過酷な要求に応えるために誕生したガラパゴスサバイバルナイフとの出会い ~Bark River PSK~
ナイフ探しが始まってすぐに見つかったのがブラボーマイクロである。
ブラボーシリーズ最小のナイフで、刃渡りは57mm。
ある意味で条件は満たしていたものの……
すでに廃盤となっている上に刃厚が2mm台と薄く、マンホールをこじ空けても1度できるかどうかというぐらい脆弱なナイフゆえに評判が悪く廃盤となったシリーズであり、多少食指は動いたものの購入を決断するまでには至らなかった。
その後もメーカーに縛られる事なく探し回るものの、求める存在は中々見つからず……
諦めるわけにはいかないので仕事が上がると帰り際にアウトドアショップに立ち寄ってみたり、その際にいかにも詳しそうな店員から話を伺ってみたりといったことが連日のように続くことになるのだった。
そんな仕事終わりに自宅に戻ってネットサーフィンをしながらナイフ探しをしていたある日のこと。
筆者が海外のキャンプ系フォーラムサイトにて相談を投げかけていたスレッドを目撃した外国人から、ビデオレターがメールで送られてきた。
そこには後に筆者が購入することとなるナイフと、もう1つについて解説する内容の動画が添えられていた。
運命の出会いの瞬間である。
その2つのナイフの名は「Bark River E.P.K(バークリバー E.P.K)」と「Bark River PSK(バークリバー PSK)」。
どちらも割と最新のモデルであり、2015年に新発売されたもの。
日本では真新しい存在ゆえか所有者がまだ少なく、あまり知られていないモデルであった。
というか日本で扱っているショップが極めて少ないモデルであり、筆者がブラボー1を購入した時期より随分後になって発売された最新モデルである。
なんと信じられないことに、一番最初に手にした信頼と実績と定評あるナイフのメーカーにソレは存在したのだった。
つまりすぐ近くに求めた存在がいたということである。
なんと恥ずかしきことか。
今回のエッセイ……だからこそ書いている側面がある。
もっと広まって欲しいからこそ、書いている部分がある。
より多くの人にこの一品を知ってもらいたいがゆえに書いているが、それぐらい国内では知名度が低いものだった。
決して悪い物ではないので……むしろ相当な銘品なので……これから綴っていくことにしよう。
ではまず先にBark River E.P.Kについて説明しよう。
E.P.KとはEmergency Preparedness Knifeの略。
バークリバーの新世代モデルとして新たに登場したこのナイフは、略称を見てわかるとおり緊急時での運用を想定している。
日本語で表すと「非常時対策用ナイフ」または「非常時対応用ナイフ」の略。
全長がわずか10cm程度しかなく、外観だけ見るとナイフの形をしたキーホルダーに見えてしまうほど小さい。
10cmとしている理由はダイビング用などの100mm完全防水ケースに入るようにしたからであり、雪山登山や文字通りダイビングのお供としてケースの片隅に突っ込んでおくためのものであるから。
正直言って上記ケースに合わせた影響でグリップが短くなりすぎてきちんと握りこめないほど。
一般的な日本人の手と相違ない筆者が握りこむと指3本分程度までのグリップ全長しかない。
刃渡りは4.7cm。
手のひらに乗せると冗談抜きでおもちゃと言われてからかわれかねないサイズである。
しかしながら、これは側面から見ただけの印象。
ひとたび刃厚を見ると、これが紛れも無いバークリバーのナイフであることがわかるであろう。
その刃厚なんと3.7mm。
そこいらのポケットナイフとは比較にならない分厚さである。
これだけの厚さがないと非常時を乗り切ることは出来ないと言わんばかりの刃厚であり、むしろ分厚すぎて使いにくいと言われるほど。
厚さこそ本家ブラボー1には劣るが、緊急時の最後に頼る相棒として作られたナイフだけあってその構造において一切の手抜きは無い代物だ。
ちなみに本家バークリバーの解説では"ブッシュクラフト可"とされている通り、枝を切るどころか薪割りにすら使えるよう作られている。(そのための刃厚)
ただし扱い的には最後の切り札といったポジションで、日常的に扱っていくにはグリップが短すぎる。
日本国内でもレビューがあるが、決して常用可能なナイフではない。
この辺りは動画配信サイトなどにおけるレビューも見ての通り、あくまでこれはエベレスト登頂や南極観測などで遭難した際、なぜかブラボー1を失ってしまった状況にて一時的に活用するような用途を目的としており……
