出会いの「始まり」
「ここは…」
さっきまで踏みしめていた硬いアスファルトが、突然柔らかい草原に変わり、
ただ寂しい一軒家の前に立っていた。
ただ、なぜこうなったのか、なぜここにいるのか、この後なにがあるのか、
はっきりと分かっていた。いや、こうなると以前から分かっていたのかもしれない。
既に決めていた覚悟を再確認し、足音する方向へと視線を、彼に向ける。
「やぁ、お久しぶり。なんで君がここにいるのか。と、思ったが、その顔に決意が見られる。いいだろう。聞きたいこともあるだろうし、私が一方的に、君に話したい事、君が聞くべきことを話そう。
この話は私しか話せないだろうから。さぁ中に入ろうか」
そのまま草原にポツンと佇む家に案内される。
部屋には、中央に白色クロスがかけられたテーブル、並べられた9脚の椅子と、周りには2つの寝床、7つの寝床のある部屋がある。
大勢が住んでいたと思われるが、もの一つ一つが動かされていないほどに整然とした雰囲気、人の行き来がないと分かるほど埃が被っていた。
彼はテーブルの後ろにあった食器棚からコップを出し、スーパーでよく見るアップルジュースを注ぎ、私に差し出した。
こちらの反応も気にせず、すらすらと話す。
「こんな埃が被った部屋ですまないね。特に誰も住んでいないが、昔を思い出したくて建てた家なんだ。代わりといってはなんだが、ジュースでも飲んで話そうか。大丈夫、毒薬とか媚薬だとか怪しいものは入ってないよ。」
安全だと主張するためなのか、彼自身のコップにも注ぎ、一気にのどに飲み込んだ。
飲み込んだことにより小さなゲップを出し、小さく笑う。
「君とこうやっていると昔を思い出すよ。…さて、そろそろ長い話を始めるか」
言い放った瞬間からの目の前の彼は、目を細く、重く、遠くを見るかのような視線でこちらを見る。
その視線に強制力を感じない。だが、目を離すことができない。
「…この世界には、私たちのような「ギフテッド」という。
本来、「ギフテッド」とは、生まれつき周りの人たちより、特出した才能を授かった人のことを指す言葉だ。
数学が得意、記憶力のある、などといった人たちのことを指していた。
だがある日、「ギフテッド」に新たな存在が現れる。それは「人間離れした能力を持ち、ある特定の一つに関わることすべての才能が長けている人」だ。
「飛」ぶことに秀でる、「当」てることに秀でる、といった才能を持ち、通常の人の倍以上の能力を発揮でき、ルールが存在しないような人たちだ。
まさに、私と君のような人たちだ。普通の人に屋根伝いに走って電車に追いつくとか崖から落ちて平気、さっき君が体感したようにいきなり場所が変わることはあり得ない。
それが可能なのが「ギフテッド」だ。
今回、あるものたちについて、物語を話そうか。
主人公は四人いるのだが、君が十分に知っている一人目からだ」
前置きが長く、彼の口から最初の一人目について
知るべきであり、とても長い話が、
今、始まった。
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3月1日水曜日
夕日が傾く時間、西から影が迫る時間、私は任務の対象がいる建物を、崖から眺めている。
ただ吹く風が髪を揺らさせ、ただ時間が過ぎていく。
早く任務を完了させたらいいじゃないかって?
