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第6話

 ドアを開ける前から異様な雰囲気を漂わせていた。その雰囲気は、元凶の後ろ姿が些か縮んで見えるほどだった。


「入るぞ」


 ドアを開けるとバラの香りが……いや、もっと獣臭い匂い、いや、入浴剤の森の香りか……?


 俺は部屋に入ることができなかった。香りの一つ一つが俺の鼻腔に押し入らんと吹き荒ぶようだった。……はっきり言ってしまえば臭かったのである。


「おい! いい加減にせんか!」


「ごめんごめん。たまたま演劇を鑑賞する機会があってね。ヒロインが素敵だったから、登場人物モチーフの香水を演者さんに送ろうと思って」


「貴様! 国家予算なんだぞ!」


「そう怒んないでよ。おかげでいいものができた」


「まったく……後で金額を報告しろ」


「ところで、外にいるのは召喚された子? この世界の匂いじゃないけど」


「相変わらず不気味なほど鼻が利くな……来い」


 呼ばれたのは俺のようだ。相変わらず凄まじい匂いだが、ドアを開けたことで些かマシになったので、かろうじて部屋に入ることはできた。


「失礼します」


 名乗ろうとした瞬間、背後から人の気配がした。慌てて飛びのくと、そこにいたのは調香師だった。調香師は俺に顔を近づけるとそこらじゅうを、文字通り嗅ぎまわった。


「本当に嗅ぎ慣れない匂いだ……香水の類じゃない……木材……いや、紙か……書庫に寄った?」


「召喚前に」


「ほらやっぱり。ということはそれ以外が君の……よし、それじゃ」


 といった調香師は奥の部屋に消えていった。


「あれが奴のやり方だ。少年、奥へ」


 元凶に促され、俺は奥へと進んだ。

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