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#1 闇の帝王、高校生になる

 かつて、神々と戦いを挑んだ男がいた。


 彼は闇の世界を総べる帝王と呼ばれていた。


 彼は多くの魔物と悪魔を引き連れて、神々と激闘を繰り広げ、敗北した。


 神々は彼を地獄の底に幽閉した。


 それから数千年。彼は封印から解き放たれ、今、俺の隣で間抜けな顔をして居眠りしている。


 彼の名前は、『闇の帝王』から『闇野真王やみのまお』に変わった。ほとんど同じだけど。


 俺はこいつのことを『マオ』と呼んでいる。


 見た目は普通の人間。紫の髪と少しだけ角っぽいものが生えているので、魔界の者だと認識できる。


「おい、起きろ」


 俺はマオの肩を揺さぶってみる。でも、口をだらしなく開けたままだった。


 今度は軽く頬を叩いてみる。同級生にこれをしたら即刻指導室行きだが、マオとは中学の時から一緒なので、別にどうってことない。


 それでも起きないんで、つねったり、鼻をつまんでみたりすると、ムググといううめき声が聞こえてきた。


「ぶへぁ!! 殺す気かっ!!」


 いきなりガバッと顔を上げ、睨みつけてきた。まぁ、それもそうだよな。


「ごめん。授業中だから起こしてあげた」

「いやいや、だからと言って鼻をつまんで窒息させるやつがどこにいる」

「ここにいる」

「……そういえば、お前は変わり者だったな」

「お前も……ぐへぁ!!」


 マオと話している途中、俺の右半分の視界が狭まったかと思えば、ふっ飛ばされてしまった。


「イタタタ」


 頬を擦っていると、今度は俺の目の前で、誰かが壁と激突していた。


 マオだった。顔半分めり込んで、ほぼ白目になっていた。


「授業中は喋るなって、いつも言っているだろ」


 声のした方を見ると、地についた栗色の長髪と紺色のズボンが目に入った。


 見上げると、手にメリケンサックを付けた女性が俺らを睨みつけていた。


 彼女は、月下香つきした かおり。このクラスの担任にして、国語の教師だ。


 彼女は何よりも授業中の私語が嫌い。だから、俺とマオがこんな目にあったのだ。


「はい。ずびばせん、ぜんぜい」


 顔をパンパンにして、謝るマオ。俺も同じく、「すみません」と謝罪した。


 先生は、「次やったら殺す」と完全に脅迫を告げて、黒板に戻っていった。


 マオは赤く膨らんだ頬を擦りながら、俺を睨んでいた。



 放課後。俺とマオは廊下を歩いていた。


「お前のせいだぞ! お前が鼻さえ掴まなかったら、夢の世界でサキュバスとイチャコラしてたというのに……」


 マオがいつものように、俺の頬をつねりながら説教をしてきた。


 俺は彼の手を払いのけると、「悪かったって。きなこ揚げパンおごるから許してくれ」と言う。


 すると、マオは顔色を変えて、「ほんとか?! 許す! 許す!」と背中をバンバン叩いてきた。本当に都合のいいやつ。


 いつものパン屋に行こうなどと話しながら下駄箱の方に向かい、靴を履き替えていた。


 すると、マオが「なんだこれ?」と靴がしまわれている所から、何かを取り出した。


 紙状だった。封筒のようで、『真王さんへ』と書かれていた。


「これはもしや……」


 マオが慌てて封を開け、一枚の紙を取り出し、ジッと見始めた。


 俺を覗き込んでみると、紙にはこう書かれてあった。


『真王さんへ

 屋上に来てください。待ってます』


 たったの二行だけだったが、これが何を意味しているのかは、分かった。


「マオ、これは行ったほうがいい案件だぞ」

「あぁ、行ってくる」


 マオの表情はどこか固い。いつも呑気にアホ面を晒している彼だが、告白の呼び出しとなれば、緊張せずにはいられないのだろう。


 普通に歩いているように見えるが、足取りがぎこちない。一歩一歩階段を上るのも遅い。


「お前って、そんなに緊張しいだったっけ」

「誰だって緊張するわ! 一体どんな奴が俺様に告白してきかたと思うと……ドキドキが止まらんよ」

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