大丈夫、たかがこの任務を終わらせても、任務は終わらず、
この後にも大量の任務を任されている。
それに私はどんなことだろうと手を「抜」くつもりはさらさらない。
「対象を確認、任務を実行する」
切迫する状況でもなく、余裕のまま大きく深く息を吸う。
ただ目の前のもの、任務対象、それらを捉えて…
「抜刀」
なにも存在していなかった腰に、鞘が現れ、
収められた刀を手に取り、構え、放った。
「刀で斬り「抜」く」
崖から建物までの距離は、明らか刀に対する間合いが離れすぎている。どんな近接武器を使用したところで、ここから干渉すること自体、不可能な話だ。
だが、届く。
彼女が振りかぶった後、何も起こらない、斬れないと思われた。
だがその瞬間、建物に線が走る。
壁へと、窓へと、ガラスへと、どんなものも防ぐことなく線が走る。
亀裂が走る。
ビルの周囲を一周する。
そのままビルは建てられていたことを忘れたかのように、
上部からバラバラ、バラバラと崩れていく。
男女問わず、人な叫び声、がらくたが崩れる音、金属がこすれる音、
破裂音、爆発音、と様々な響く音が混ざり、徐々に阿鼻叫喚な惨状へと変わった。
「任務対象組織、壊滅完了。
同時に、秘密裏に使用、保管されていたものを回収成功。
回収物そのものの状態は良好のまま、保管するケースはこちらで用意し届ける」
建物から「抜」き取った回収物のあるアタッシュケース。
刀に完全には斬られず、食い込んだままの状態で彼女が握る刀にある。
本来大事にされているはずのもの、このような状態でいいのか
とりあえず、中身は無事の様子だ。
「今からこの場から退却する。報告はまたのちほど」
彼女の耳に掛けている通信機にそう言い残し、刀を鞘に収め、消える。
そのまま、足を動かそうとしたとき、後ろにいる存在に意識を向けた。
「お姉ちゃん」
うしろの存在、ちいさくて笑顔あふれる男の子であった。
ただ、直前の私の行動と後ろの建物の状況を考慮して、今出会ってしまった人、子供。
警戒を忘れず、ただ強く、逃さず、子供に問いかける。
こちらの警戒を知らず、ただ自身の思うまま男の子は、はきはきと話し出す。
「あのね、あのね、僕の大事からお願いがあってね。これを届けてほしいって頼まれたんだ」
背負っていたカバンを下ろし、ガサゴソガサゴソと中身をかき分ける。
その中から一通の手紙と一つの箱を小さな手で渡された。
「僕、これは誰から頼まれたの?」
子供とは言えど、何かしらの罠があってもおかしくない。ただし、この子自身には危険意思、敵意がないと見「抜」いた。決めつける判断材料がないが、せめて、関わっている人だけでも知ろうと子供に問いかける。
「「アイリス」兄ちゃんに頼まれた」
男の子は嘘偽りなく、明るく元気に、温もりの感じる名を答えた。
今になって思うが、この名を聞いてから心の中の「なにか」、そして私の運命が動き始めた気がする。
「拝啓 「名無しの権兵衛」様
寒暖定まらぬ今日ですが、お障りなく働いているでしょうか。
あなたの業績を存じていますが、名前がわからないとのことなので仮に「名無しの権兵衛」と呼ばせてもらいます。貴殿にとある計画に参加していただきたく、今回手紙をお送りしました。
おそらく、お気づきでしょうが私たちもあなたと同じ「ギフテッド」です。
そこで、ギフテッドのギフテッドによるギフテッドのための計画を決行するため、あなたを一人の候補として選出させていただきました。
明日、3月2日木曜日午前十時に、手紙と一緒に同封されている地図があり、そちらに書かれている場所に向かってください。また、手紙と地図を読み終えたら焼却処分し、箱に入ったバッヂを身に着け来席してください。
こちらでバッヂの有無で参加者なのか判断します。
なお、不参加する場合、特に連絡せず、本件を無視してくださって構いません。
あなたが計画に参加することを心待ちにしております。
来ないと殺します。
敬具」
明らかに口調、文字の大きさ、言葉の圧で殴り掛かれた文字である。
招待状というより、脅迫状の方が正しいだろう。
これを読んで来るやつも来るやつだ。おかしな奴らしか集まらないだろう。
但し、その内容は気がかりなものばかりだ。私の存在や「ギフテッド」をちらつかせている。
