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獣王共和国-5

 猫王国へ向けて移動し始めて二日、意外と早く鳥人族たちがやってきた。

 ここは全く何もない草原。見渡す限り誰もいない。お互い誰にも見られたくないってことか。


「まずは相手に殺意があるかどうかの確認。攻撃してきたら全力で反撃。一羽たりとも逃さないってことで」

「わらわは遠距離はあれしかないから、休んでいていいか?」


 と、こはる。


「私も遠距離はちょっと」


 とかなで。


「私もソフィリア様を守っているので」


 とミカエル。


「まあいいよ。僕ら五人でやれるところまでやってみようか。逃したら、こはる、おねがい」

「らじゃ」


 と、こはる。


 しばらくすると、数えられるくらいまで近づいてきた。ざっと二百くらいかな。ちょっと多いね。猿は連れていない。

 近づいてくると、鳥人族は三手に分かれた。右と左から回り込む隊、真ん中を攻めてくる隊と。


「左はドライアおねがい、右をソフィとライラ、僕とリリィで真ん中ね」


 と、配置を決めたところで、鳥獣人がウィンドカッターを放ってきた。三方向から。


「魔法攻撃をいただきました。全力で正当防衛。てー」


 と魔法を放っていく。

 ドライアは一度に数十の魔法を撃ちこんで鳥獣人が放ったウィンドカッターを相殺する。

 僕らはドライアに負けないようにゼロ距離の魔法を撃ちこんでいく。

 ドライアの方はわかりやすい。ウィンドカッターが飛んで行くので、魔法による攻撃だし、よけることに成功した鳥人族もいる。

 しかし、中央と右の隊は複雑だ。一度に倒される数は少ないものの、いきなり体が燃え出す、いきなり体を氷が突き抜ける、いきなり体が切り刻まれる。魔法は飛んできていないのだ。

 術者と思われる犬人族は手をかざしてはいるものの、その手から魔法は飛んでこない。

 一方、鳥人族も魔法を撃ちこんできている。相変わらずのウィンドカッターだが、京子ちゃんの方はミカエルが魔法をはじいているし、こっちはかなでが鎌ではじいている。よって、僕らは魔法に集中できていた。


 左の鳥人族部隊はあっさり全滅。

 ドライアは簡単に左の隊を片付けると中央への攻撃に参加している。おかげで、こっちもだいぶ減った。残り三十くらいになったときに、


「何が起こっているのかわからない。情報だけでももって撤退する」


 と偉そうな鳥人族。そんな簡単に逃がしてあげないよ。


「くらえー」


 と言って、広範囲爆裂魔法を残った鳥人族部隊の真ん中に撃ちこみ、大爆発を起こす。

 燃えないまでも衝撃で気を失ったのか、すべての鳥人族が墜落した。


「グレイス君、あれを撃つのかと思ってドキドキしたよ。空気清浄魔法を思わずキープしたよ」


 と京子ちゃん。ここは殲滅でいいので、いちいちにおいで気絶させたりしない。しかし、二百もの鳥人族の死体。どうしたものか。僕は馬車から横断幕を取り出して、


「ちょっとどんなものか試してみるね」


 といって、広範囲燃焼の魔法陣を発動させる。すると、五十メートル先で広範囲に地面が燃えた。燃え方を確認し、右も左も、鳥人族が落ちているところを燃やしていった。すべて燃やし尽くしたところで、


「ねえこはる、もう誰も見ていない?」


 って聞くと、


「誰もいないぞ」


 と返事が返ってきた。なので、移動を再開する。


「魔法戦、なかなか良かったんじゃない?」

「そうだね。フランとミハエルの防御もよかったよ。でも、やっぱり思うんだけど、ドライアの飛行はずるいな、っていうか、いいよね」


 と言うのは京子ちゃん。


「私も飛んでみたい」


 は、リリィ。

 実は、僕も思っていた。相手の魔法をよけながら広範囲に魔法をまき散らす姿。どこかのロボット大戦のようで、かっこよかった。あれ、絶対にやってみたい。でも、空を飛ぶのは……。

 多分風魔法で飛ぶことはできる。でも、あんなふうに自由自在に制御できるかな。ラナとルナに相談することがまたできたな。


「きっとできるようになるよ。その時は実験に付き合ってね」


 というと、リリィは渋い顔をした。飛びたいんじゃないのか!?



