第24話
店主と警兵が争う最中、俺と女子生徒は店の側から来た刺客に対応することとなった。彼女は相変わらず来る敵来る敵を滅多打ちにしている。そんな人を師に仰いだのだ。俺もまた、回避してできた隙に、とりあえず斬りまくり刺しまくる。これしか戦い方は知らないが、思いの外回避に専念しつつ、何も考えず滅多斬りにするのは相性がいいらしかった。
ついでに俺には別の利点もある。攻撃には最低限、防御に一切リソースを割いていない。残りのリソースは思考に割く。
潜入がバレていたのはいいだろう。だが今戦っている人数からするに、端からわかっていたように思えてならないのだ。証拠としては些か弱いが、先ほどまでテーブル席に数名しかいなかった客が、今は店から溢れんばかりに刺客が殺到している。俺たちとは別の組、店の外で監視していた警兵たちを目指す。
いくら回避ができようと、流石に眼前を刃物が通過するのは怖い。しかし不思議と死ぬ恐怖は薄れていた。こんなことを思っていると中二病めいてしまうが、避けてしまうものは仕方ない。俺の生きることに対する緊張感は、この世界で緊張感が増したからこそ、心中では余計になくなっていった。
淡々と敵を殺しながら、難なく警兵の所には着いたが、二人はまだ苦戦している様子だった。俺は加勢しつつも状況を聞き出す。
「いつ頃からこの人数が?」
「君たちが店に入ってすぐくらいだ。客だと言っていたが怪しかったので話を聞いたらこの有様だ」
「端から襲撃する予定だったってことですか?」
「考えたくはないがそうなるな。応援を呼んだから、じきに収まるだろう」
応援という言葉に反応してか、一部の敵は攻撃を手を緩めていた。そこをすかさず攻撃していくと、敵は今までの猛攻が嘘のように静かになった。最終的には、実際に応援がきたことが決定打となり、奴等は散り散りに逃げていった。
戻ってくるなり自分達の班のリーダーが
「これはどういうことだ!」
と詰め寄る。
「あの人数はおかしいだろうが!」
「しかし、我々は何も……」
「そうなると怪しいのは……」
その一声で警兵たちは俺たちを一瞥した。
「……いやいや、俺、転生者ですよ? この短期間でどうやってそんな関係築くんですか?」
「私はこの戦いで20人を殴り殺した。それでもあなたたちは、私たちが敵のスパイと言いたいわけ?」
彼女の発言は殊に重く、警兵という立場の彼らも、いささか怯んだようだった。その隙をついて、俺も畳み掛けることにした。
「これが本当に誰かの裏切りであったとして、候補はここにいる十人と、実質的な司令塔である国王、そして魔術学園サイドの、調香師。って可能性が浮上する」
「……そうだな」
「で、誰かだけど、はっきり言って、俺は君たち8人の誰かじゃないかと思っている」
「貴様! 学生風情が偉そうに……」
「私たちは学生だ。自分の居場所を差し出すだけの材料もない。でも君たちなら、既に稼得能力もあるわけで、速い話が裏切りだってできるだろう?」
俺たちの間には、緊張と、血生臭さが入り混じった、生ぬるい風が吹いていた。