これらのことについて私は無視することはできないと判断し、
来てしまった。地図の場所に書かれた建物に。
場所:兵庫某所
3月2日木曜日
何気ない建物、四階建てで白色のビルだ。特に特徴のないビルだ。
唯一、「なんでも相談所」という怪しい看板があり、招待状の怪しさに似ているものを感じる。
建物前には、出勤中の会社員や登校中の学生、友達たちと走り回る小学生、ごみを回収する業者、患者を乗せた救急車のサイレンが鳴るといったごくありふれた日常が広がっている。
警察といった国家機関の施設にも見えず、ヤクザなどといった血なまぐさい場所も見当たらない。
平和な街だ。
「あんな手紙だったのに場所合っているのかしら」
あまりにも手紙の内容から想像できない周囲であり、逆に平和すぎて怪しさが増す。
だがしかし、地図の場所も携帯のアプリで確認しても、どちらも同じ場所を示している。
このまま手紙の内容を無視する選択もできるが、やはり内容が気がかりで無視できない。
通信機からも指令はなく、関係あるかないかも応答しない。
「どちらにせよ、入らないと分からないか。」
私は手紙と一緒に渡された箱を取り出した。
箱を開くと、中には箱のサイズとは合わない、小さなローマ数字の「Ⅶ」の金色バッヂがある。
衝撃吸収材といった新聞紙や発泡スチロールもなく、箱の中の広い空間の中、ただバッヂ1つだけである。
それを胸元に付け、気を抜かず一歩一歩、足を踏み入れた。
「こんにちは。」
入るとドアにぶら下がっているベルが鳴り、そこにはエントランスがあり、特に目につくものがなく、受付カウンターの周囲には、防犯カメラ、上へ上がる階段、下へ下がる階段、奥に「倉庫」書かれた扉がある。
私はそのまま、声が聞こえてきた受付カウンターの中を覗いた。
そこには、とても背が中学生ぐらい低い女性が、カウンター机の下でパソコンを打ち続けていた。
「これで入場できるのかしら。」
胸のバッヂを外し、見やすいように小さな女性の目の前に向けた。
「「お嬢ちゃんこんなところでなにしてるの?」って聞かないなんて変な人。だいたい、来た人みんな私のこと子ども扱いしたけど、私はこれでも今年で18よ。まぁあなたに愚痴を言っても関係ない話で、…気にしないってことは、「名無し」さん?」
「合っていなくても、何かあるの?」明らかに力で負けることはないのに、無意識に口調が強くなってしまう。
ただ、分からないことばかり、戦場に立たされている気分になる。
「ここは「なんでも相談所」、だれがなんと言おうともね。別にならず者の集まりでもなく、
「普通の一般人」しかいないし、そんな警戒しないでくれる?。」
パソコンを閉じ、ちいさな手で私の顔をゆっくり押し上げて、机の上に飛び乗った。
「会場はこの階段を下りた先にあるから、気を付けてね。」
「何にです?」
「アイリス」
即答で言い返された。そのまま理由もすらすらと続けた。
「アイリスは、好き勝手に自由気ままに「容赦もなく」行動するから、私は基本彼の行動は無視してるわ。
だから、気を付けてね。おねーさん」
「アイリス」今のところよく聞く名前だ。会ってもいないのに。しかし…
「…私を知っている時点で、「アイリス」もあなたも普通じゃないわ。」
「それはお互い様だよ」
私は言葉を返し、階段に向かう
小さな女の子は軽く鼻で笑い、またカウンター机の中に潜った。
地下へと続く階段、長い階段、
一段一段降りるたびに、足音がアスファルトに響く。
とても静かだ。
自分の心音が聞こえる。ただ、命の危険を感じない。
この先何があるのかわからない。
ただ、無意識に「知るべき」ではなく「知りたい」に変わっていた。
「アイリス」とは誰なんだろうか。
警戒すべきなのか、あの子供から見「抜」いたとおりに温かい存在なのか。
はたまた、異常なやつか。
私は、「アイリス」に満たされ、不安に満たされ、
いつの間にか、階段を下りた先にある扉前で立っていた。
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扉の先には、白い空間が広がっていた。
そこには見るからに派手な衣装をした金持ちやインフルエンサーといったさまざまな個性がいて、
ナイフを舌でなめてる人や大男等など…
