Summer breeze and you
遠野 真守
高校1年生。目立つことが嫌いなシャイボーイ。わざと前髪を伸ばしている。
榊野 恵
クラスメート。明るい性格で誰とでも分け隔てなく接することができる美少女。
その日は真夏日だった。
35度超え。
梅雨はあんなにジメジメしていたのに、それとは違う暑さ。
そんな中で俺は、忘れ物を取りに一度家に帰ったにも関わらず、また教室に行こうとしていた。
汗で身体がベタベタする。
忘れ物をしたことにイライラして自転車を飛ばして漕いだからだ。
明日までの宿題なんて…。
教室の扉に手をかける。
「あ、鍵…」
と思ったが、扉はあっけなくすんなりと開いた。
「え?」
放課後の教室、まさか人がいるなんて思わなかった。
「ビックリしたぁ、遠野君かぁ」
驚いて、はにかんだ黒髪ストレートの女子。
窓際の席で一人、勉強をしていたようだ。
「榊野恵さん」
「うん。どうしたの?すごく汗かいてる」
「忘れ物をして…明日までの宿題のやつ…急いできたから…」
俺は明らかに緊張していた。
赤い夕日と開いた窓から入るそよ風で、榊野さんの髪はわずかに揺れている。
きれいだった。
カメラがあったら迷わずシャッターを切っていただろう。
「あー数学のやつ?ちょっと量が多いよね」
シャーペンを指で器用に回している。
「勉強してたんだ?」
「一人だと、教室でも集中出来るんだよ?あ、ちゃんと先生から使っていいよって言われてるから大丈夫」
図書館とか行けばいいのに。
あまり長居しても迷惑だと思って、自分の机からモノだけ取って教室を出る。
「じゃあね」
俺に向かって微笑んでくれる。
ドキドキしていた。
ーーーーーー
この時が忘れられなくて。
また榊野さんに会いたいと思った。
毎日クラスで会ってはいるけれど、到底話す機会なんてない。
クラスでの榊野さんは、明るくて可愛くて嫌味のない性格をしていて、男子からも女子からも先生からも信頼されている。
対して俺は、気が弱くて話すことが苦手な“陰キャ”だ。
人と目を合わせることが怖くて、前髪を伸ばしているほどに。
クラスでは何を考えているのかわからない、空気のような存在だと思う。
…次の日では、下心があると思われたくない。
だから数日して、放課後に教室にいってみた。
けれどその日は、教室に鍵がかかっていて誰もいない。
「毎日じゃないのか…」
俺は榊野さんについて何も知らない。
ーーーーーー
その次の日、懲りずに放課後教室に来てみた。
教室の扉は……開いていた。
榊野さんは……いた。
この前と同じ、窓際の席で机に座って。
「…また忘れ物?」
「ああ」
本当は忘れ物なんてしていない。
今日も真っ赤な夕日が出ていた。
ただこの時は、前と違うところがあって。
「裸足…」
俺はつい呟いてしまう。
「暑いからねー、脱いじゃった」
足に視線を感じてか、照れたような困ったような表情の榊野さん。
チェック柄のスカート下の生足は、モジモジとどこか所在なさげだった。
何も塗られていない爪と、少しだけ長く見える足の指。
その足の指は、丸まって椅子の下にある上履きの上に乗せている。
すごくエロい。
普段見えることはない生足姿。
黒のハイソックスがないだけなのに。
「裸足、好きなの?」
何を聞いてるんだ俺は…。
榊野さんに変態だと思われてしまう。
というか、思われたに違いない。
「裸足?好きー♪」
予想外に返ってきたのは満面の笑み。
「でも今は、遠野君に見られちゃってるから、少し恥ずかしい…かな」
俺は息をするのが苦しいほど、ドキドキしていた。
「誰か来るとは思わなかったし…靴下穿くね?」
黒のハイソックスを手に取る。
「い、いや!俺もう帰るから!そ、そのままでいいんじゃない…かな!?」
めっちゃキョドりながら、俺は教室を出る。
もう限界だった。
ーーーーーー
「あ……いっちゃった…」
私は遠野くんの出ていった扉を見つめる。
途端に、外の喧騒だけが聴こえる教室。
キーンコーンカーンコーン…。
チャイムが鳴る。
「遠野くん…知ってるんだよ?」
スマホを取り出して、とある画像を開く。
そこには…。
靴箱で佇む男の子。
手には上履きを持っている。
それを…鼻先にあてがっていた。
「それ…私の上履きだよね?」
画像を見ながら呟く。
『ヤバいの見ちゃった!!遠野が上履き嗅いでた!キモすぎ!!!』
別の女子からの文章とともに、昨日クラスLI○Eに上がったそれ。
「せっかく…触らせてあげようと思ったのに…」
私は、ずっと“いい子ちゃん”で生きてきた。
みんなに愛想を振りまいて、求めてもいないのに頼られて。
…違うことがしてみたい。
“良いこと"じゃなくて。
気持ち悪いとは思った。
他人の上履きを嗅ぐなんて。
何を考えているんだろうと。
だけどそこには…知らない世界があるような気がして…。
ーーーーーーー
それはプールの授業が終わった時だった。
「え?」
教室に帰って次の授業の準備をしている中、ふと榊野さんのいる方を見てみる。
イスに座って友達と笑いながら話している。
そこから伸びる細く白い生足…。
それは上履きを履いてる足先まで続いていた。
榊野さんはプールのあと、裸足で上履きをつっかけていた。
かかとを踏んで。
友達と話してる中で足を動かしてスリッパのように履いている上履きが脱げて足先までみえたりして。
靴下を履いていないのは榊野さんだけだった。
他の女子はプールのあと靴下を履いている。
「ふふっ」
見ていると榊野さんと目があって。
見ているのがバレた…!
