001ここ見覚えあります!
「わぁ。これが王都!」
馬車から眺める景色は、大きな建物がいっぱいだった。
歩く人達も今までいた所とは違って、上流階級とわかる服装。
「リン。今日からここで、商いをする!」
「うん!」
私は、リン。って名前しか覚えていない。
一年前、目の前に座るがっしりとしたおじさん、もといダン・キュードルさんに拾われた。
記憶がなく何一つ身元がわかるものを持っていなかった私を家族の一員にしてくれてた。
私は、橙色の髪に瞳。キュードルさんは、紺の髪に瞳。見た目からして全然違うのにね。
キュードルさんには、奥さんは病気で亡くなったらしいけど一人息子がいる。キュードルさんの横に座るリュデロさん。
彼は、見た目もっさりしているけど、ビシッとした格好はカッコいい!! 一度だけ見たことがある。
髪と瞳は、キュードルさんより明るく緑っぽいエメラルドグリーン。
普段は、商品の研究や修理など工房で作業をしている。この世界では錬金術師と言う! いい! 錬金術師! いい響き!
本当いうと、この世界の記憶はないけど、何故か前世の記憶がある。日本で女子高校生をしていた。
そして、この風景を見て思い出した! と言っても記憶をではなくて、前世でこの王都と同じ風景のゲームがあって、私がやりこんでいた事を!
あぁ、確かめたい! もしそうならこれって転生って事よね!
「よっぽどこの街が気に入ったようだな。着いたら二人で街を見て回るといい」
「え? いいの?」
「僕も?」
「ここは、今までいた田舎と違う。変な輩に絡まれるかもしれない」
「でも僕、武術も剣術も出来ないけど? だからリンの方が……」
「お前は! いいから行って来い!」
「はい……」
「あ、嫌なら、私……」
「嫌じゃないから! むしろ嬉しい……いや、なんでも……」
「じゃ、宜しくね!」
リュデロさんは、こくんと頷く。
彼、こんな感じだけど18歳です。ちょっと頼りないけど、信頼できるんだ。
この世界は、さっきも会話に出てきたように、魔法がある世界。
キュードルさんが、私の魔法適性を見てくれた。と言ってもそういう施設で、お金を払って確認してくれた!
それで、私には魔力があるってわかったのです!
けど、魔法の使い方がわからないから一度も魔法を使った事がないんだよね。
暫くして目的地に到着。
街の中心街ではないけれど、ある程度活気ある通り。遠くになんと学園が見える!
きっと徒歩10分程の距離。
やっぱり見覚えがある。
三角すいの屋根があって、レンガの塀でくるっと囲まれていて。敷地内が凄く広くて、ちょっとした緑もある。
ゲームでは、高等部と中等部の棟があったはず。
「そこはね、国立の魔法学園で、マール魔法学園って言うんだ」
私がずっと見ていたからかキュードルさんが教えてくれた!
な、名前は一緒! これは、期待できるかも!
「ほらリュデロ何をしている。そんなの後でいいから行って来い」
「あ、うん……」
リュデロさんは、荷解きをしていた。
ここは、キュードルさんの夢が詰まった場所。ずっと聞かされていた。王都で店を開くんだって。
そして、ゆくゆくは息子のリュデロ夫婦に店を任せ、孫の相手をしながら王都暮らしを堪能するそうです。
まあ、後半はかなり後になりそうだけどね。
その頃までは、自分で稼げるようになって自立して、恩返しをしないとね。
「行って来ます」
「気を付けてな」
キュードルさんに見送られ、私達はまずマール魔法学園へ向かった。
・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*・‥…─*
「間違いないわ!」
「え? 何が?」
私の台詞にリュデロさんが、質問をする。
そして、私が見つめる先に何があるのだろうとジッと見つめていた。
マール魔法学院の門。
この国のマールル王国の紋章入り! 前世のゲームと全く同じだなんて!
うーん。私って物語には出てこない人物だよね?
学園に通わないし。
ゲームでは、初等部が12歳から14歳、中等部が15,16歳、高等部が17,18歳が通う学校で、初等部から行くのはお金持ちの貴族や王族関係の人達。
一般人が通うのは、中等部のみ。中等部を卒業すれば、魔法を使う資格を得られる。という、設定だったなぁ。
ここではどうなんだろう? やっぱり同じかな?
「帰ろうか」
日も暮れて来て、私がただボーっと門を見ているだけだったからか、リュデロさんが言った。
それに頷き二人並んで歩き出す。
チラッと見ると、顔が真っ赤です! 何故!?
「似合うと思う……」
よくわからないけど、リュデロさんがボソッと呟いた。
そんな事より、色々思い出して比較してみなくては!
この一年、この世界の生活に慣れる為に必死で、楽しみを見出す事ができなかったけど楽しみを見つけた!
まあ、前世の記憶があったせいで、逆に慣れるのが大変だったんだけどね。
明日から楽しみ! ちょっと仕事休みに見て回ろうっと!
でもまさか、もっと嬉しい驚きの展開が待っているとは、この時の私は思ってもみなかった――。
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