77.休日とキャンプ(後編)
77.休日とキャンプ(後編)
翌日、
ジュンは早起きをし、キャンピングチェアーに座って、ぼーっとしていると、
2人が起きてきた。
「何を見ていたの?」
とリリルが聞く。
「自然を眺めていたんだよ。」
とジュンは答える。
「自然?」
「そう、木々の緑や、川の水の音、貴重な体験だからね。」
「こうした自然は、我々にとっては、貴重だからね。」
と、ダクラスもその様に言う。
「確かにこの世界では、宇宙空間ってところばかりで、
木々が少ないわね。」
「エルフだから森の木々が恋しくなることは無いの?」
「そう言われると、懐かしい気がするわね。」
「懐かしい…。」
3人は朝食をとる。
朝食は簡単に、トーストに目玉焼きを乗せたものと、
ハムとチーズをのせたもので済ます。
食事の皿をかたずけ、3人は釣りをすることにした。
「リリルの分も釣竿を準備したから使って。」
とジュンはリリルに釣竿を渡す。
「ありがとう、エサは…ああ、毛ばりね。」
3人はそれぞれ絶好の釣りポイントを探し、川面に糸を垂らす。
はじめの1時間ほどは3人ともつれなかったが、ダクラスが初めにヒットする。
そして、マスを吊り上げる。
「あ、子持ちだぞ、これは。」
「子持ち?」
「いくらの様な小さな卵を持っているからね。」
「!!私、あっちの方で集中して釣るわね。」
リリルの闘争心に火が付いたのか、本気モードになった様で、
離れた所で釣るようだった。
それから4時間、
ジュンは結局釣れずじまいで、ダクラスも先程釣った1匹だけだった。
「釣れたわよ。」
遠くの方でそのような声がし、リリルが魚を手にして帰ってきた。
リリルが手にしていたのは、1メートル弱のサケ3匹だった。
しかもそのうちの2匹がいくら持ちだった。
少し遅い昼食は、いくらご飯と石狩鍋にすることにした。
ジュンは、まずサケから筋子を取り出し、身を切り分ける。
そして、筋子をお湯の中に入れて粒をほぐしていく。
「この惑星の海にはアニサキスがいないんだけれど、粒をほぐしやすい様にお湯の中に筋子を入れるよ。」
そして、お湯を捨てて、バラバラになった幾らの粒を回収する。
その後、しょうゆに漬ける。
「本当は1日くらい漬けた方が良いんだけれどね。」
とジュンは言う。
いくらの仕込みが終わると、ジュンは事務管理棟のフードディスペンサーで食材を調達し、戻ってくる。
そして、切り分けておいたサケの身を調達してきた、豆腐やキノコ、春菊やネギ、人参等を入れた皿に一緒に盛る。
そして、酒かすとみそベースの汁にこれら具材を入れて煮込む。
横では飯ごうでご飯を炊いている。
「私の故郷の料理だからね。」
とジュンは2人に言う。
そしてジュンは鍋がちょうどよい食べごろになったところを見計らって、
「では食事にしよう。」
と2人に鍋をよそう皿とご飯を渡す。
遅い昼食の予定がすでに周囲は暗くなっていた。
「もうお腹すいたー。」
とリリルが言う。
「まず、このよそった鍋を食べてみて。
そして、ご飯にこのいくらをかけてみて。」
とジュンが言う。
「いくらはクラッカーの上に乗せたり、サンドイッチに入れて食べたりするものだと思っていたよ。」
と、ダクラスは言う。
2人はまず鍋を食べてみる。
「おいしいわね、熱いけれど。」
「確かに。初めての味だ。でも、悪くはないね。」
「このご飯にいくらを入れたものも食べてみてくれないか?」
「?!美味しいわね。」
「十分漬かっている?塩分が薄くなかった?」
「大丈夫、問題無いよ。」
「このいくらご飯、もう少しいくらを入れるね。」
結局、リリルの釣ってきたサケを使った料理を作るのに時間がかかったが、
2人に喜んでもらえてよかった。
残ったサケは、事務管理棟の冷蔵庫に預かってもらうことになった。
翌日、残ったサケを受け取り、3人はレオン号に帰還した。




