第16話 冒険者応援チケット
7/11 2回目の投稿です。
週末明けの月曜日。少し早めに出勤して仕事の準備を行う。業務開始時間が近くなるにつれ、次々と同僚達が出勤してくる。
「おはようございます」
「おはよう。先週は助かったよ。ありがとな」
「いえいえ、お役に立ててなりよりです。ところで新城さん……」
そらきた。想定済みだよ。さあこい!
「乱入男って新城さんですよね」
「ああ」
「やっぱり! お昼に話し聞かせてくださいね」
そりゃバレるよな。情報チェックしてそうだから騒動の話は知っているだろうし、キャラの容姿が俺に似てて名前がマーサルじゃね。違うと言っても信じてもらえそうにない。似てないキャラだったら気づかれなかったのにな。失敗した。
お昼の時間になり、シュンに近くの定食屋まで拉致られると、事件について根掘り葉掘り聞かれた。こいつ、ゲームの事になるとやたら積極的になるな。いつものお前はどこに行った。
「なかなか出来る事じゃないですよ。僕がその場にいても何も出来なかったと思います」
「とっさに体が動いただけなんだけどな。プレイヤーに攻撃されても弾かれるなんてしらなくてな。恥をかいただけだったよ」
「そうだとしても、助けに入ってくれた女の子は嬉しかったと思いますよ」
キラキラの笑顔を俺に向けてくるシュン。褒められてむずがゆい。こいつのこういうところが人気あるんだよな。社内のお姉様方のハートをわしづかみだ。
「そういえばさ、どこまでレベル上がった?」
「20まであがりましたよ。カンストできました」
「……すごいんだな。俺はまだ4だ。でも20でカンストって低くないか? 100ぐらいまで上がるのかと思ってたよ」
「最初だからまだ20なんです。少しずつレベルキャップが解放されていくみたいですよ。たぶんすぐに30まで解放されるはずです」
「ふーん。カンストしたんじゃ、しばらくすることがなくなったんじゃないか?」
「それがそうでもないんですよね。20で攻略できるボスのレア報酬にスキルポイントが増えるアイテムが実装されているんですよ。増やせる上限がありますけどね。スキルレベルキャップを3から4まで解放するアイテムとか、20キャップ最強装備の素材とかもドロップしますし、トップ連中はそれ欲しさにボスに挑戦中です。僕も頑張って通わないと!」
「へ、へぇーそうなんだ。がんばれよ。俺はのんびりやるけどな」
「えー、新城さんもレベル上げて一緒に通いましょうよ。20なんてすぐですよ。僕、新城さんと一緒に遊びたいなぁ」
「俺は男だからそんなキラキラお願いビームは通用せんぞ。残念だったな」
「じゃあ今度誘いますね!」
「シュン、話し聞いてる?」
「今晩とかどうですか?」
「聞けよ!」
シュンの誘いは丁重にお断りしたが、「20になってからでもいい」とか、「僕がやさしくフォローする」とか、あの手この手で押しきられて、約束させられてしまった。そういった交渉術は仕事のほうで発揮してほしいもんだ。
「さっきも言ったが、追いつくのはだいぶ先だと思うぞ」
「そんな新城さんにご紹介したいアイテムがあるんですよ。レベル上げが大変? 熟練度上げが面倒くさい? うんうん、分かります。でも大丈夫。これさえあればレベル上げも熟練度上げも楽々――」
「どこの通販の回し者だ。さっさと言え!」
「『冒険者応援チケット』です。このチケットはなんと――」
シュンは本当にゲームの話しになると豹変する。話しを要約すると。
12時間連続でログインしなければチケット1枚貰える。
連続でログインしない時間が6時間増えるごとに貰えるチケットが1枚増える。
チケットを使用すれば経験値と熟練度とアイテムドロップ率が倍になる。
チケットの効果時間はVR時間で6時間。現実時間だと2時間。
最大チケット保持数は10枚まで。
「――と、このように社会人にも遊びやすいシステムなんですよ。平日の夜にチケット消費してもよし、週末にまとめてチケット消費するもよしです」
「でもこれってさ、長時間プレイする人には不評じゃないの?」
「長時間プレイの絶対的なアドバンテージは崩れませんよ。それにドロップ率が倍になるのをうまく利用できるから、トップの攻略組の連中も肯定的な人が多いんですよ」
「そんなものか」
「そんなもんです」
「そろそろ戻るか。昼休み終わりだし」
マサルとシュンは定食屋を出て、会社に戻っていった。
彼等は話しに夢中で気づかなかった。パーティションで仕切られた奥の席に課長が座っており、聞き耳を立てていたことに。
「あいつらもやってたのか」
ぶりの塩焼き定食を完食した課長は、そうつぶやいたのであった。
本日の昼飯は、ぶりの塩焼き定食でした。
つい頼んじゃうのよね。




