73.ベテラン技術者
73.ベテラン技術者
しばらくして、オットーが戻ってきた。
これから主任技師が来て、改造の説明をしてくれるそうです。
10分くらいして中肉中背のひげを生やした中年の男性がこちらにやってきた。
「ひょっとしてハインツか?」
先輩がその男性に声をかける。
「そうだ、トーマス、懐かしいな。」
「先輩、この方は知り合いなんですか?」
その様な質問をすると、その男性から返事が来た。
「君がジュンか?話はトーマスやオットーから聞いている。
それにしてもまだ若いな。若いうちはいろいろと経験を積んだ方が良い。」
話を聞くと、連邦造船製造共同体の前任の主任で、オットーの造船技術の大先輩であり、師匠とのこと。
「話は聞いておるぞ。速度を出すのに船体強度を補強しなければならないな。
艦の区画増強はそれからだ。」
ハインツの説明では、船体構造増強に7日、船体の区画増強に10日かかるとのこと。
「通常のプロセスでは、すべて17日になるが、10日で何とか終わらせよう。」
説明によると、光速の9.5倍まで速度を出せるようにし、リビングデッキを48部屋分、
予備区画を8デッキ分増やし、シャトルを1台から3台入る様に格納庫デッキを拡張、
レーザー砲の出力を2倍に増やし、反物質魚雷を合計80発格納できる様、改造を行うらしい。
「ハインツさん、リビングデッキの拡張と船体強度の改良だけで、そこまでお金はないですよ。」
「なに、廃艦からとった材料で改造するので心配するな。」
「結構ハインツさんって、強引なところあるんですね。」
ジュンは小声でハインツに聞こえない様に、先輩に話す。
「…まあな。でも腕は確かだぞ。」
結局ハインツの提案した案を、ジュンは艦長として承諾した。
予備区画については、今回、医療室とラウンジエリア、研究室を設置してもらうことにした。
医療室とラウンジは、廃艦の物をそのまま使い、
研究室は、ユリア達コンピュータプログラム内にいる者を現実世界に復元するための研究を行う設備を設置する。
ハインツの話によると、廃艦の中にバイオラボとして使っていた設備が余っており、それをもらうことにした。
「オットー、休んではおれんぞ、手伝え。
ジュンは、その間、ゾルタンを十分楽しんでいってくれ。
それと改造中でも、レオン号のリビングデッキエリアとシャトルの発着場は使ってもらっても構わんぞ。」
そういうと、ハインツとオットーは、改造事務所の中に消えていった。
「ハインツがああいっているのだから、ゾルタンを楽しもうじゃないか。」
先輩はそのように言う。
「私は、操縦系の説明をハインツさんから受けなければならないのと、先述の勉強をしたいので。」
とソニアは言う。
結局レオン号の改造中は、各自思い思いに、このゾルタンで過ごすことになった。
お互い、何かあったら、オットーが渡してくれた、メッセンジャーという通話ツールで連絡をとることになった。
「ねえ、せっかくだから、何かおいしい物でも食べにいかない?」
リリルはその様に言う。
「じゃあ、私たちはあちらに行こうか。」
先輩は気をきかせて、ソニアや子爵たちを別のところに移動させる。
ジュンは苦笑いをする。
「リリルは食べることばかりだな。
ジュンは端末で、ゾルタンのおいしいレストランについて調べる。」
「いくつかあるんだけれど、何がいい?」
ジュンは食事できるところの調べた結果をリリルに伝える。
そして、料理のカタログをリリルに見せる。
「そうね、じゃあ、スイーツのおいしそうなこの店にする。」
(ここから20分くらいのところか。)
ジュンは遠くで話していた先輩に断り、衛星内移動ポットで、そのスイーツのおいしい所に行くことにした。
2人は衛星内移動ポットに乗ると、窓越しに見える宇宙空間と停泊している宇宙船を眺めていた。




