006美味しい幸せ
「凄いよ! リン!」
「うん。ありがとう」
クラス分けの後、今日は解散となった。
門には、私を待ち浴びたリュデロさんが……。
もう、仕事どうしてるのかしら?
「お迎えありがとう。お仕事は?」
「うん? 今日は片づけだけだから……」
昨日は、片づけをして私と出掛けようとしなかったのに。
「ねえ、リン。何か思い出したりした?」
「え?」
「いやだって、あの魔法陣……」
「えっと。思い出してはいないけど、出来ちゃった」
「そうなんだ……」
そっか。リュデロさんも学校卒業しているんだもんね。
あの試験、受けたんだもんね。
その時と違う魔法陣だったって事か。
たぶん、略式だと思う。
私は、ビアンカと同じだけ凄い魔法を使える素質があったんだ……。
「「ただいま~」」
「おかえり!」
私達が声を揃えて言うと、とても嬉しそうにキュードルさんが出迎えた。
「いやぁ。特進クラスになったんだって?」
キュードルさんの言葉で、私は隣にいるリュデロさんに振り向いた。
この人、一旦家に帰って伝えてから迎えに来たの?
「今日は、お祝いだな!」
今日も二人が腕を振るった料理を食べられそうです。
・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*
「「「かんぱーい」」」
私達は、カーンとグラスを合わせる。
二人はお酒、私はジュース。
テーブルの上には、おいしそうな料理がずらり。
お祝いの晩餐の始まりです!
そう言えばビアンカは、寮に住んでいるから一人寂しくご飯を食べるんだよね。そうだ。今度呼んでみようかな。
特進で二人っきりの庶民だし!
「三種類の魔法全て使えたんだってな」
「……え? あ、うん」
「もし、記憶を思い出したら言えよ。知り合いを探すのを手伝ってやる」
「うん……ありがとうございます」
キュードルさんが言うもリュデロさんは俯いている。
思い出してほしくないみたいね。
ないとは思うけど、私に婚約者が先にいたら解消しないといけないもんね。
私は、この世界では一体何者なんだろう?
ヒロインより目立っちゃダメでしょう!
明日からは大人しくしていなきゃ。
「ごちそうさま。おなかいっぱい」
「おなかいっぱいか?」
皿を下げる私に、ニヤッとしてキュードルさんは言う。
テーブルの上を見ると、何やら置いてある。甘い香りも漂っている!
こ、これはもしや!
「ケーキ!?」
「そう! 今日のメインだ!」
「きゃー!!!!」
この悲鳴は、感激の声です!
こっちの世界にもケーキは存在しているんだけどクリームが高いらしく、それこそ貴族とかしか食べられない逸品。
庶民は、マフィンで我慢なのです。
「いただきます! あぁ~! 美味しい! まさか、食べれる時が来るなんて!」
「リンが特待生になってくれたからな。学費全額免除になった!」
「え! そうなの?」
そうだとキュードルさんは頷く。
よかったぁ。これで肩の荷が降りたわ!
この世界でもポピュラーなショートケーキ。イチゴは乗ってないけどね。
「幸せ」
私がそう言うと、二人はほほ笑んだ。