俺は恥ずかしくてなって目をそらす。
次の授業が始まって。
俺は榊野さんをチラッとみて目を疑った。
なんと榊野さんは靴下を穿かず裸足のまま授業を受けていた。
イスの下で足を組んで、足の裏まで大胆に見えている。
裸足で授業を受けているなんて。
そもそもプールのあと裸足のままでいる姿も、初めてみる姿だった。
イスの下で動く榊野さんの足…。
組んでいた足から上履きに足先を突っ込んだり、前に伸ばしたり。
すごくエロい…。
授業そっちのけでガン見してしまう。
ついには上履きを完全に脱いで、足の裏を床につけている。
こんなに榊野さん、足癖悪かったっけ…?
「恵、裸足で授業受けててめっちゃウケたんだけど(笑)」
「靴下穿くの忘れてた!」
「そんなことあるぅ?(気をつけなよ?アイツがガン見してたよ)」
こっちをチラリと見つつ、耳打ちをしている。
榊野さんと目があった…ような気がした。
「めんどくさいからこのままでいたいな〜」
「いや、靴下穿きなよ」
結局、榊野さんは放課後まで靴下を穿くことはなかった。
移動するときは、裸足で上履きをつっかけて。
「ん?」
机の中に小さな紙があった。
『放課後、〇〇(ゲーセン)にきて。 さかきの』
ーーーーーーー
まさかの呼び出し。
めっちゃドキドキする…。
自転車でゲーセンへ。
店内に入る。
いるかな?
歩いていると音ゲーをしている榊野さんがいた。
制服から伸びる生足は…そのままローファーを履いていた。
「榊野さん」
「あ!遠野君!よかったー来てくれて!ちょっと待っててね!」
音ゲーを真剣にプレイしてる榊野さん。
…昔からあるらしい音ゲー、ポッ○ンミュージック。
「よっしゃ、ハイスコア!」
普通に上手い。
「一緒に遊ぼ!」
「遊ぶって……」
「プリ撮ったことある??」
プリ……
「あれだよ、あれ!」
デカデカと並んでいるプリクラ機を指差す榊野さん。
…あるわけない。
「ない…」
「何かの縁だし、撮ろうよ!」
そう言うと俺の手をとってプリクラ機の中に押し込まれる。
なんだこれ??
これじゃまるで……放課後デートじゃないか…。
わけもわからないままプリクラを撮る。
「ちょっと!もっと笑ってよ〜!色々盛れるんだから!」
寄り添うようにくっついてくる、制服素足ローファー姿の榊野さん。
……夢か?夢に違いない!
とは思うんだけど、なかなか覚めない。
榊野さんが動く度に、ローファーからかかとが見え隠れする。
それも含めて、全てがリアルすぎる。
その後は、ゲーセンの隣にあるカラオケになぜか行くことになった。
「あつ〜い!エアコンつけよ、エアコン!」
部屋に入るなりソファーに座って、氷の入ったドリンクを飲み干す。
「なくなっちゃった…取ってくるね!」
「あ、ああ…」
戻ってきた榊野さんと、とりあえずお互い歌い合う。
榊野さん、歌上手いな…。
俺は緊張して歌っても声がかすれてしまう。
何曲か歌って1時間くらい経つ。
「ねぇ」
榊野さんが俺に近づく。
「楽しい?」
「女子とこんなふうに遊んだことなかったから…楽しいよ」
「私も」
お互い、照れが入っている。
「遠野くんがどこ見てるか、当ててあげよっか」
「??」
「あし…だよね?」
自然と榊野さんの生足を見てしまう。
「私の足ばかり見てるよね?足が好きなの??」
ここで好きって言ったら、それこそ変態認定されてしまう。
けど…。
「好き…だよ」
「!」
あ、足のことを言ったつもりなのに、違う意味にならないか!?
「あしが…でしょ?」
榊野さんが照れ笑う。
「ねぇ、触ってみる…?」
足をこちらに向ける榊野さん。
マ、マジで??
