歩き出し
僕、村上奏太が目を開けるとそこは知らない場所だった
「ここはどこだ?」
無意識に呟いた
漫画やアニメなどでよくある異世界…とは違う
見渡す限り夕焼け色
ところどころ黒い板が直立している
遠くに橋らしきものも確認できる
「ここはどこ?」
改めて声を発す
昨日は普通の一日だったはずだ
学校に行って帰って……そこからよく思い出せない
もっと深く記憶をたどる
最後に見た風景は……たしか夕焼け
そう、ここと同じくらいの色
空が一面不気味なくらいに色づいて目を覆ってしまったのだった
どうしよう
家に帰りたい
ものすごく家に帰りたい
しかし思案するくらいでは家に帰れないだろう
とりあえず行動しなきゃ
先ほど見つけた橋に歩みを進める
乱立した黒い板のおかげで歩いているという実感が持てる
しかし何もない
黒い板と遥か前方の赤い橋
それ以外は何もない
果てしなくつづく地平線
嫌になる
せめて石の一つ、草の一筋、砂の一粒でも落ちていれば気は楽だろう2
凹凸も無く埃の一つも落ちていない気味悪い地面
まだ遠い橋
なんで僕がこんな仕打ちを受けなければならんのだ
僕はいたってどこにでもいる普通の高校生だぞ!
成績も真ん中、運動も人並み、ルックスも月並み
僕じゃなくて他の人がいるだろう!
大体こういう空間に迷い込むのはもっと悪い奴だろう
殺人鬼やペテン師、不良の方がいいだろう
僕に何を反省させたいんだよ
この前自販機の下に落ちてた100円ネコババしたことか?
それともゴミ箱に投げて入らなかったティッシュをそのままにしたことか?
橋には確実に近づきつつはある
疲れた
一回休もう
黒い板にもたれかかる様にしてしゃがみこんだ
この板、どうやって立っているのか謎だ
近づきつつある橋の上で人影がゆらめいた