一応言うとこいつでもちゃんとマンホールはこじ開けられる性能があって、そのことはメーカーもお墨付きを与えているが……あくまで"最終兵器"である。
筆者は実際に実物を取り扱うキャンプを見つけることが出来たのでそのショップで見させてもらったが、筆者の手には馴染まないものだった。
ゆえに購入には至っていない。
ただ、いざと言う時が生じうるようなラッセルとかやってるような人らにとっては、緊急時の頼もしい相棒となるだろうなと感じ取れるだけの質感と重量感であった。
強い信頼感を生むに足るものであると、手に取った瞬間に理解できた。
それなりに国外では緊急時向けのセカンドナイフとしてかなり売れているというが、十分な魅力と理由に対する説得力がある。
それがE.P.Kというナイフである。
そんな素晴らしいナイフと共に登場した真打がPSKである。
筆者が購入に至った存在だ。
ではPSKとは何か。
真打たる存在として最終的に購入にまで至った理由とは何か。
それをこれからご説明しよう。
PSK。
略称はPersonal Survival Knifeを略したもの。
もうこの時点でわかるだろう。
このナイフは立派なバークリバーの新世代型サバイバルナイフなのだ。
名前にある「サバイバル」が全てを現しているといって過言ではない。
刃渡り5.7cm。
全長13.2cm。
ブラボー1と比較すると二周り以上小さいこいつは、スモールナイフの身でありながら「ブラボー1の一部ブレード材質と同等性能」という「超すげぇどすばい」――もとい、νガンダムに対するF91のような立場として登場したもの。
ここで少しだけ一部ブレード材質という部分について解説。
ナイフメーカーというのは基本的に単一の金属素材でもってナイフ作って販売をしているわけではない。
例えばオピネルではカーボンスチールとステンレスモデルの二種出しているわけだが、利用者の利用用途や性格に合わせて、同じ形状、同じ刃厚でも複数の金属のモデルを同時展開している。
ここでいう一部ブレード材質と同等性能とは、標準モデルのA2という炭素鋼を指していると思われるが……実はどれと比較しているのか詳細が書かれてなかったりする。
というのも、ブラボー1シリーズブレード材質が異なるものだけでもは7種類以上がラインナップされており、それらはそれぞれ一長一短があって単純比較が難しく、どこかで勝っていてもどこかで劣るなんてことがあるはず。
全方位にて並んでいそうなのは最も初期のモデルかつ標準的なA2と思われるので、推測ながらここではA2並と書いておこう。
ちなみにブラボー1にもPSKと同じ素材のブレードのものが新たにラインナップされているのだが、刃厚が1.5倍以上なので当然にしてこのモデルと比較した場合は完敗である。
あえて一部と書いているのもそのためであろうと思われる。
とはいえ、実際に使ってみるとわかるがその宣伝文句に偽り無し。
本当にブラボー1並のスモールナイフが新たに登場していたわけだ。
しかしこうなってくるとやはり疑問が生まれる。
なぜこんな「まるで日本での使用を意識したかのような」……「まるで筆者のような人間のために作られたような」――ナイフがこの世に誕生したのか。
これまで主流とされていた3インチを大幅に下回る6cm未満のサバイバルナイフをバークリバーが開発したのか……
気になって調べてみると割とシンプルな理由だった。
メーカーにおける開発秘話を見ると、こいつが生まれた理由は"一部特定国家の銃刀法"に起因するものである。
アウトドア旅行者が現地を旅行中においてトラブルに遭遇することが多発。
その結果、ユーザーに求められる形で誕生したのだった。
こう書くとここまで読んだ人は何かピンと来るものがあったのかもしれない。
「あれ? もしかして他の国でも6cm未満という所があるの?」――と。
筆者が調べてみたところ、多分これ冗談抜きで"日本"を指していると思われる。
かなりがんばって国会図書館まで赴いたりして調べてみたが、世界的に日本と南アフリカを除いて6cm未満としている国はない。(厳密には南アフリカは6cm未満ではないが……後述)
ちなみに欧州で最も厳しい規制がされていると言われるイギリスは7.62cm未満……つまり3インチ未満。
7.63cm以上の携帯は基本一切認めていないこととされるが、6cm未満ほど厳しくは無いと言える。
一般的な殆どのEDCナイフは問題ないことを考えると正直言って日本よりか大分ゆるい。
一方で6cm未満の国名はというと正直アジアだと日本だけだ。
