復讐者の傍らで
ショコラ視点です。
ここから3章目に突入します。
今後とも宜しく願い致します!
あれから街で適当に何個かリンゴとスモモを奪うと黒猫達の許へと急いだ。
雨は止まず、血で汚れた俺を洗い流してくれた。これは神の祝福か?
神は名ばかりで意外に気弱な奴だった。
なんでも俺に相談してくるし、世話の焼ける奴ではあった。
それでも悲しい奴だと感じた。虚しさで溢れている者だと。
全てが神の子供だとすれば、誰かが一人でも死んだら・・・。
その悲しみは計り知れない。それを幾度、繰り返している?
俺ならば大切なものを救うことが叶わなかった己を許すことが出来ない。
きっと神も同じ気持ちを抱いているに違いない。
その全ては観測者で在れと定められ、その心とは余りにも掛け離れた生活。
耐えることも抗うことさえも昔に忘れ、只ひたすらに今を生きている。
だとすれば言葉に表せない程、苦しいだろう。
永遠の時を約束された神は運命から逃れることは叶わない。
それは何と悲しいことだろう。
己の為ではなく他者の為に生きる。それは、最も深い愛情故なのか?
そんなことを考えながら道を急いでいると肩に何かが当たった。
否、ぶつかったというべきか。その男に見覚えがあった。
黒い翼を持つ希少な青年に俺は既にあっていたのだ。
「申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
相変わらずの丁寧な口調。全く心配していない、その表情。
何も変わっていない。その眼は俺を冷たく見降ろしているだけだ。
「大丈夫だ。さっさと行け」
その眼を頭から振り払うように言葉を放った。
ラディアに会うのにガレッドは邪魔だ。都合が悪い。
堕天使であることなど初めて見た時から察していた。
その黒い翼を見れば十分、理解することが出来る。
嫌でも、その存在を認識しなければならなくなる。
それは・・・俺のトラウマでもあるのだから。
「そうですか。ところでショコラ、お嬢様の許へ向かうのですか?」
「何!?」
何故、分かった?俺がショコラであるという真実を。
堕天使の力か?匂いか?それとも俺の反応が悪かったのか?
驚いている俺とは裏腹にガレッドは冷静に言葉を放った。
「お嬢様は貴方を捨てたのです。だとすれば貴方は私の護るべきものではない」
冷たい響きを含んだガレッドの言葉は痛く胸に突き刺さった。
その身体を貫くような無関心な瞳の前に動けなくなる。
言葉さえ使うことが許されないような雰囲気。
それは明らかに殺気とは違う、何か別の感情。
それでも勇気を振りかざし、俺は何とか言葉を発する。
俺の大切な人に会う為に、恩人であるラディアに会う為に。
「黙れ!俺は・・・主の役に立つ。何も出来ない頃とは違う」
「成る程。貴方は自分が役に立つと思っているのですね」
「そうだ。もう、お前に世話を掛けることもない」
言いたいことを言えた。それは簡単であり一番難しいこと。
時には命さえ懸けて言わなければならないことがある。
俺にとって、その時は正に今だったのだ。
「そうですか。もう私に迷惑を掛けないと誓うのですね?」
冷ややかな笑みを浮かべ俺に問いかける。誓いを立てるのか?と。
「当然だ。誰が好き好んで嫌な奴に世話を任す」
確固たる意志でガレッドを睨みつける。
それはガレッドの視線を変えるには有効的な答えだった。
「分かりました。私から、お嬢様に新しい執事として伝えましょう」
片手を差し出すガレッドに俺は驚きを隠せない。まさか?あの男が?
「どうしたのです?有効の証ですよ。握手と言うのです。さぁ手を握って」
戸惑いながらも言われた通りに片手を握る。これで良いのだろうか?
「良いのか?これで・・・」
「はい。これから貴方は私の配下となり、お嬢様の護衛に専念することになります」
向けられた笑みは本物で、向けられた視線は優しいもの。
差し出されて固く握られた片手は信頼を物語っていた。
敵ではなかったのか?この男は信頼に足るものか?
その内に確かめれば良い。いつしか、そう思うようになった。
「宜しくお願いしますね、ショコラさん。戦力は少しでも確保しておきたい」
「嗚呼、宜しく頼む」
やはりガレッドは、この男は信用出来ない。最後の一言で俺はそう判断した。
申し訳ありません。時間が無いので今回は短めです。
また時間に余裕が出来次第、書きますので少々お待ちください。
ありがとうございました!!




