第20話
唐突に「マナストーンを仕込んだ人間がいる」と言われたとて、俺には皆目見当もつかない。よって俺に課せられた使命は、女子生徒のフォローであった。
こうした分析に明るいという男子生徒曰く、検出されたマナストーンの大きさと、それを仕込むだけのコネクションがあるとなれば、相応に力のある存在に限られるそうだ。それを聞いた調香師が、召喚成功と、ゴブリン部隊壊滅を祝してパーティーを開くこととなった。
もはや建前となってしまった俺の待遇には些か悲しみを覚えなくもないが、この程度の思いなら、少し経てば雲散霧消していることだろう。俺は学生服に身を包み、会場前の廊下を歩いていた。制服が元いた世界でいうところのブレザーに近かったことは幸いである。
「それじゃ、行くわよ」
そんな女子生徒の号令は、不安を増させるばかりだったが、それを察したように彼女は続けた。
「そこまで気負わなくても……あんたの歓迎なんだし、素直に受け止めなさい。で、接触してくる人間にはそれなりに注意を払うこと。いいわね?」
半ば武者震い的にコクリと頷くと、俺は会場の扉を開いた。
ドアが開くなり大きな拍手で迎えられた俺たちは、そのまま壇上に案内された。
「それでは、新たなる勇者の誕生を祝い、成長を願って、乾杯!」
調香師の音頭と共に、各々脚の持ったグラスが波打つように、次々と掲げられた。
俺はあまりのことに唖然としていたが、女子生徒はただ驚いているようだった。
「凄いな」
「凄いなんて言葉で片付くレベルじゃないわよ……あそこにいるのは学校長だし、その隣には王立軍の部隊長。それに……」
熱弁する彼女には悪いが、俺には誰が誰だか分からないのだ。強いてわかるやつは、調香師と、遠くに見える元凶くらいのものだ。
「え……? 国王様?」
「え? どこ?」
「ホラ、そこよ」
指差した先は元凶だった。どうやら元凶は国王だったらしい。と知るや否や、国王が俺たちめがけて歩き出した。
「やあ、ゴブリン部隊を殲滅したのは君たちだね?」
「はい、私と彼の二人です」
口火を切った彼女を見遣り、俺は静かに会釈を返した。そこからは彼女と国王の二人語りが展開され、俺はただ聴衆としてその場にいた。
棒立ちの俺を見ていたのかは知らないが、調香師と男子生徒が寄ってきた。
「向こうなんか食べなよ。せっかくのパーティーが棒立ちで終わりって悲しいでしょ?」
確かにそうだ何かしら適当に食べるか……と周囲を見渡せば、どことなく見知ったフォルムの料理ばかりで些か安心した。食べた限り豚肉のようなものや、水棲モンスターの、こちらで言うトロのようなものもあり、流石パーティーで給仕される食事とあってどれも美味かった。
「それにしても、よくこれだけ来るよね。先生なのに」
男子生徒は悪戯っぽく調香師に言った。確かに、珍妙な発明ばかりしていては、敵ができるのも仕方ないのかもしれない。
「失礼だなあ。一応僕の発明は世界規模で見ても優秀なんだよ。僕に恩を売らないと代えなくなる。……って話なんじゃないかな」
調香師も悪戯っぽく微笑み返していた。
その後パーティーは概ね何もなく進展し、恙無く終わりを迎えた。




