許されない恋
“ご報告”
在り来りだけど目につく一言。
SNSを見ていたらある芸能人が“ご報告”と呟いて直筆の文章を載せていた。
「この度結婚させて頂きました。」
幸せそうなツーショットの写真には光る指輪も映っていた。
動揺したと同時に『 自分はこの人のことが本気で好きだったのか』と気付いた。
“リアコ”
現実に芸能人等に本気で恋をする人達を指すらしい。
でも少なくとも自分は違うと思っていた。
会ったこともない、ましてやこっちの事なんて1ミリも知らない人に恋をするなんて馬鹿げてるとさえ思っていた。
そんな自分が恋?
複雑な感情が混ざり合い溜息となって吐き出される。
目の前のテレビの音量もベランダから聞こえる近所の子供のはしゃぎ声もどこか遠くて別の世界の音のように聞こえた。
手に持っていた携帯の着信音で現実に引き戻される。
「もしもし?」
相手は上司からだった。
「話があるからすぐ来れる?」
有無を言わさない口調にただ「はい」とだけ答え電話を切った。
支度をしてテレビを消そうとした時に占いがやっていた。
普段なら興味のない占いも何故か見入ってしまっていた。
「今日最もいい運勢なのは、かに座のあなたです!」
テンション高めに若い女性アナウンサーが話す。
「はは…っ、なんなら今日、最下位だろ」
朝から起きる嫌な事にそうボヤきつつテレビを消した。
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職場に着くと同僚達も既に揃っていた。
「遅いわよ」
朝の電話の主で直属の上司、犬飼 真琴が俺を叱咤する。
「あぁ…すいません。」
生返事で返すと少し眉間に皺を寄せたが、皆に話題を振り始めた。