 そこからさらに二日をかけて移動すると、犬王国最後の街につく。しかしながら、シャシャたちが馬車に食料をいっぱい詰め込んでくれたこと、うちの馬車の方がベッドや水回り設備がいいことから、この街をスルーした。

 で、もう一日すると国境につく。何もないけどね。


「このあたりが国境かな? そしたら、フォームチェンジする?」


 と声をかけると、


「するー」


 という元気な声と、


「はいはい」


 とあきらめたような声が聞こえる。仕方ない。元気づけよう。


「元気が出るように、こんなものを作ってみました。これから先、猫魔導士でいきます」


 と言って、魔導士がかぶるような三角帽子を取り出した。しかも猫耳付き。


「おおー」


 という声と、ジト目が半々。特に京子ちゃんは


「わたし、カチューシャでいいわ」


 といって帽子を拒否する。


「え、なんで? 魔導士と言えば三角帽子じゃん」

「帽子をかぶっていない魔導士もいるよね」

「そりゃそうだけど、だいぶ南下したし、日差しが強くなってくるし、帽子をかぶらないと日に焼けるし、シミとかできたらどうする?」


 というと、京子ちゃんはしぶしぶ手を出して、


「帽子ちょうだい」


 と言った。


「ヒールでなおしてくれればいいじゃん」


 とつぶやいていたが、聞かなかったことにする。



 一日たって、猫王国の砦が見えてくるが、スルーする。砦の兵は、ケルベロスにぎょっとしていたが、乗っているのが猫魔導士だとわかると、手を振ってくれた。僕ら男が手を振ってもうれしくないだろうと思っていたら、リリィとライラが振ってくれていた。


 さらに二日で初めての猫王国の街。これもスルー。

 もう二日、南下すると大きな城壁が見えてきた。街自体も大きい。さすが猫王国の王都だ。たしか獣王共和国の本部もある。このことも、街が大きくなる理由だろう。

 僕たちは、仮面をつけて城壁の門に近づく。


「こんにちわ。街に入っていいですか?」


 と門番に聞く。


「すまないが、ちょっと待っていてくれるか? 君たちの持ち物だとしても、その大きな犬を入れていいかどうか、判断がちょっとつかない。もっと上の人を呼んでくるから」


 といって、部下を走らせる。


「ところで、その仮面はなんだい?」


 と門番が聞いてくるので、


「ちょっと日焼けに弱いんだ。長い間旅をするから、あまり日に当たりたくないんだよね」


 とごまかしておく。


「そうか。まあ、どこからどう見ても猫人族だし、いいか」


 と興味をなくす門番。


 しばらく待っていると、何人もの猫獣人がやってきた。猫? どう見てもライオンを筆頭にトラやヒョウだ。他の猫獣人より大きい。


「お前たちが怪しい犬を連れている魔導士か」

「そうですが、えっと、ライオン?」

「何言っている。ライオンもトラもヒョウも猫だろうが。それとも、どこか地方の生まれか?」

「ちょっと旅をしていたので、見慣れず、ちょっと威圧されちゃいました」


 とごまかしておく。


「まあいい。ところで、そんな奴らが何しにここに来た?」

「えっと」


 僕はストレートに来た理由を告げる。


「猫国王様に会いたいなと思って」


 というと、ライオンは目をぱちくりさせ、


「国王にだと?」


 そう言って笑いだす。他のトラやヒョウも兵士たちも笑う。


「会えるといいな」


 と言って後ろを振り向くと、勢いをつけてこっちを振り返り、僕の横にいたこはるに爪を突き付けた。僕は、とっさに刀を抜いて、それをはじく。


「どういうことかな?」

「いや、そのちびっこ魔導士が強そうに見えたんでな、お前より。ちょっとお前の泣き顔を見たくなっただけだ」


 と言って唇をつり上げて笑う。


「へー。そうかい。ところで、国王様はお前より強いのか?」

「さあな、戦ったことないからな、それなりじゃないか? なにせ、この猫王国は力がすべてだからな。」

「ふーん。あんたはこの国で何番目くらいなのさ。あまりに遅すぎちゃってこの街で言うところの強いってことがわからなくなっちゃったよ」

「そうか、期待外れで悪かったな。国王なら、この時間から三時間はあの城のてっぺんにある部屋で昼寝をするらしいぜ。行ってみたらどうだ?」

「わかった。もし国王が寝る前に会ったら、伝えておいてくれないか? 一つ、三十分後に僕たちはここから行動を開始する。だから、非戦闘員を城から出しておくこと。二つ、僕たちが窓から入らないように窓を閉めておくこと。三つ、そのてっぺんに国王がいなかったら僕らの勝ちで。よろしく」


 去ろうとしているライオン人族にそう声をかけた。ライオン人族は振り向くことなく、手を挙げて去っていった。その手をトラ人族の肩に落としていたが。



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