「足、だから…。でもちょっと靴脱ぐのが恥ずかしいんだよね…」
また照れ笑う。
そういえば、カラオケに来てからあんなに暑いって言ってたのに、一度もローファーを脱いでいない気がする。
「今日ずっと靴下穿いてなかったし、暑かったから、む…蒸れちゃってて」
靴の中で足の指をもぞもぞと動かしている…ように見えた。
そして俺は気づいた。
榊野さんも、無理してるなって。
声が震えている。
本当に触っていいのかな?
「足だけだから…自由にしていいよ」
とりあえず近づいて、ふくらはぎから足首のあたりまで撫でてみる。
「くすぐったい」
きちんと手入れされた榊野さんの脚はツルツルだった。
しばらく脚を撫で続ける。
や、柔らかい…。
「私ね…知ってるの」
な、何を…?
「これ…」
スマホに写っていたのは…俺だった。
榊野さんの上履きを手にとって嗅いでいる、俺…。
失神しそうになった。
終わった…。
始めから、榊野さんは俺のことを変態だと思っていて軽蔑していたんだ。
勝手に俺が一人で浮かれてただけだったんだ…。
「知りたかったの。遠野くんがどんな気持ちで私の上履きを嗅いでいたのか…ちょっと怖かったけど」
「なんで…」
「遠野くん全然話したことなかったけど、今日一緒にいてわかったから、悪い変な人じゃないなって。だから…触らしてあげる」
また、靴を履いたままの足をソファーの上に乗せて差し出す榊野さん。
こんな少しの間で俺を信用する榊野さんが、少し心配になったけど…。
「触るよ」
俺はふくらはぎから榊野さんの左足を持って、いきなりローファーを脱がした。
「え!ちょっと!!」
そして触る。
足の裏から足の指、かかとも。
蒸れてふやけて白くなっている。
当たり前だ、真夏にほぼ一日中素足で靴を履いていたのだから。
匂いは…意外とそんなにしない。
けど、汗のような湿っぽいような匂いがする。
汗をかいて“蒸れている"そんな素足。
あの榊野さんのこんなに蒸れた素足を、自由にできるなんて。
「は、恥ずかしい…」
顔を手で覆ってこちらを見れていない。
「自由にしていいんでしょ?」
俺は足の裏に顔を近づける。
榊野さんの汗でぺたぺたとした素足を堪能する。
「他の人に足触られたのも、嗅がれたのも、初めて…くさい…でしょ?」
「全く臭くないよ…むしろいい匂いだから」
今、自分は最高にキモいことを言ってる気がする。
「うそ…ちょっと待って」
「???」
「嗅いでみるから」
榊野さんは自分の足を窮屈な姿勢で嗅ぎ始めた。
スカートの中、丸見えですけど…。
「あー…くさい、くさいじゃん」
「なんで靴下穿かなかったの?」
「そのほうが蒸れて臭くなるかなぁって。私の生足が見られる方が嬉しいんじゃないのって」
おっしゃる通りです。
「上履き嗅いでるくらいだから、くさいほうがいいんでしょ?」
なるほど。
榊野さんなりに、俺がどうしたら喜ぶか考えてくれたのか。
「どう?私の足…遠野君にとって合格??」
合格どころか、満点だよ。
榊野さんの足を手に取る。
白く細い、足の指も長く整った素足。
こんなにきれいな足が、蒸れて匂うとか最高じゃないか。
俺は親指の先を咥える。
「え??何してるの??」
「ごめん、榊野さん」
咥えた先から舌で撫でるように舐めていく。
「ひゃうぅぅぅ!!」
まさか舐められると思ってなかったのか、身体を反るような反応。
「き、汚いから!だめだよ!」
足を引こうとする榊野さんだけど、俺の手が足を掴んでいて動けない。
今度はかかとから足の裏を一気に舐めあげる!
しょっぱいような、独特の味とザラザラを感じる。
これが、榊野さんの足の味…!
美味しい、とさえ思った。
続けて足の指の間も舌を通すように丹念に舐める。
「舌がヌメッとして、変な感じ…!」
何回も舐めて綺麗にする。
もう榊野さんの足の裏はびしょびしょに濡れてしまっていた。
「もう!舐めるなんて!」
「自由にしていいっていったよね??」
「いったけどぉ!」
足を拭いてローファーを履いた榊野さんは怒っていた。
嫌われたかな…。
「けど、絶対変だけど、なんでか嫌な感じはしなかったんだよね…びっくりしたけど」
「気持ち悪かったでしょ?」
「……決めた!」
???
「気持ち悪かったけど気持ちよかったというか…楽しかった!からまた触らせてあげる!けど、舐めるのは禁止ね」
絶対に嫌われたと思ったのに、また!?
「舐められるのは恥ずかしすぎるから、今後のキミ次第…かな!?じゃあね!」
駅前まできたクラスメイトは駆けるようにして、ホームに消えていった…。