第3話
放課後は学校の図書館で映画を見る。これだけが楽しみだった。
映画はいい。事実は小説よりも奇なりと宣う輩はみな等しく嘘つきだ。起きて学校に行って寝るだけで奇などといえよう存在は、せいぜい十代のアイドル程度だろう。生まれ落ちた時点で面白いことだらけなら、現代日本においてこんなに自殺者が出るはずがない。
敵の本丸へ侵入し、決戦の前に頭を撃ち抜かれた主人公を見ながら、そんな世の不条理を嘆いた。この映画は何度か見た。この後主人公は復活し、敵へと向かっていくのだが……おかしい。こんなに起きなかっただろうか? 起きないというよりは、倒れたシーンで画面がフリーズしたようだ。しかしこれは図書館にあるDVDで、ネットワーク関係のフリーズの心配はないはずだ。ディスクに傷でもついていたのだろうか? 雑に扱った誰かには怒りもわくが、何よりも興が削がれた。帰ろう。そう思った矢先に、主人公が起き上がった。
さあ、これから敵をなぎ倒す……はずなのだが、カットが入っているような、唐突な目覚め方だった。動きも、記憶にあるスタイリッシュさはみじんもなく、古いコンピュータの映像のように、カクカクと動いていた。
明らかに読み込み不良の域を超えている。司書に報告しようと、ヘッドフォンを外そうとしたその時、漏電のごとくヘッドフォンのケーブルに電気が迸った。俺の意識はそこで途切れた。