65.容認派
65.容認派
ジュンは、宇宙船の提供前にやることがあり、
シャトルを乗り継ぎ、連邦政府の複数ある出先機関の1つ、『開拓星協力公団』に来ていた。
受付のアンドロイドロボットに、開拓星協力公団の団員登録面接の予約番号と、
その面接を受ける旨伝える。
そしてジュンは、面接会場に通され、今に至る。
面接ルームは、20平米ほどの部屋で、部屋の真ん中に椅子と、その前には、複数名座るテーブルがある。
そのれーぶるに座る者は、3名いた。
ジュンは、その3名に向き合う形で座っている。
面接の最初に当たり前の様に、名前と今までの職務経歴、そして志望動機などが聞かれる。
大昔から変わっていない、面接の場で聞かれる一般的な質問がほとんどだったが、
その中の1人が、
「君、そんなに緊張しなくていいよ。私は元々連邦造船製造共同体にいてね、君の先輩の上司だったこともある。
面接は以上だ、ご苦労様。
結果は3日後だ。
ここに、結果を確認する連絡先が書かれている。」
面接官の1人はそう言うと、ジュンの端末に、その面接官からコードが送られてくる。
ジュンはそのコードを確認すると、
『今日の夜9時に、ホワイトキャピタルに来ること。』
というメッセージが挟まっていた。
『どういうこと?』
ジュンは不思議に思いながらも、誰もいなくなった面接会場を後にした。
ーーーーーーー
その日の夜9時に、ジュンは1人でホワイトキャピタルに来ていた。
ホワイトキャピタルは、少し高級なラウンジで、各衛星の有力幹部等がよく利用することで有名だった。
ジュンは、話には聞いていたが、自分がいざ来てみると、
なんだか落ち着かなかった。
ジュンは受付で、自分の名前を告げると、
アンドロイドロボットに、1つの部屋に案内された。
そこには、先輩と先程の面接官がいた。
「遠慮せずに、さあこちらへ。」
先程の面接官が声をかけてくる。
それでもジュンはためらっていると、
「問題無いよ。彼は味方だ。
それに君をここへ呼んだ目的は、…まあ、そういうことだな。」
「どういうことだか、分からないのですが。」
「単刀直入に言おう。
我々は、コンピュータで作られた者を擁護する立場の者だ。」
ジュンは連邦政府で、コンピュータで作られたものを実体化することに反対する立場であり、
実際に取り締まりが行われている、現状であるが、
その一方で、そういった者たちを容認する組織があると聞いたことがある。
「容認派…ということでしょうか?」
「ああそうだ。ここでは、秘匿性の高い話に対し、最も都合よい場所だ。
だから君をここに呼んだのだ。」
と先輩が言う。
「君には、今日面接を受けてもらったが、結論は『合格』だ。
君は優秀なプログラマーで、そういった自我を持つ者が、君の腕の中で作られた。
その実績を買い、君は開拓星で、君のプログラムで作られた世界とその人物の世界を作る、
もちろん我々はサポートするよ。」
面接官はそう言う。
「あの、お名前だけでも、伺えないでしょうか?」
「ジョンソンだ。」
先輩も答える。
「トーマスだ。」
「あの~、先輩、名前、山田じゃないですか。」
「容認派は、コードネームで呼び合う、だからトーマスで良いんだ。
ジョンソンも同じだ。」
ジュンは、イマイチ納得いかない所があるが、何とか納得した。
(アジア系に、ジョンソンや、トーマスは無いよな。)
それから、3人で話をし、
①開拓星の進捗審査は、容認派のものが行う。
②その他、開拓星を初期開発する上で、容認派を通して、対応を行う。
③資金援助は連邦造船製造共同体からも出、技術物資なども、
『トーマス』経由で行う。
等々の説明がされた。
打ち合わせの最後に、2人のコンタクト先の連絡がなされ、
何かあったら、ここにコンタクトする様、強く念押しされた。
最後に、ししょー、いや、先輩から、
「分かっているよな?!」
と念押し確認をされる。
ジュンは、
「はい。」とだけ答え、その場を後にした。