ニュースでも見た顔ぶれもいる。ちなみに、今走って入ってきた人は有名会社のご令嬢だ。
会場にて 午後06:35 試験説明
会場は白い空間であり、立方体の箱の中にいると思うほどで、目の前にはゲート、その上にはガラスで仕切られたブースがある。
いきなり、中から放送音声が流れる。
「……ええー、皆様、お集まりいただきありがとーうございます。
ごぞーんじの通り、試験目的は作戦に見合う人材か見定める実践形式の試験でーございます。
始める前にー質問ある方はいますかー。」
ご存じないですね。他の人の反応からすると周知の事実のようだ。
中の男らしき声が約40人程度の人たちの前で聞くと、後ろのほうから質問が飛んできた。
「理解はしましたけれど、判定基準や定員とかいらっしゃらないのでしょうか。」
と先ほど最後に到着した小さい女性が質問した。
「あーそれは、皆さんのリーダーとなる人が採点者だ。なーお、その人は、すでに皆さんのことを把握済みであり、このゲートの奥にーいる。
本人曰く「みんな耐えろよー」とのことー。
ちなーみに、この説明が終わったら、すぐに一斉に試験スタートです。早く終わらせますのでー、気楽にしていてくださいねー。
あと基本的に倒されたら不合格、武器OKということだけは覚えてください。ほかに質問のある方いますか?」
皆理解したのか、顔を引き締めている。
「それではー、今から試験の開始に移らせてもらいますねー。」
(名無し)は、気がかりなことを考えながら試験への気の引き締めとして武器を構えた。
……耐えろ、持久戦ということなのだろうか
だがしかし、採点者は目の前にいる。すぐに一斉に試験スタートだと言う。
持久戦の始まりにしては急すぎな気がする。
早く終わらせるというなら、開始した瞬間、奇襲でもするのだろうか。
なら、この人数を奇襲するなら、姿は必ず目視できるはずだ。
でも、私は周りの人たちの実力を把握している。中には世界に名を知られるほどの実力のある人もいる。
単なる力比べにしたら、ほぼ全員合格できるレベルだ。
それなのに、私たちを知っている上で不合格の可能性があると彼らは言う。
あり得ない。それだと、{普通じゃない}としたら……。
……そこで(名無し)の女性は、さらに気を引き締め「何か」を確信したのか、目線はゲートほうへと睨み、額から汗が浮き出て……。
男がマイクを持って、「それでは、準備してくださーい。!」と叫びだす。
……普通じゃない。なら……
「よーい……。」
……私と同じ、ギフテッドならば!
「ドン!」
スタートの合図後、女性(名無し)の反応とゲートの爆発音がタイミングはほぼ同じであった。
……それから数秒立った。
ゲートは瓦礫の山である。
さっきまであった白い箱の空間は、
「……はっはっはアハあははははははハあははははっハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……。」
不気味な笑い声が響く地獄と化していた。
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笑い声が止まり、暴風が吹き、地鳴りが響き、地面がえぐれ、壁は剥がれ、天井は大破していた。
この小さな何もない空間で爆発や暴風、地揺れ、衝撃波などと起きるとは思えない現象が数秒の間に立て続けに起こった。
「皆さーんだいじょうぶですか!」
男の慌てた声のマイク音がするが、砂煙が多すぎてブースが見えない。
それどころか周りも少しぼやけて、現状に状況の把握が追い付かない。
女性(名無し)のみ、この数秒の出来事についていけていた。
見える範囲には、周りにいた人が多くの傷を受け、中には出血がひどく助けを求める人もいる。
攻撃を受けたのか、壁に打ち付けられた人もいる。
女性(名無し)はそんな中、「採点者である人物」の蹴りを見「抜」き腕で受け止めていた。
会場が大破したことによる砂ぼこりで蹴った本人が目視できない。
でも確かに、並外れた蹴りがこちらに来た。だから、足をつかみ止めた。
止めなければ、殺られると錯覚するほどだ。そんな経験、いや、生まれて初めてだと言ってもいい。
「……何者ですか。」(名無し)は正体不明の採点者のシルエットへと睨み威嚇する。
