84. 艦の改造を終えて
84. 艦の改造を終えて
その後、ユリアのこの世界の説明を子爵とリリアに引き継ぐと、
ジュンは、艦の改装で寝る暇もなく働いていたオットーに案内され、
ほぼ改造の終わった艦内を歩いて回った。
2人はまずコクピットに向かう。
コクピットはまだ、数名の技師が、景気の調整を行っていたが、
改装はほぼ終わっていた。
オットーは改装されたコンソールを前に説明を行う。
「まず改装された計器ですが、この船体で、光速の9倍まで速度を出せる様になりました。
魚雷等も今までより6倍も多く、砲弾を撃つことができますよ。
それと、船体の外壁の強度も向上され、電磁波によるシールドも出せる様になっています。」
オットーは、コンソールを操作し、艦全体のマップを表示させる。
「艦長、これは艦内マップですが、気温や気圧、酸素濃度などの値をここで表示できる様になっています。
艦なんですが、リビングデッキは拡張され、42室の居住エリア、新ラウンジ、庭園エリア、シミュレーションデッキ、
等々ですね。」
オットーは丁寧に1つ1つリビングデッキの改造点を説明していく。
「後は、エンジンルームも改装してあります。速度と出力を上げています。
シールドの強度も、このエンジンの出力を上げたことによって実は実現しています。
フードジェネレータ等のエネルギーや転送装置のエネルギー源、武器系統のエネルギー波もここから供給されています。」
オットーはここでもコンソールを操作し、動力制御系統の説明をしてくれる。
「それでですねえ、エネルギー源ですが、核融合、半物質変換炉、素粒子高速融合炉等から取り出したエネルギーを利用できます。」
その後2時間ほど、エンジンルームでのオットーの説明は続いた。
説明が終わると、次は格納庫デッキへ向かった。
格納庫も拡張されていて、
シャトルが追加で2機と、観測用ポッド、非常保管用物資等が置かれている。
「ここでは特に説明は無いのですが、広さが大きくなっています。シャトルも古い形ではありますが、
2機増やしています。」
「ところで、あそこに準備しているテーブルは何?」
「ああ、あれは、艦の改造終了を祝って、携わった技師と立食パーティーをするんですよ。
今晩です。
艦長も出られますか?」
「もちろんだ。」
その日、改造に立ち会った技師が20名ほど集まり、お疲れ様会が開かれた。
料理はイリーナが準備し、ソニアなど運び役で、対応したらしい。
オットーからは事前に、挨拶がお願いされていて、ジュンは当たり障りのない、
挨拶を行った。
「皆様、この度は、この艦の改修を行っていただき、ありがとうございます。
私は艦長のジュンと申します。
当初この艦は、長期航海に・・・・」といった具合にこなす。
ジュンの乾杯の音頭の後、ソニアやリリルが正装を装い、参加者にシャンパンを配っていく。
一通り配り終えると、歓談が始まる。
ジュンは、シャンパンを配り終え、一休みしているリリルの所にやってきて、労をねぎらう。
「私、正直こういうことが苦手なのだが。」
「実際リリルは、この世界に来て、順応して、いろいろ手伝ってくれる。
ありがたいよ。」
リリルは少しうれしそうな顔をする。
「そんなではないですよ。」
「ところで、ユリアは?」
「子爵と休憩室で休んでいます。」
「そうか。」
その後、2時間ほどこの会は開かれ、
技師は思い思いに楽しみ、格納庫に談笑の輪が広がった。




