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第21話

 パーティーを恙無く終えたのは表向きである。俺と女子生徒は関わった中で少しでも疑えそうな人物をピックアップし、動向を観察する日々を送っていた。


 いつものように教室で思索に耽っていると、ある思いが頭をよぎった。


「これ、本当に見つかるのか?」


「何よ? 諦めるってこと?」


「マナストーンを手に入れて、ゴブリンが所属する組織に渡す。って事自体は、別に誰でもできるんじゃないか?」


 彼女は大きくため息をつき、俺に向き直る。


「あいつから出てきたマナストーンは、大きさも純度もかなり高いものだった。あのレベルのものを仕入れるには、相応の位がいるのよ。金とコネがいるからね。だからこそ、一般人の線は早くに捨てて、貴族に的を絞ったの」


 ……生兵法は怪我のもとだ。


「それなんだけど……」


「何?」


 彼女にしては珍しく、些かバツが悪そうに口を開く。


「場所、変えよっか」



 そう言って連れてこられたのは、人気のない空き教室だった。


「よし、ここなら誰もこないはず」


「用は何?」


「じゃ、前置きはなし。犯人の当てはある?」


「ないけど?」


「今少なくとも言えるのは、魔力を制御することと、魔力系統のアイテムを作るのが上手い人、貴族階級、それも今の地位に不満のある人って事だと思うの」


「まあ、大筋では同意だな」


「今の時点ではまだ誰かの確信はない。でも、あのレベルのマナストーンを作れる人となると、心当たりがないことはないのよ」


「誰?」


「……ホントに、話半分に聞いてね」


「分かったよ。で、誰なの?」


「先生」


……調香師か。


「本気で言ってるのか?」


「思い当たる人なんて彼しかいないのよ」


「そうは言ってもだな……」


「調べてみる価値はある」


「取りあえずその線で……」


 ノックの音、刹那二人の間に流れる空気が、まるで音でもたてそうなほどに張り詰めた気がした。


「誰かいるの?」


 この気の抜けた声……調香師だ。努めて冷静を装うが、うまく声が出ない。大丈夫だ。今までの人生で、こんなこともあったろう。そんな時俺にはいつも何も起こらなかった。大丈夫だ。きっと大丈夫。その瞬間。


「じゃ、行こっか」


 天啓が降りた気がした。


「君たち、そろそろ授業だよ」


「すみません、先生。ほら、行くわよ」


「あ、あぁ」


 彼女のタフさに救われた。だが教室に向かう俺たちの背後には、調香師の笑みが音もなく忍び寄っているように感じた。

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