やっと動揺していた私を落ち着かせ、異能である力を使用し、目の前の【異常】を見抜く。
別に最悪の事態でもない。ただ、規格外の苦痛が走る。喉に鉄の味がする。
内臓まで響くこんな威力など受けたこともない。
(名無し)の戦闘においての実力が、自分にここまでの攻撃を一瞬にやり遂げること相手のことが知りたい、知るべきだと思えてくる。
だからこそ、そんな恐ろしい攻撃手段を持つ人物に正体を明かすように求めた。
目の前の男「アイリス」は足がつかまれている状態のまま、手に持っていたスピカーを口元に近づけた。
「ガーガーガー、マイクテストー、マイクテスト―
……えー受験ナンバー01生存時間0.120秒不合格
受験ナンバー02生存時間0.525秒不合格
受験ナンバー03生存時間1.133秒不合格
受験ナンバー04生存時間1.139秒不合格
受験ナンバー05生存時間1.140秒不合格
受験ナンバー06生存時間1.200秒不合格
受験ナンバー08生存時間1.235秒不合格。……」
淡々と話していく。
受験ナンバーが一つ一つ増える度、砂煙が薄れて(名無し)の目に力無しでも見えてきた。
見た目は20代男性、目にクマがあり、髪の毛はぐしゃぐしゃであった。
細身でありながらも先ほどの威力の大きい蹴りをした。いや、この会場を大破するような人物には見えなかった。
だからこそ、「ギフテッド」と確信できる。
「……ンバー37生存時間2.909秒不合格。ナンバー38は、惜しかったねー。
せめて、あと0.091秒もったらぎりぎり合格だったのに残念だねー!」
目の前の男は、緊張感のかけらもなく、場違いな笑いを響かせる。
未だに私の質問に答えずへらへらしているのが気に入らない。
「……もう一度聞きます。何をしたの、そしてあなたは誰」
(名無し)は、今度は力強く張った声で言い放ち、つい手が力んでしまいアイリスの足を強く握る。
「ただ殺そうとしただけだよ。さっきの質問内容より増えてるぞ」
シンプルに平気で答える。見合わない。見「抜」く私の力には殺そうとしていた男にこんな温かな心とは逸脱している答えだ。
男は、自身の服についた汚れを手ではたき落とし、(名無し)に一礼した。
「…おや、よく見たらあんたが「名も無き英雄」か。お会いできてうれしい限りだ」
言葉は丁寧に、反対に見た目はへらへらして礼儀が感じられない様子。
「僕は採点者、そしてきみのリーダーとなる者、「殺す」男、アイリスだ。どうぞよろしく」
名前を名乗り、男は(名無し)の近くへと迫り、アイリスという男の目と(名無し)の目が合わせる。
「受験ナンバー39(名無し)さん、アンラッキーのきみは合格、
そしてこの作戦において、私の部下…足枷となってもらう。」
淡々と言いと同時に口を(名無し)の耳もとにまで近づけ、顔を歪め、凍えた小さく低い声で……。
「これからよろしく、英雄……。」
……つぶやいた。
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「アイリ―やーりすぎだぞ」
破壊されたゲートの奥から和やかな顔で花柄の服を着た長髪の男が現れた。聞いた感じブースから聞こえてきた男の当人だろう。
「あーあー、どうするのこの惨状、血の池みたいな感じなってるぞ。この人なんか生きてるの?」
こちらに近づきながら、倒れている人に手を目の前で振るといった反応で一人一人確かめている。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ「殺」してはないよ。いわゆる生「殺」しさ。なんなら今すぐに事前に用意しておいた近く病院に送り付けとくよ」
アイリスはそう気軽に話しながら、トンと片足を地面につけた。
するとまた、先ほど起きたものより小さな衝撃波発生、勢いのあまり目をつぶってしまい、風が止むのに気づき目を開くと、さきほどから死体のように見捨てられていた大量の重傷者がいたはずがいなくなり、私含め四人しかいない。
とっさのことで少し困惑した。「彼らはどこにやったの。」
「本当に近くの病院さ、ここに来るまえ病院とか見なかったかな。そこの先生とは知り合いでね、今回のことで多分重症者が出るかもしれないから治療してくれないかと頼んだらすんなりOKもらったよ。多分数人だと思っていたのだろうけど、今頃真っ青になって俺の置き手紙の内容を見て怒ってるだろうな」
