思い返せば
面接の時の追憶です。
「失礼します」
部屋に入ると”二対”と表現するのに相応しい二人に迎えられた。
座ってはいるが頭身から背丈が玉枝の半分もないことが見て取れる。
(ここは面接会場だぞ?子供、、じゃあないよな)
腰まで届く黄金色の髪に切れ長の緑玉の瞳。
ドッペルゲンガーかと見紛うほど彼らは似ていた。
声質が正反対であることを除けば。
「「失礼の意味がわからない」」
「えっ・・・と、これは、面接時の常套句みたいなもので」
この遣り取りも試験の一環なのだろうか。
「そういうことかー」
「前の人たちには悪いことしちゃったねぇ」
向かい合って頷くと<なんだか合わせ鏡を見ているみたいだ>二人は玉枝の方を向いた。
左右対称に肩肘をついて「ニンマリ」と、不穏な擬音が跳びそうなくらいに目を細める。
「「私たちが面接官です。よろしく」」
高音と低音の調和がいやに大きく部屋に響いた。
なんて型破りな会社だ、ここはヤバイ。
受かっても絶対に受理したくない。
玉枝は手当たり次第に申し込んでしまったことを後悔したのであった。
「やっと終わったわね。あとは真希子様にお聞きするだけ」
「うまくできたかな。教えてくれたジヨゥには悪いけど、メンセツってやっぱりよくわからなかったよ」
「適当で良いのよこんなモノ。ここで出会うというのがミソなんだから」
聞かれた内容は一般的だったなと思いながら一礼し部屋を出た玉枝の耳に、閉じた扉越しの不穏な会話が聞こえたが。
もう自分には関係ないと玉枝は振り返らずにその場を去ったのだった。
こんな大事なことをなんで忘れていたのだろう。
採用通知をもらった、ということに浮かれて。
舞い上がって迂闊な行動をした己を詰ってやりたい。
過去に戻れるのならば。