2. アホの子、健気な子、ジャッキーとメール
「ふおおおお、ねえ、ねえ、タクちゃん、今の見た!!」
興奮した顔でモニターを指差す幼馴染のリコ。
半裸の男が、銃や青龍刀で武装した男たちをその肉体のみでなぎ倒していく様子が映っていた。
「さすが、ジャッキーだね!」
今日はリコが持ってきたDVDの映画を、部屋のパソコンで再生して上映していた。
そして、そのチョイスはといえば、こいつの好みに偏ったものでアクションものが多い。
その中でも、ジャッキー・チェンが大のお気に入りである。
DVDの再生が終わり、リコがトイレに行ったすきにスマホを操作してメールを送る。
送り先はリコのスマホ。
送信タイトルは『ジャッキーより』
部屋に帰ってきたリコがスマホに着信があることに気づき、メールを開ける。
途端に驚いた顔をした後、実にうれしそうな顔をした。
「タクちゃん! すごいよ。ジャッキーからメールがきた。いつも応援してくれてありがとうだってよ!」
まったく愚かなヤツだ。
しかし、素直に喜んでいるところに水を差すのも野暮というものであるので、そうかそうかとにこにこ笑い返しておいた。
「ジャッキーって日本語うまいんだね! 知らなかったよ」
「そりゃあ、世界的俳優だからな。日本語ぐらいぺらぺらだろ」
「じゃあ吹き替えのときの日本語も、もしかして……」
「ジャッキーだよ」
「すごい!」
リコの中でさらにジャッキーの神格化が進んでいく。
「どうしよ、ジャッキーに会ったときのために中国語の勉強がんばってたけど、日本語しゃべれるみたいだし、もういいかな」
「まてまて、中国にいったとき話せたほうが色々と便利だろ」
「うーん、そうだね。じゃあ、英語のほうはタクちゃんにまかせるね。タクちゃんって英語の成績よかったでしょ」
いつのまにか、一緒に行くことが確定しているらしい。まあいっか。