に感謝だ。

 シャルロッテ様、ライフルでの狩りはどうだったかな? 後で話を聞こうかな、と思っていた。

 シャルロッテ様は別室の二人の食事の席でとてもうれしそうに狩りの成果を話していたらしいので、楽しかったんだろうな。よかった。




 さらに翌日、案の定、爺さんずがやってきた。元々国王、元国王、元宰相の組み合わせ。もういい年なんだから。


「グレイス、あの射程の長いライフル、いくらだ?」


 と。ストレートだなー。まだ決めていなかったので、


「えっと」


 と言いかけたところで、


「これでいいな」


 と机の上に金貨の詰まった袋が三つ。さすがセレブ代表。僕は中身を見てもいないけど、


「わかりました。とりあえず、認証カードを作りましょう。一人二枚でお願いします」


 といって、カードを作ってもらう。そして、


「これをどうぞ」


 といって、一人二丁のケース入りライフルを渡す。


「練習は、ドラゴン族の発着場横の射撃場でやってください。今日も母上とシャルロッテ様が行っていると思います。使い方を教えてもらえると思いますよ」


 というと、三人とも出ていこうとして立ち止まった。


「あの服は?」


 と聞いてくるので、


「聞いていると思いますけど、キザクラ商会で買ってください」


 と教えておく。



 しばらくすると、冒険者ギルドでは、迷彩服を着た爺さん三人と同じく迷彩服を着た二人の鉄仮面美少女パーティが話題になる。

 ちなみに、鉄仮面をかぶっているのは母上とシャルロッテ様、というのはばれている。そりゃ仮面をかぶって活動しているから。むしろ仮面の下のロッテロッテの顔を見られる方が危ない。神格化されているし。

 五人は長い筒のようなケースを担いでいるが、中にはレイピアが入っていると信じられている。野生動物や魔獣が穴一つで倒されているからだ。

 ちなみに、爺さんずは三人パーティ。母上たちはというと、「らいらい研に入れろ」というので、入ってもらった。

 僕らは育児休暇中だからお休みだけどね。二人とも、らいらい研の名前を使ったとしても、ちゃんとテストを受けてプラチナをもらっていた。

 母上はどう考えてもプラチナはもらえるだろうけど。シャルロッテ様、謎な人だな。あんな姫様みたいな感じなのに、戦闘能力高いのかな? 

 ちなみに、つなぎだが、しばらくすると一部の冒険者の間ではやった。ケガをしづらいし、冬でも暖かいし。冒険者としては、迷彩より、個性を出せる色や模様を注文しているようだった。冒険者は基本魔獣狙いだから、目立ってもいいんだろうな。斥候の人は迷彩だろう。フルプレートの人は、中が見えないからなんでもいいけど。女性冒険者の露出が減ったというクレームは、当然無視した。


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