81. イリーナのこだわり
81. イリーナのこだわり
今現在、ハインツとオットーがメインで、レオン号の改造を行っているが、
着任したばかりのソニアの先輩であるイリーナも、艦を改造しようとしていた。
彼女曰く、この艦の改造ポイントとして、
攻撃システムとコンソール、メンテナンスしやすいエンジンルーム等は当たり前と言うが、
その点に加えて、彼女のポリシーとして、艦を動かすのは人であり、
長期間滞在するところだから、居住性にも、重点を置いていた。
彼女が改造をしようとしている所として、ラウンジ、スパ、ジム、植物園を追加設置しようとしていた。
ジュン達は早速、イリーナからプレゼンを受ける。
ラウンジは、今現在、小さなカウンターとテーブル、いす、フードジェネレータ、
そして小さな宇宙空間が見える窓の部分といった構成だったが、
今のラウンジの区画を拡張区画に設置し、キッチンと大きなカウンター、テーブルと椅子を増やし、ソファーも設置、
そして、窓を大きくして、グランドピアノと観葉植物を置く、と言った様に改造しようとしていた。
彼女は、スパとして、シャワールームのほかに、宇宙空間が見渡せる風呂、サウナ等を備えた施設を説明する。
そして、スパの隣に、ジムを設置。
彼女曰く、狭い宇宙空間だから体力づくりが重要よ。
汗をかいたら、スパをすぐ使えることがポイントね、とのこと。
そして、彼女の一番の推しは植物園で、
宇宙を長期間旅するからこそ、植物園での癒しが重要とのことらしい。
スペースは、ローマのコロッセオの1/10位の大きさほどで、
亜熱帯地域の植生と川、海岸を模したものをすでに考え、
3Dプレゼンで熱く語っている。
ジュンは、これらを改造する予算はどうするのか、イリーナに聞くと、
「予算は任せなさい。大丈夫だから。」
とのこと。
ジュンはソニアの方を見ると、
「先輩はそういう人ですから。」
とジュンに言うと、イリーナに向かって、
「先輩、予算は…」
と言いかけると、
「改造事務所のモデルユニットとして、資金を出してもらうつもりよ。
つまりモデルルームね。実際に居住空間をデザイン、作り、その空間の課題を洗い出し、
改良する。だから、費用はかからないのよ。」
ジュンは、
「モデルルームだったら、ここの惑星の改造事務所で作らないんですか?」
と質問してみる。
イリーナは、
「重要なのは実務で使ってみて改良した結果を改良するということ。
改造事務所では、艦の運行実務を行うことは無いので、
こういったことは必要なのよ。
とのこと。
翌日、イリーナは、改造事務所の経営会で説明をし、資金を出すことについて、
了承を取ってきたとのこと。
食事の際、ソニアが近くにいたので、よく経営会が承認した、
と話をすると、
この改造事務所の利益の20%は、イリーナの所属するライフデザインプランナー出していて、
そこの元部長のイリーナのつながりで、経営会が承諾したのではないか、とのこと。
ジュンは、その後、イリーナから1週間で改造をやり切るとの話があり、承諾した。
翌日から、複数の作業用アンドロイドが入り、イリーナの提案した船の改造が始まった。