「でーも、あの人優秀だからさっさと治療して「終わったぞ。だから驕れ。」って言われるぞ。」
アイリスと男はいたずらかのように笑う。
まるで普通のように話を進めていく二人だが、普通ではない。
確かに「ギフテッド」はおかしなやつらばかりだと聞いたことがあるが、今まで関わった任務はなく私以外のギフテッドに会うのは初めてだが、それでも思う。異常だと。
「さーて、アイリ―と多分No39は(名無し)さんだよね。チームに入るってことで計画内容の確認や自己紹介とかしたいから、ふたりとも2階の事務所にいこーか。」
男は私たちを先導し階段へ向かおうとしたら。
「もうひとりいますよね。」
「もうひとりいるぞ。」
つい、被ってしまった。
「気づいていないのか。レーティー」
「えっだーれっ?アイリーとの戦闘耐えた人いるの!?」
男は声を大きく叫び驚く。
私からしても、やはりアイリスを知っているこの男からしても驚愕の事実のようだ。
「耐えたっていうよりも…あいつ倒れて外してしまった。」
いいながらある方向へと指す。
そこには、試験時間ギリギリに到着し試験に突破したもう一人であり、アイリスの攻撃をよけた問題の人、もがいているご令嬢「七畑 花」がいた。
「砂が目に入って痛―い!見えなーい!」
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五人が集められた事務所2階では、
一人は未だにすこし目が潤んでいて、もう一人はパソコンとにらみあい、
他にはリンゴを丸々食らいつく者や気にせず話し始める者…
「さーて、落ち着いたところで自己紹介でもはじめよーか。
私はレーティー、気軽にレイって呼んでくれ。前職は探偵、趣味は散歩、日向ぼっこ。このチームでは探偵であったことにより「探」知役だ。よーろしく。…じゃーあ時計回りに次はバタフライガール!」
「その呼び方失礼だからやめてって言ったわよね!」
受付にいた少女はレーティ―の呼び名に強く言いつけ、仕事最中なのかパソコンに向かって指をキーボードに打ち続ける。
「忙しいからできるだけ早くするわ。私の名前は白部鳳、前職無し、趣味はまた今度。役割は「調」査。以上」
顔をパソコンに向けたまま、急ぎ気味に話し未だになお打ち続ける。
「次は僕だな。僕の名はアイリス、前職はいわゆる殺し屋をしていた。趣味は普通の生活に面白いものがいろいろありすぎて大変楽しい。強いて言うなら映画だな。役割はこのチームのリーダーだ。このチームは「ギフテッド」を保護・捕獲・始末の三つを目的としたものだ。なぁに別に国の組織とかではなく、「市民組織」としての団体だ。気軽によろしく」
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「これが君とアイリスの初めての会合だね。」
男は長く話していた私たちの過去を一時中断した。
「君の物語はこの先どうなると思う。律」
名乗ったことがないのに、男の発言には悪意が感じられないどころかアイリスとは違う温かみを感じる。
「物語と言いますけど、私たちの過去は変わらない。そして私たちはこれからも共に進みます。何があろうと」
「みんなはそうであっても、君は違う」男は冷静に言い張った。そのまま彼は言い放つ。
「これからたくさんの物語を君に話す。その上で君には大きな決断をしてもらわないといけないんだ。
「アイリス」も含むみんなか、自分自身かだ」
徐々に震えていく男の手。主張が終わったときに強く握りしめていた。
「君のアイリスとのあの「約束」は果たされるべき大切なことなのは、私も分かっているんだ」
男は口をかみしめ、小さく、涙が目から流れる。
男の考えはもうとっくに見「抜」いている。会った瞬間から。これから先何がこるのか、私のすべき決断、さまざまなことを。その考えを知ってもなお、私はこの限られた時間の中で、出来るだけ私たちの物語を知りたい。義務感ではなく願いとして思った。
なので、「聞かせてください」無意識に私は言った。
返答を聞いた男は涙を拭きながら「あぁ」と小さくつぶやく。
そして、再び長い話の続きを始めた。




