5. 迷子の犬を求めて(前編)
5. 迷子の犬を求めて(前編)
明けて翌日、まだ疲れの取れないジュンは、やっとの事でベットから這い上がり、
着替えてロビーの隣にある、宿屋併設のレストランに向かう。
食事は、入り口を入ったところ横にあるテーブルに置かれ、
宿泊者はそこから取っていくスタイルだった。
(ええと、パンとソーセージとサラダとスープか。)
スープは、ボチャのスープだった。
(…。 俺が昨日狩ったものか?)
空きテーブルにこれらの物を持っていき、
1人で食事をする。
(食事の味は現実世界の物と変わらないな。)
その時、スープを少し服にこぼしてしまった。
(そういえば、このシャツ、この世界では少し変わった服に受け止められるんだろうな。
ここの世界、現実世界の500年前のデザインだからな。
お金がたまったら、この世界の服を新調しよう。)
食事が終わり、紅茶を飲みながら、今の自分のレベルを確認する。
ジュン LV5
職業:戦士
HP 85 / MP 0
攻撃力 24
守備力 18
素早さ 13
魔力 11
運 2
経験値:652
所持魔法:
微小回復魔法
所持品:鉄の短剣、皮鎧、小回復ポーションx2
所持金額:銀貨6枚、大銅貨8枚、銅貨2枚(6820オロ)
(あっそうだ、この世界の服の値段を調べよう。)
ジュンは宿の受付にいた、中年の女性に最寄りの服を売っている所を聞き、
そこに向かう。
服屋の場所は宿から歩いて5分の所にあった。
店は町中の個人商店の様だが、一通りある様だ。
ジュンは店の中に入り、店で売っている男性物を見て回る。
キルトの上着や何かのモンスターの毛皮の上着があり、だいたい86000オロぐらいからある。
そして上着のシャツ(下着)は、だいたい12000オロ前後、
長ズボンは65000オロぐらいから、下の下着は男性物のコーナーにもかかわらず、
ドロワーズの様な物が売っている。
近くにいた店員に聞いたが、男性もこれを下着として付けるとのこと。
(…下着は見えないので、今着ている物で良いか。
だいたい下着をのぞいた服の相場観として、一通りそろえると16万オロか。
まだまだ手が出ないな。)
相場を調べたところで店の外に出る。
(今日も、ギルドで仕事を探すか。)
ジュンの足は冒険者ギルドに向かっていた。
ギルドに着き、中に入ると、ドノバンが何か受付ともめている。
ドノバンのチームメンバーはいない、1人だ。
ドノバン「だから、この依頼期日を前倒しするなら、報酬を倍額まであげてほしいんだ。
こちらは、受注中に期日が繰り上げになり、
他の仕事よりも優先してやらなくなったんだから。
それでも、日程のやりくりがつかず、依頼を1件キャンセルしなければならなくなったんだから。」
受付「そうは言われても、2倍に報酬を上げるというのは…。」
ドノバン「いいか、この依頼主から期日を一方的に期限を変更してきたんだろ。
わかるか?」
受付「ちょっと待ってください、私に判断できないので、ギルド長に会ってもらえますか?」
そう言うと、ドノバンは受付の担当と一緒に、カウンター脇の通路を歩き、ギルド長室に歩いていく。
(ああ、そうだ、依頼を探さなければ。)
ジュンはGランクの依頼ボードの所に行く。
ジュンはボードの隅々まで見て、良さそうな依頼を探す。
(おっ、これかな?今日は。)
ジュンは、依頼のカードを手に取る。
それは、飼い犬の捜索依頼だった。
早速、受付で依頼受理登録をし、
犬の飼い主の住所を教えてもらう。
飼い主は、このギルドから15分ほど歩いた、町の南門の近くだった。
ジュンは、依頼のカードに書かれている地図と、モディフィケータの地図を見比べ、
やっとの事で飼い主の家にたどり着くことができた。
飼い主の家は、町の一角の集合住居の2Fにあった。
ジュンは階段を登り、登ったところにあるドアをノックした。
「はい、ちょっと待ってください。」
やがて、飼い主はドアを半分明ける。
「ああ、冒険者ギルドで飼い犬捜索の依頼を受けたジュンと申します。」
「わかったわ、ちょっと待ってちょうだい。何か着替えてくるから。」
しばらくした後、ドアが再び開き、ジュンは中に招き入れられた。
そして、テーブルの一角の椅子をすすめられる。
椅子に座ると、依頼主が、犬がいなくなった背景から説明を始めた。
「3日前に、飼い犬がいなくなりましてね、これがその犬です。」
ジュンは犬を描いた絵を差し出される。
(ウ~ン、正直絵が下手だ。)
何とか読み取れる特徴は、ぶち模様で白黒、顔は長く、
目の周りは黒、そして鼻の周辺は白い犬と言うことだった。
「あの、ぶち模様はほぼこの通りなんですか?」
「そうよ。」
「この紙をお借りできますか?」
「そのつもりで渡したのよ。」
ジュンは、渡された犬の似顔絵のほかに、いつもの散歩コースと、
食べ物で何が好きかなどを確認する。
「そうね散歩コースは、まず、近所のパン屋ね、いつもパンを買いに行く時、ついてきてもらうの。
それから、肉屋。
まあ、定番の買い物コースね。
そうだ、ここでうちの犬、肉屋の主人からオーク肉からそぎ取った骨をもらっているわ。
それから、野菜の市場、そして、家に戻ってくるコースが定番お散歩コースね。」
「ありがとうございます。早速この散歩コースをまわってみて、ヒントをつかもうと思います。」
そう言うと、ジュンは依頼主の家を出てきた。
モディフィケータの地図で、パン屋を探す。
(ああ、ここか。歩いてすぐだな。)
パン屋は依頼主の家から歩いて、3分位の所にあった。
パン屋に到着すると、ジュンh者店の中に入り、店主にここ最近、飼い主の犬が来ていないか、聞いてみる。
「そうだな、あの家の犬、5日ほど見かけていないな。」
結局、ここではヒントを得られなかった。
次に、ここから歩いて5分ほどの肉屋に向かう。
肉屋は、町の南門が見えるところにあった。
肉屋の店主に犬のことを聞いてみる。
「ああ、2日前かな、あの犬、ふらふらと門の方へ歩いていくのが見えて、
お客の会計を済ませた後、追っていったんだが、もういなくてね。
もしかしたら、町の外へ出ているかもしれないな。」
ジュンは肉屋に感謝の言葉を述べ、南門を警備している兵士に、
2日前に犬が南門を通過したか聞いてみる。
兵士は当日の当番ではないとのことで、わざわざ詰め所に、
2日前に当番の兵士を呼びに行ってくれた。
そして兵士から大きなヒントを得ることができた。
「ああ、あの犬なら覚えているよ。
大きなうなり声をあげながら、白い犬を追っていったからね。
白い犬の大きさ? 追っていった白黒ぶち模様の犬の大きさと同じくらいだよ。
町の外を出た後、隣町への街道を走っていったよ。」
ジュンはこの兵士に、南門周辺に何があるか聞く。
「そうだなあ、畑と農場、雑木林があるな。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「ところで、あなたはこの町の者ではなさそうだが?」
「ええ、別の町の者で、ギルドの依頼でこの町に来ました。」
「そうだったのか、この魔にの周辺はそんなに強いモンスターは出ないが、
もし外に行くなら、昼間が良いな。雑木林など、中に入るとわかりにくくなるところがあるから。
夜ならなおさらだ。」
「ありがとうございます。」
ジュンは、作戦を立てるために、一旦宿屋に戻る。
 