例えばアジアでも銃刀法が厳しいと言われるタイは条件付3インチとし、基本2インチハーフを基準点にしているなど割と近い数値だが、2インチハーフは6.35cm未満で6cm未満ほど厳しくは無い。
それでもアジアでは日本に次ぐ厳しさであり、近年登場しはじめた6.3cm未満ネックナイフなどはこの規制に対応したものと思われる。
ネパールなんかも一部地域別にそういう基準があるらしく、エベレスト登山向けに紹介されているナイフが6.35cm未満であることからも新たな1つの基準として認知されつつあるのだろう。
それで、2インチハーフなら他にもアジア諸国に例があるが……
なんとなくだが私が思う限り、6cm未満の根拠の1つって2インチハーフの6.35cmの35が中途半端でメンドクセーってな感じで四捨五入したんじゃないかと思われる。
キャンピング用ナイフではこの6.35cm未満までOKだと一気に購入できるナイフの種類が増加するわけだが、ルール策定側なんかそんなの知るわけが無いので……私はそうだと勝手に確信している。
ちなみに6.35cm未満の根拠は成人女性の肌から心臓の心室までの距離がそれ以上離れているから。
タイにおいて条件付3インチが許されているパターンでは刃が厚いことが義務付けられたり刺突能力の有無が長さの上限規定を例外的とする根拠となっている。
これを参考にアメリカの一部の州が2インチハーフを携帯基準にしようという動きさえあるほど考え抜かれた数値である。
こういう根拠があれば規制って納得できるんだが、日本じゃ全くもってそういうのがないのが残念だ。
例えば成人日本人女性の肌と心室までの距離が6cmしかないってんならわかるけど、平均身長的に考えて絶対にありえない。
そもそもがタイではより刺突能力の低いナイフは3インチまで認めているので、きちんとした科学的根拠に基づいている。
厳しく規制するなら科学的根拠でもって厳格運用。
これがグローバリズムなんだが……そういうのがない国だということなんだろう。
話をまとめると、恐らく他国でも例があるというのは2インチハーフのこと……つまり6.35cm未満であって日本基準で35mmが海の彼方へと吹き飛んだ数値が6cmの規定根拠。
調べても科学的検証とかそういうの一切ないんで、ほぼ間違いなくそうだろう。
ちなみに2インチハーフもアジアでは少数派の厳しい規制である。
他のアジア諸国へと目を向けると、例えばインドは3.5インチ、中国も3インチと基本的には先進国の3インチをベースにそれ以上を携帯不可としている事が多い。
この3インチの根拠は鎖骨の間に向けて刃物を突き刺さされても心臓に達しない数値だったりするわけだが、ナイフの運用法でもって一番重症を負う刺し方から逆算した、これまたきちんとした根拠に基づいたものである。
もちろん、どの国も目的外使用については軽犯罪法と同様の法律でもって規制してはいるが、その辺りの運用法は日本と同じである。
それで……である。
前々回、筆者は"日本の規制の厳しさは実質1位だが世界では2番目"――と記述した。
日本よりもさらに規制が厳しい国……実は世界中でたった1つだけ存在している。
それが前述した南アフリカだ。
南アフリカ。
まあなんといってもなろう読者なんかが持つイメージとしてはヨハネスブルグだろう。
実際は有名なネタよりも平和だが、それでもベネズエラ国内の主要都市に次ぐ危険な都市といわれる。
そんな都市を持つ国では、全長約10cm(11cmを越えないもの)以上を携帯してはならないとしている。
これが世界で最も厳しい基準だ。
刃の長さではなくナイフの全長でもってナイフの規制をしているが、グリップの長さはやはり5割以上長くないと扱うにあたって非常に厳しいので刃の長さは実質5cm未満である。
おっとまるでそれに対応していたようなナイフを先ほど紹介していたような……まあアレがやたらグリップが短すぎる要因も恐らくこういうアフリカ諸国の規制が影響していることは明白。
10cmに留める必要性があったのですかというユーザーの問いにメーカーは"絶対にそうしなければならなかった"――と回答しているが、E.P.Kは間違いなくこの規制も考慮しての全長だろう。
つまりバークリバーが送り出した新世代のナイフ二種は、今の時代において厳しいガラパゴスすぎる二大基準を乗り切るためのナイフでもあったということだろう。
開発秘話の言葉の節々にそれを感じられる。
といっても、10cmの方の国ってぶっちゃけ建前上でしかないと思うんですけどね。
守ってる奴とか絶対にいないだろ冗談抜きで。
そんな国ともう1つのガラパゴス国家のために新世代シリーズをあつらえてくれたメーカーには感謝しかない。
