第12話
そうして女子生徒に指導をつけてもらうことになった。なんだかんだ引き受けてくれるのは、彼女の優しさか、はたまた調香師への信頼か……おそらく後者だろう。
「まずはあんたの避け方、傾向を掴むこと。話はそこからよ」
そう言いつつ怒涛の勢いで打撃を繰り返す。どの攻撃も面白いほど避けてくれるが、俺が感知し得ない攻撃――例えば女子生徒の魔法などだ――は回避できない。よって目下最大の目標は、攻撃パターンを多く知ること、そして回避から攻撃に転じる体捌きだった。後者はいい。彼女が教えてくれる。だが、前者のそれはというと……
「実戦しかないわね」
そんな無慈悲な言葉が返ってくるのみであった。
正直これだけはなんとしても避けたかった。俺の平凡なる人生において、戦いに駆り出されるなど、不満しかない。俺の想定にない攻撃に対しあまりに無力である以上、文字通り自殺行為以外の何物でもなかった。
「そう気に病まないで。ギルドからの依頼を受けるだけのことよ」
「だけのこと」ってなんだよ。と心中ぼやきながら俺は学園ロビーへと向かう。
眼前に広がるのは、リザードマンの討伐や野盗からの護衛など、血腥い依頼ばかりだった。そんな中でもかろうじて、本当にかろうじて目を引いたのは、「庭の雑草処理」だった。
「なあ、俺はこの依頼が……」
「これを! 二人で! お願いします!」
街北部のゴブリン討伐だった。やはりなんだかんだ俺のことが嫌いなのかもしれない。とりあえず置き去りにされたりはしないようにしよう。
「なんでこれなの?」
「うるさいわねぇ」
不満たらたらであるが、命のやりとりとあらばこうもなる。
「今まで稽古つけてきたのは私なの。だから人型でも比較的弱めなゴブリンを選んだ」
どうやら見殺しにはしなさそうだ。
「さあ、行くわよ」
北部の城門を抜け、遠くに見える森へと馬車を走らせる。運転手はついており、俺たちは車の方で目的地に着くのを待つ状態にある。
「あの……」
「何よ?」
「ありがとう」
馬車の前の方角、端的に言えば目的地を向いたまま、目も動かさず聞いていた。
「いいわよ。それより、ここを乗り切るの。良いわね?」
「分かった」
それだけ言うと、俺も目的地を見やる。鬱蒼と広がる森は、俺たちを拒む様に暗く思えた。




