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貴方に黒い花束を  作者: 雪逸 花紅羅
その灯が消えるまで
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貴方に黒い花束を

今回のサブタイトルは「貴方に黒い花束を」

はい・・・タイトル回収してみました!

といっても、これからが本番です。

ご覧ください!どうぞ!!

「お嬢様!?」


眼に映る、その美しい筈の姿は

一瞬にして手の届かぬものとなってしまった。

大切な我が主。

大切な私の理想・・・お嬢様は私の全てだったのに。


何故あの時、私は命を懸けなかった?

私が止めていれば、このような事態には・・・。

思考回路は巡り巡って一つの答えを導き出す。


嗚呼そうか・・・お嬢様を生き返らせれば良いのだ――

そうして再び罪を重ねる。

自らの光と引き換えに。神の愛を逆手に取って。


「どうしたのかな?

取引は終わったんだ。もう帰っても良いんだよ?」


私の黒い髪を片手に満足そうに微笑むアンリ。

アンリはまだ気付いていない。

私が神に嫌われていることを。


「私の用件は終わっておりません。アンリ殿」


「何かな?」


悪気もなく、こちらを見るアンリ。

その瞳には一切の曇りがない。

天使オファニムに愛された一族。

その通りだ・・・

アンリは紛れもなく純粋であり罪など知らぬ青年であった。


「貴方の命を以て、罪を償って頂きます」


「出来るかな?」


アンリは余裕の表情だ。

アンリの言葉に反応し、近くにいた騎士達が一斉に剣を抜く。

しかし、私は結末を知っていた。アンリは敗れる。

アンリは人殺しという軽犯罪を犯したのだから。


「倒せ――」


その一言で騎士達が素早く駆け寄ってくる。

嗚呼、何という事だろうか。これでは色々と面倒だ。

神々しく輝く銀の鎧には細かく繊細な模様が描かれている。

銀がふんだんに使われているので、私には触れることが出来ない。

神の祝福を享けた銀の剣は私にとって何よりも不都合だった。


「覚悟せよ!ケルビムの執事」


私、目掛けて銀の剣が振り下ろされる。

これは・・・危機と言うのだろうか。

私はその攻撃を容易く避けて、アンリの許へと駆ける。

アンリは鎧を着ていない。騎士の剣も届きはしない。今が好機!


「散れ!アンリ」


アンリ目掛けて手刀を振り下ろす。

只の手刀か?

いいや、これは神の寵愛によって授けられた技の一つだ。

一撃で人間ならば軽く切断することが出来る。

勿論、鎧なども切断することは出来るが・・・。


「・・・・!!」


声など出せる筈がない。

その前に私が奴の首を刎ねたのだから。

立ちすくむ騎士達に私は告げた。


「私に従ってもらおう。無論、報酬は命だ」


大半の騎士は頭を垂れた。しかし僅かに神を慕う者も居た。

さて、どうするべきか・・・・。

私は神を慕う騎士を尽く粛清した。

これで、お嬢様を生き返らせることも出来るだろう。


「白い花を用意しろ。花で在れば何でも良い」


「かしこまりました!」


ガシャ! ガシャ! ガシャ!


数人の騎士が音を立てて走り去って行く。


「残った者は周囲を見張れ。口外すれば命は無い」


脅しをかけて従わせる。悪いとは思うが私も本気だ。

お嬢様の為なのだから。


「お待たせ致しました。白いバ・・・」


「良いから速く寄越せ。お前達も外を見張れ、口外はするな」


半ば奪い取るようになってしまったが許してほしい。

速くしなければ血が固まってしまう。

そうなれば全てが水の泡になるのだから。


「失礼します」


騎士は全員、見張りをしている。これだけ居れば安心だろう。

人間を生き返らせる。それは元々、天使の務めだった。

材料と魔力さえあれば誰にでも出来ることなのだが・・・。

第一に、身代わりとなる清らかな物を用意する。

今回の場合は先程、摘みに行かせた白いバラになる。


第二に、身代わりとなる者の血を付ける。

本来、天使が行う場合は自らの血を用いる・・・

生憎、私は天使のように不死ではない。

よって私の血は使えない。

そこで、アンリ達に犠牲になってもらう訳だ。

白いバラに滴っている血を付ける。

これぞ、正しく真紅のバラだ。間違いない。


第三に翼の一部を捧げる。

この場合は身代わりとなる物に翼の一部を紛れ込ませれば良い。

・・・・翼か

こんな穢れた翼でも大丈夫なのだろうか?

漆黒に染まった己の翼を眺めながら思う。

人間にはこの翼が見えなかった。

不幸中の幸いとはこのことだ。

私も元は天使だった。今となっては随分昔の話だが。

時間が経ち過ぎたせいかバラが黒く変色している。

・・・腐っても翼だ。使えない事はないだろう。

そう思い直し私は黒い翼を少し毟った。


これで手順は全て終えた。

後は生き返らせる人物に出来上がった物を捧げるだけ。

完成した物を、よく見てみる。


――それは黒い花束。

血と翼で出来上がった黒いバラの花束だ。

材料を聞くと恐ろしい物ではあるが、見た目こそ美しい花束だ。

(ちなみにリボンは私の髪を束ねていた物を使った)


「ラディアお嬢様。貴方に黒い花束を捧げます。

どうか今一度、私の傍へ御出でください」


祈るように花束を置いた。

何の前触れもなく奇跡は起きるものだ。

黒い花束が突風によって無残に散る。

あの突風は・・・いや、まさか。


数秒後、お嬢様は蘇った。

舞い散る黒い花弁を月明かりが妖しく照らす。

美しい光景を目の前に、お嬢様が目を開けた。

安心した。痛々しい傷跡は見る影も無い。


「おはよう、ガレット」


その声に違和感を覚えたが気のせいに違いない。

私も駄目だ。お嬢様が居なければ心配で心配で。

生き返ったお嬢様に、私は返事をした。


「おはようございます、お嬢様!」


優しく微笑む貴方は、まるで神のようだった。





何やら不気味な終わり方ですね。

物語も十分、不気味ですけどね!本当に。

裏があるに違いない・・・と思った方は鋭いです!

それは次回のお楽しみとして、楽しんで頂けましたか?

ガレッドが堕天使だったのです。

え?ご存じだったのですか?

それは、作者として悔しいです。俺もまだまだですね。

頑張りますので機会があれば次回も、お願いします!



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