実際、バークリバー内部ではこういうスモールナイフを作る事に関して最後まで議論が交わされたというし、割と作りたくなかったっぽいような話も出ている。
それでもPSKを創り出したのは……近年において一連の地域ではアウトドアも含めた海外旅行者の需要喚起が大々的に行われている反面、そういう所に愛用のナイフを持ち込んで没収されたりしてしまう事例が多発化したことへの対応と書いてある。
ああ、そういえばインバウンドがどうとかいって大々的に需要喚起に励む国があったな。
あっちでもそんなに問題になっていたのか。
で、知らずのうち入国してしまい、入国の際に没収されてしまう例も多々あることがユーザーにとって問題視されていたことが全ての出発点となっているそう。
本来ならサバイバルナイフは刃渡り8cm程度が理想と考えるバークリバー。
ハマグリ刃は刃こぼれを防ぐために引く動作によって均一に刃を用いるので長持ちするわけだが、その長さとして適切なのは6cm未満ではないと認識するバークリバー。
そのメーカーが国外(主に侍の国)を旅するキャンパーやハイカー、登山家などために作ったのがこのPSKなのである。
そんなもん買う以外の選択肢ないじゃんか。
国外を旅しない現地人キャンパーにも向けて作られたようなものだ。
刃渡り5.7cmは一国を除いてほぼ全ての国において銃刀法を回避できる長さ。
それでいてこのナイフはブラボー1の標準的シリーズに一切劣ることがない性能を手に入れるため、Elmaxと呼ばれる新世代型のステンレス鋼を採用。
俗に言うに言うスーパーステンレスと呼ばれる最近のナイフ界で注目を浴びる新素材を用いていた。
ELMAX。
元々はプラスチック成型用金型素材として、対腐食性も加味した金属として開発されたもの。
日本ではプラモデルの成型金型として実際に使われているものだ。
その精製方法はやや特殊。
粉末冶金と呼ばれ、粉の状態で型に詰め込まれて成型しつつ焼成して作り上げる。
出来上がったナイフはその状態から研いで刃を形成したものということである。
このElmax、非常に硬度の高い素材ながら対磨耗性に優れた素材でもあり、とにかく"切れ味が長持ち"する特徴がある一方で、ステンレスなので極めて錆びにくいという使い勝手の良さを併せ持つ素材。
現時点ではナイフ用ステンレス系合金では最高峰の一角とされている素材である。
ナイフ業界においては別口のジャンルで用いられる合金が流用されることが多々あるが、ことElmaxのような金型向けの素材が転用される例は比較的珍しい。
一時期アメリカ製ナイフの主流であった154CMはジェットエンジンのタービンブレードなどに用いられていたものを流用したものだが、割と他でも似たような運用がされている鋼材を転用する例が多いのだ。
だが採用されたナイフが大きく評価されるにつれ、最近はブレード材質に採用される例は増えてきた。
それだけすごい素材を刃渡り6cm未満のスモールナイフにあえて採用しているのである。
全てが完璧である素材などこの世にないので弱点こそあるが、この素材を採用したことでPSKは刃幅3.5mmmながらブラボー1と同じ使い方をしても全く問題が無いナイフとなっていたのだった。
国外のレビューを見てみるとPSKがどれだけ評価されているかがわかる。
曰く「1週間こいつだけで過ごしたけど最後まで切れ味を失うことは無かったぜ!」――だとか。
曰く「俺は軍人だけどブラボー1はデカすぎてバトルナイフと間違えて使ってしまいピンチに陥ることも多かったが、こちらは完全にサバイバルナイフと割り切って使えるスモールナイフなので非常に重宝している」――だとか。
とある動画サイトの海外の有名ナイフコレクターからは「もはやキャンプはこれ1本で十分。予備などいらん」と言われるほど。
こういう評価ではわからないと思われるので具体的な指標となりうる例を1つ出すと、このナイフは鹿三頭を完全に解体しても4頭目を普通に解体していけるぐらい切れ味が保つといわれる。
元々Elmaxで出来たナイフは狩猟で生計を立てる人達からも鹿五頭は余裕と言われ、従来までは大量の解体用ブッチャーナイフを持ち歩かねばならなかった所、2本程度で済むようになったと言われるぐらい恐ろしい素材なのだが……
そいつを採用したことで、その名に恥じぬサバイバルナイフとしての能力を得ていたのだった。
なんたってあのバークリバーが刃渡り6cm未満のナイフに「サバイバル」と名づけているほどだ。
その性能は本当の意味でサバイバルナイフとしての究極点に達していると言って過言ではない。
