82. 艦改装中の研究
82. 艦改装中の研究
ジュンは艦の改装中に、コンピュータプログラム内の人物を、転送装置で復元するため、
改造を行っていた。
具体的には、実際の人物を細胞レベルで読み取り、コンピュータ内でモデル化する部分を、
コンピュータの仮想人物からモデルを自動構築する部分について、頭を悩ませていた。
この分野について理論上可能でも、今まで倫理上の問題から、研究はほとんどされてこなかった。
ジュンは、仮想のプログラム上のカブトムシに似た虫を自動生成させ、転送装置に実現化させるところから始めた。
はじめは失敗し、体が変形していたり、欠損していたり、動かないものだったが、
パラメータやプログラムを調整し、生きた健康体の虫を実現化することに成功した。
その後、第2段階として、小さなスライムを生成する段階に移り、
これも3日ほどで、生成できる様になった。
一度生成した虫やスライムは、再度細胞レベルで分解しプログラム化した。
これによって、スライムレベルで、コンピュータのプログラムと実体化の行き来ができる様になった。
その夜、子爵が研究を行っている部屋にやって来た。
そして話しかけてきた。
「ジュン殿、スライムレベルで、この世界に呼び出すことができるようになったと聞いたが、
本当か?」
「ええ。でも、確実にこの世界に呼び出すのに、もう少し時間が必要です。」
「娘のユリアをこの世界に呼び出すのは、もう少し先になるのか?」
「今は、はい、としか言えないのが現状です。」
「そうか。」
子爵は話を止め、少し部屋の中を歩いた後、
「娘はあの世界で、時間が停まっているのだったな。」
「そうです。」
子爵は何か考えていた様だったが、
「ジュン殿、引き続き頼む。」
伯爵はそう言い、部屋を出ていった。
ジュンは次に、ネズミのモンスターで、実験に映る。
状態に異常があれば、プログラムの修正をし、
再度実体化する、を続けている。
スライムと違い、細胞構造が複雑化し、鳴き声も出す。
ジュンは子爵の為にユリアさんに早く合わせてあげたいと思うが、
焦りの気持ちを抑え、段階を踏んで安全の確証を取っていかなければならないと思っていた。
ある時から、リリルもサポートを名乗り出てくれたが、
子爵が、
「我々がジュン殿の足を引っ張ることになりかねないので、辞めておこう。」
とリリルに言う。
その後も、ジュンは艦の改造中、研究に没頭していた。
その様子を心配してか、ソニアとダクラスが声をかけてくれた。
ジュンは、実体化した個体が医学的に健康体かどうか、確認するため、
心配してくれた全員に事情を話し、ダクラスには手伝ってもらうことにした。
こうして、惑星にとどまり、艦を改装する日々は過ぎていった。




