第33話
王国襲撃事件から数日が経った。俺は変わらず学園での日々を続けている。授業をうけ、時折実技を行う。曖昧になっていた俺の住処の問題は、寮に部屋が支給され解決した。俺の日々は安定期に入ったと言っていいだろう。
安定期、なんと甘美な響きだろうか。俺は寮から教室への道すがら、まだ誰もいない伽藍の教室で幸福を噛み締めた。
噛み締めたのなら味わいたいが、それをさせまいとするのか、女子生徒がやってきた。
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
彼女の挨拶から始まった1日だが、肝心の彼女はどこか落ち着かない様子だった。
「えーっと、その……」
何かを伝えようとしている彼女を見遣る。あまりに吃るため、俺の方から声をかけた。
「ありがとう」
「……え?」
「この数日、いろんなことがあったな。全部君が支えてくれた」
率直な思いだった。彼女は一瞬破顔しかけたが、何か思うところがあってか、慌てて表情を戻していた。
「サム」
「ん?」
「サムよ。私の名前」
「え? あぁ、よろしく」
名を知るものが一人増えた瞬間だった。今まであまり興味もなく、入学のゴタゴタで名乗りもしなかったが、こうして教えてもらえるのは気分がよかった。
残り二人もすぐにやってきた。だがいつもの語りから始まる授業ではなく、知らぬ男が一人。
「おはよう。今日は僕たちに直々の依頼が来たんだ」
こんなこともあるのか。今まで細々とした依頼を学園の掲示板から受け取る程度だったので、困惑と期待が入り混じっている。
「君たちが揃ってある程度時間も経った。というわけで、改めて、実戦訓練をしたいと思う」
調香師はいつもの飄々とした態度を崩さずとんでもないことを言う。そしていままでの授業の延長かのように、こう言い放つ。
「君たちには、実験台となってもらいたい」




