第2話 シュンがゲーマーだった件
じいちゃんからゲームを買いに行くよう頼まれた翌日、同じ課の新人のシュンを昼食に誘うことにした。
たしかこいつは趣味がゲームだったはずだ。穴場の店とか詳しいかもしれない。ちょっと聞くのは恥ずかしいけど。
「めずらしいですね。新城さんから昼食に誘ってくるなんて」
「そうか?」
「はい。最近は僕から誘うばかりでしたよ」
それはそうだろう。シュンはムードメーカーで同僚からお誘いの声が掛かる事が多い。こちらから誘うのは競争率が高いのだ。おまけにベビーフェイスの童顔イケメンで、社内のお姉様方からも人気がある。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「なんですか? なんだかこわいなー」
キラキラな笑顔で答えるシュンがまぶしい。
「来週の金曜日に【Kingdom Fantasia】ってゲームが発売になるんだけど、人気があって入手しづらいらしいんだ。穴場の店とか知らないか?」
キラキラな笑顔なまま固まるシュン。なんか知ってそう?
「えっ? なんで知ってるんですか? そういうのに興味ないと思ってました。まさか新城さんもゲーマーだったなんて、びっくりです!」
興味なかったよ。昨日の騒動がなければ気づきもしなかったよ。びっくりなのは俺のほうだよ。ゲーマーとかどうみてもお前のイメージじゃないのだけど。
「いや、俺はゲーマーじゃないよ」
「発売日が正式発表されたのは昨日ですよ。ゲーマーでなければ今日知っているわけはないじゃないですか。一般で扱われるニュースでもないですしね。新城さん、正直になりましょうよ。僕もゲーマーですから恥ずかしくはないですよ!」
力説されてしまった。ここまで熱くなるシュンは初めて見た。
「ゲーマーなのは、うちのじいさんなんだ。昨日その話しを聞かされてな。並んで買ってきてほしいと頼まれた」
「おじいさんがゲーマーなんですか?」
「ああ。小学生の頃からずっとらしい。毎日飽きもせず遊んでいるよ。元気なもんだ。じいちゃんがゲーマーとか信じられないかもしれないけどさ」
「今どき高齢者のゲーマーは普通ですよ。子供の頃からコンピュータゲームがあった世代ですし。VRゲームを定年後の趣味として楽しむ人が増えているそうです。VRの世界だと体も若い頃のように動くのが良いんだとか」
「そうなのか。? 今どきの高齢者ってVRゲームで遊ぶのが普通なのか。最近の高齢者は進んでるな。話を戻すけどさ。おすすめの店とか知らない?」
「今からだと当日販売分がある店で並ばないと買えないでしょうね。おじいさんに購入を頼まれたんですよね。僕も買いに行く予定ですから一緒に買いに行きませんか?」
おお、願ってもない言葉だ。ここはありがたく乗っておこう。
「こういうことに慣れてないので一緒に行ってくれると助かるよ。しかしこれ、本当に並ばないと手に入らないものなのか?」
「普通のゲームだとネットで買ってダウンロードすればいいだけですけどね。でも今回は前人気の高いVRMMOですから初回販売数が制限されているんです。ネット事前予約はベータテスターのみしか受け付けていませんし、ベータテストに外れた人はネットの抽選販売に賭けるか、確実に手に入れたいなら店に並ぶしかないんです」
「へぇーそうなんだ。ところでVRMMOって何?」
「んーと、簡単に説明すると今までのVRゲームって一人から数人までしか一つのVR世界を共有することが出来なかったじゃないですか。VRMMOはもっと大人数、数千数万の人達とおなじVR世界を共有するんです」
「つまりVR上で社会生活を楽しむゲームってことか?」
「はい。だいたいそんな感じであってます。ただ今回はファンタジーの世界で実現するってところで前人気が高いですよ。現実に近い世界のVRを作って大人数で共有して生活しても、結局現実とたいして変わらないわけですからね。娯楽目的としては中世ファンタジーぽい世界感のほうが受けが良いんです」
たしかに現実の世界よりファンタジーのほうがおもしろそうだ。
子供の頃に遊んだ剣と魔法で魔王を倒したり、お姫様を救ったりするVRゲームは楽しかった記憶がある。
「なるほどな、ありがとうよくわかったよ。じゃあうちのじいさんが一つ確保しているってことは、ベータテスターだったからってことか」
再度固まるシュン。本日これで二度目だな。
「えっー! それじゃあ並ぶ必要なんてないじゃないですか! ベータテスターなんてうらやましい! まさか転売じゃないですよね? 僕なんてアルファテストから何回も申し込んでいるのに毎回抽選に外れているんですけど!」
シュンがぶつぶつと意味不明なことをつぶやいている。なにがそこまでお前を掻き立てるんだ。
「おちつけ! もう一つ欲しいのはうちのばあちゃんと一緒にプレイしたいからだそうだ。転売とかではないよ」
「あーうらやましい。本当にうらやましい。ますます欲しくなったじゃないですか! こうなったら必ずゲットしてやる。新城さん、当日は一緒にがんばりましょうね」
キラキラな笑顔で答えるシュン。先ほどまではとは違い、その笑みに黒いものを感じるの何故なんだろうか……。
「じゃあ二人して休暇申請出しておかないとな」
「僕は今日の朝一で申請済ですけどね!」
スマートグラスのAR画面を操作して社内スケジュールを確認してみると、たしかにその日のシュンの予定は休暇になっているようだ。課長の承認済で手回しも万全か。シュン・・・・・・おそろしい子!
自身のスケジュールを確認するとその日は急ぎの予定は入っていない。担当しているプロジェクトも順調だし休むには問題ないかな。
念の為に課のメンバーやプロジェクトメンバーのスケジュールも確認。他には課長が休暇の予定なぐらいか。たぶん休んでも影響はないだろう。
「ちなみにその日は課長も休みみたいだぞ。実は課長もゲーム買いにいくのかもな」
「……ないでしょ」
「……だよな」
うちの課長は曲がった事が嫌いなお堅い上司とてして社内では有名だ。見かけも強面だし慣れてないとびびる。ゲームとかしなさそうな感じ。ましてやゲームのために休むなんて・・・・・・ないよね?




