股間で眠れ
結局、開きっぱなしの社会の窓は、モザイさんに縫ってもらいました。
一人暮らしの長かったモザイさんは、裁縫も得意だったようだ。
針と糸はどうしたかって?
モザイさんの陰毛は、針にも糸にもなる便利な物だったのだ。
実際は陰毛がすごいのではなく、モザイさんのスキルらしいが。
股間のモザイクも、モザイさん御手製らしい。
そんなこんなで、やっと大手を振って人前に出れる状態になったわけではある。
意識せずとも、歩みは速くなろうというものだ。
気がつけばすでに、ネトリ村へ到着とあいなった。
「ネトリ村へようこそ」
そう、看板である。
こんな小さな村に、門番もへったくれも無いものだ。
日本で言えば、村と言っても結構な広さがあるもので、一望できるというようなことはそうそう無い。
それに比べネトリ村は本当に小さい、20軒程度の家がせせこましく柵の中に建っている、そんな感じだ。
今は亡き村長が言っていたように、少しばかりの畑はあるようだが、それにしたって驚くほどの面積は無いだろう。
本当に慎ましやかな村である。
俺が村の入り口で立ちつくしていると、モザイさんが今日は実家に泊まっていくようにと言ってくれる。
ありがたい…
異世界に来てからこっち、持ち物も収入も無い状態で、これからどうするのか何も考えていなかった。
ここは御好意に甘えておくべきだろう。
ただし、油断はしない。
いくらモザイさんが良い人だからと言って、全幅の信頼を預けるのはまだ早い。
そもそも、この村の現状としては、少子高齢化が進み、畑もまともに運用できていないという話から、まともな経済状況では無いと思われる。
そこから導かれる答えとしては、身売り、人身御供、窃盗…
それらを村ぐるみで計画している、なんてことも可能性としてはゼロでは無いのだ。
そう、村長は俺を農作業の人手などと言ってはいたが、残された村人からすれば、騙して奴隷として売り飛ばせばもっと手軽に金になるといった考えに走らないとも限らない。
奴隷制度があるかどうかは、未だ不明ではあるのだが。
用心するには越したことがない。
と、思っていた時期が僕にもありました。
モザイさんの家に到着した俺は、かなりの歓待を受けることになる。
出てくるご飯すべてが美味で、これでもかという量。
食っても食っても肉肉野菜肉野菜果物に酒にスイートロール
どこが滅びる寸前の村なんだ?と思いきや
少子高齢化に頭を悩ませていたのは、畑至上主義の前村長だけであって、実際の村は魔法のアイテム特需で空前の好景気らしい。
村長無駄死にだな。
そうして寝室に戻った俺は、噂のマジックアイテムを堪能している。
「そう、貴方の名前はボータローって言うの?うふふ…不思議な響きの名前ね」
「そうかい?自分じゃいたって普通の名前だと思っているんだがね」
「普通…そうかもしれない、ただ、初めて閨を共にする男に不思議な魅力を感じているのは確かよ?」
「俺にとっては初めてじゃないがな、いや、君みたいな子とは初めてか?」
「昔の女のことは忘れて、今は私だけを見て…それがルールよ?」
「野暮ですまんな、今は君だけだ…」
「うふふ…そう、それでいいのよ…」
そう、件のマジックアイテム「喋る枕」だ
今まで産まれてこの方彼女のかの字も無かった俺が、なんとピロートークできてしまうという優れ物。
確かにこれは売れるだろう。
俺だって一個欲しい。
欲しい
欲し…
むにゃ