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第30話

 手始めに近くにあった石を投げる。大した威力ではなく、難なく騎士に弾かれる。だが俺がすべきはここからだ。


 石にわずかに残った魔力に干渉する。日本には、この世の全てに神が宿るという八百万信仰があったが、この世界ではあらゆるものに魔力が通っている。その魔力と自分の魔力を接続し、場合によっては周囲の魔力まで動員することで、魔法を発動できるそうだ。ならば……


 石に魔力と通すと、石がこちら目がけて徐々に加速し始めた。やはり俺の仮説に間違いはなかったようだ。


 騎士を倒す方法も考えついたが、そのためには些か面倒を弄する。まずは空間に満ちる魔力に作用する。そして誰もいない虚空に石を投げ、また仮説を実証段階に移す。


 もちろん騎士からの攻撃は飛んでくる。それらを回避でやり過ごしながらの策略となる。魔力で勝手に避けてくれる故にあった緊張感のなさが再発する気がしたが、それが今回は有効に働いている。俺は今、この極限状態で、ひどく冷静であった。


 誘い込むべき場所にはクレーターができていた。


「やはり回避ばかりだな。その技術は認めるが、火力の貧弱さは直した方がいい」


「俺が昔いた世界に『敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず』ってのがあるんだ」


「何だそれは?」


「要は自分の弱さを知ってる奴は強いってことだ。そして俺はそれを知ってる」


 騎士は少しずつ、だが確実にクレーターに近づいている。あとは最後の一押しだった。


「ほざけ。お前のような素人に何ができる」


 そう宣う騎士目掛けて突進する。騎士はそれを嘲笑うかのように、バックステップで避けた。……先にあるのは地獄とも知らずに。


 俺は、魔法を起動した。同時に、起動に必要な呪文が頭に流れ込んでくる気がした。


「街は砕け、人は慄く! しかし我、此処にあり!」

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