発売以降、かなりの人気モデルとして話題になっているナイフだが……最終的に国外レビューやらなにやらを見た上でさらに実機にも触れた筆者は即買いしたのだった。
というか開発基点が日本を意識したナイフなんだから、買わない理由などなかった。
その上で使ってみたところ、まこと評判どおりであった。
6cm未満で固定式でマンホールこじ空けが可能でサバイバルナイフとしての性能を満たす存在。
この世にそんなものが存在したのである。
以降は予備を買い増しした上で2本体制で愛用しているが、使っていることでデメリットも判明してきたので最後にいくつか説明しておきたい。
このナイフ、確かに非常に優れているし切れ味の持続力も半端じゃない。
ゲームでいうならモンハンの一部武器において緑ゲージがめっちゃ長い武器があったりするが、アレと同じ。
正直言えば、特性からいって剥ぎ取りナイフに近いので剥ぎ取りナイフそのものと言ってもいいぐらい。
あれは劇中切れ味が落ちることはないが、ゲーム中程度の利用なら本当に切れ味は落ちないぐらいの超弩級の耐久性である。
もともとの切れ味は最低限しか保障されておらず、正直言って切れ味はブラボー1より劣るのだが
……野菜などを切るには必要十分であり、バトニングも普通に可能な頑丈さも併せ持つ。
こいつもE.P.Kと同じくブッシュクラフト可なので当然ではあるのだが。
しかしである。
これはElmax共通の弱点であるのだろう。
業界用語にて「マイクロチップ」と呼ばれる、非常に微細な刃こぼれを起こす。
特にバトニングやらなにやら、従来のブラボー1的な使い方をすると酷い。
実際にはバトニングに支障が出るほどの刃こぼれはしないのだが、
バトニングを行った後に野菜などを切ろうとすると刃こぼれによって明確に刃が引っかかるのがとても気になる。
そしてさらに重要なのは対磨耗性が高すぎる影響で、その状態となった際に研いで刃を慣らすための労力が尋常でないほどかかる。
冗談抜きで砥石で半日ぐらい研がないと元に戻らない。
モンハンで言えば砥石を30個も40個も消費して時間切れになってしまっても完全に戻らないみたいな……そんな感じだ。
尋常でなく切れ味が持続するというのは、研いで刃を取り戻すのも非常に難しいという表裏一体の弱点ともなっていたのだった。
だがバトニングみたいな荒い日常使いさえしなければ、1週間に1回のキャンプだと半年に1度研ぐ必要性があるかどうかなんてレベルの持続力。
正直言って巻き割りなんて現地で鉈を借りる手もあるんで、これまでは己の所有するナイフになぜか拘りをもっていたりしたが、そういう手立てが無かった場合にのみ巻き割りをナイフで行うようにすることでどうにかできる程度なので気になるほどではない。
ただ、この点においてはキャンプスタイルや登山スタイルによっては非常に気になる性質かもしれないので記しておく。
それを差し置いてもプラス方面の恩恵を大きく受けることになるだろう。
国外でもバークリバー新世代の銘品として紹介されるだけはある。
ちなみに2019年モデルとしてPSK EDCというものが追加されたのだが、こちらは3インチ未満を目標に作られた一回り大きなモデル。
刃渡り7cmジャストなので購入には注意されたし。
本家PSKは「PSK Elmax」とかで検索して出てくるタイプである。
全長132mmのタイプを購入されたし。
さらに購入時の注意点を1つ。
PSKは刃幅2.2mmモデルと3.4mmの2種類が存在。
2.2mmモデルはブッシュクラフトなどに積極的に使える刃厚ではないので気をつけて。
――ところでこのPSK EDCだが、実はElmaxの耐久性がメーカーの想定以上に高かったからなのか、刃厚が3.1mmにダウンしていたりもする。
用途が用途なので刃厚を必要以上に確保したと言われるPSKだが、3.4mmと言えど伊達ではないのだ。
従来製品に匹敵するという評価は完全に誇大広告ではない真実。
これまでのブラボー1と同じ使い方が出来ると性能を満たしつつ5.7cmの刃渡りであるというのは非常に大きいな利点。
もし刃渡り6cm未満で固定式かつフルタング構造なナイフを求めつつ、ファルクニーベンF1やバークリバーのブラボー1と同等のナイフを求める人間がいるとするなら……
選ぶべき選択肢はこれしかないだろう。
そして、今後恐らくキャンプ物の作品を描くにあたっては、PSKを扱うキャラが出てくることになるんだろうなあ……
今の日本の情勢ではF1やブラボー1は完全にオススメできない。
筆者が推奨するのはPSK、それとE.P.Kだ。
キャンプ道具を考えている人。
初めての一振りにどうでしょう?