第11話 生産はスパイラル?
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生産者ギルドの受付に行き、武器を作ってみたいと相談する。
話を聞くと、スキル取得者でもスキル取得用のクエストを受けられるとのこと。
ただし報酬の鍛冶用ハンマーは貰えないらしい。俺は既に持っているので貰えなくても問題はない。
作り方を知りたかったのでその受けることにした。講師が来ると言われたので待っていると、目の前に現れたのは親方……ではなさそうな年若い男だった。
鉱物採取スキルのクエストもそうだったが、ど素人への指導は若い弟子に任せているのだろう。
これだけプレイヤーがいるんだ。簡単に親方に会えて、直々に指導を受けるなんてできるわけがないよな。無理に頼んでもどなられるのが落ちだろう。
AIキャラの人間関係とか社会構造とかはリアルに近く作っているんだな。この世界も世知辛いぜ。
紹介された彼は職人っぽい口数が少なめの男だったが、作っているところを見せてもらい、鍛冶に必要な基本的なことを丁寧に教えてもらった。
製作場所としてはギルド内の大部屋に、鍛冶を行うための生産設備が備えてある。武器鍛冶と防具鍛冶で兼用できる共用設備だ。利用は無料なっている。
さらに設備が整った部屋もあるそうだが、そちらは有料となる。
大部屋の設備は部屋の真ん中に大きな炉があり、その周囲にいくつもの金床が置いてある。利用者は空いている場所で作業ができる仕組みだ。鍛冶設備っぽい雰囲気だが、製作そのものはゲーム操作の簡易的な手順で作ることになる。
生産品のレシピは、基本的なものであればギルドに聞けば教えてもらえる。ギルドでは把握していないレシピもあり、職人達が秘伝としてる。自分で模索してレシピを発見する方法もあるそうだが、手間がとんでもなく掛かるらしい。
ぶっきらぼうな職人の話しをまとめるとこんな感じだった。
作り方は覚えたので、鍛冶用のハンマーに装備を変更し、ブロンズインゴットの作成に取りかかる。
「ブロンズインゴットのレシピは、銅鉱石4個と、スズ鉱石1個だったな」
銅鉱石とスズ鉱石を炉にぶち込んだ。これで生産準備は完了だ。もう後戻りはできない。炉にぶち込んだ鉱石が塊になったところで取り出し、金床の上に置く。
「まずは無難に一つ作成してみるか」
金床の上に置いた塊をみると、白くぼんやり光っている部分と、青くぼんやり光っている部分が見える。俺は白のほうを狙ってハンマーで叩く。最初に叩いた時から生産開始だ。
生産を開始するとカウントダウンが始まる。これがゼロになるまでに完成させないと製作失敗となる。
「まず白いほうを叩いてっと」
白を叩くと、白と青の光が消えて、完成率のゲージが上がった。少し時間が経つと、ふたたび白と青で光り出した。どうやら連続で叩けないような仕様になっているようだ。毎回、白を叩いてみると、残り時間に余裕を持って完成させることができた。
そしてできたブロンズインゴットがこれだ。
『ブロンズインゴット 品質:★』
やはり最低品質の星一つで完成したようだ。
次は青も叩いて品質を上げることに挑戦してみよう。
―――――
ブロンズインゴットの製作を51回繰り返した結果、銅鉱石を使い切ってしまった。あれから品質を上げるために、いくつものパターンで製作して検証してみた。その結果、コツは分かってきたんだ。でもちょっと検証にはまりすぎたみたいで……。
品質が星一つなのが12個、星二つなのが5個、星三つが2個、全部で19個のブロンズインゴットが手に入った。逆に言えば32回分の材料を無駄にしたことになる。
「つい夢中になって調子に乗っちまった! お金稼ぐつもりだったのに……」
鍛冶を続けるのに鉱石を掘りたい。
つるはしがないと採掘ができない。
採掘ができないと鍛冶ができない。
このループを抜け出すにはブロンズピックが必要だ。それにはこのブロンズインゴットで、ブロンズピックを作ればいいんだ。
予想なら武器鍛冶スキルで作れるはずだ。製作に必要なレシピは生産者ギルドのレシピ帳を見れば分かるはず。職人の兄ちゃんが言ってたし、間違いない。
さっそく受付まで戻り、備え付けのレシピ帳を確認する。
「ブロンズピックのレシピは……どれどれ? ブロンズインゴット2個に、カエデ材が2個か。カエデ材?」
今度はカエデ材のレシピを調べてみる。
「木工スキルのレシピでカエデの原木が必要ね。なるほどね。」
つまりこういうことか。
ブロンズピックを作るにはカエデ材が必要だ。
カエデ材を作るには木工スキルが必要だ。
カエデの原木を伐採するのには、たぶん植物採取スキルが必要そうだ。
ふむふむ、なるほどね。
「やってられるか!」
そう叫ばずにいられない。スキルポイントを使えば木工スキルも植物採取スキルも取れるだろう。だけどそこが問題なのではない。ここでさらに手を広げると泥沼にはまりそうな予感がするんだ。
「広場のバザーをあたろう。カエデ材が手に入るかもしれない……」
そうつぶやいて冒険者ギルド前の広場に向かうマーサルであった。




