第35話
手元に配られたのは、黒く馬鹿でかい変身アイテム銃と、これまた変身アイテムの付属品のような、ちゃちなカードだった。そのチープさは、俺に残った些かの童心を蘇らせるには十分だった。俺はほんの少し、心躍っていたのだった。
「まずはカードキーに魔力を流してください」
これに関してはなんとかできる。入ってすぐの授業で、魔力を他のエネルギーに変換しない術を教わったのがここで生きてきた。なんだかんだ言って、調香師も授業を受け持つだけあるのだと感心した。
「今、カードに名前が表示されているかと思います。その内容でよろしいですか?」
なんだか役所の手続きのようで煩わしい気もしたが、何もかも初めての俺が文句を言うのは些か気が引けた。今決まったような名だが、「プロタゴニスト」と表示されていた。
「そのカードを、銃の左側、引き金の上にある差し込み口に差してください」
こんなアイテムで変身するヒーローが実際にいた気がして、余計にそれにしか見えなくなっていくが、同時に先ほどの童心をより強く増幅させていった。
カード差し込み口を閉じる時のガチャリという小気味いい音、その後に細やかに発光する銃口、そんな小さなかっこいいに酔いしれていると、突如声が聞こえた。
「拳銃型個人認証最適化魔法デバイス。起動しました。現在の所有者は、プロタゴニストさんです」
平静を装ってはいるが、ボルテージは最高潮にあった。
「プロタゴニストさん、最適化完了しました」
「さて、皆さんそろそろ読み込みが完了した時期でしょう。では、実戦と行きましょう」




