股間が光った日
今日も今日とて社畜の日々。
頑張っても頑張っても、良いことなんてありゃしない。
おまけに、俺の性格と言えば、日本一と言ってもいいくらいのネガティブ思考。
何をやるにも、マイナスな結果を想定してしまう。
そのおかげで助かったことも無いでは無いが、毎日がこんな調子で楽しいわけが無い。
「生きていくのがめんどくさい、かと言って死んだ後なんてどうなるかわからないし、予想のできないことはしたくない。」
「だから、死ぬわけにもいかない」
帰宅途中、寒空を眺めながら呟く。
手詰まりである。
人生手詰まり。
進むのもめんどくさいが、退くのも物理的に無理。
普通の人だったら、諦めて進むだろう。
だって、退くのは無理なんだから。
無理と言われても、嫌なものは嫌なのである。
故に手詰まり。
「とりあえず、風俗でも行ってすっきりするか…」
行くも退くも選べない俺が選んだのは、現実逃避だった。
「ふーすっきり」
成人男性ともなると、ねずみの国に行くのは恥ずかしいが、泡の国に行くのはコンビニに行くより気安い。
軽くなった股間の御袋さんと、さらに軽くなった財布を尻ポケットに、家路を急ぐ。
頭の中では、さっきの泡姫さんの乳が良かった締まりが良かったなどと思い返しつつ。
生来の癖で、NNだったけど病気大丈夫かな…なんて後ろ向きなことを考えていると。
急に股間が熱くなってきた。
すわ、やっぱり御土産でも頂戴してしもうたか!
などと思い、いやいやさすがに症状出るの早すぎでしょ?なんて焦っていると。
熱いどころか、股間からまばゆい閃光が走る。
暗い夜道を照らすトナカイさんの鼻、なんて可愛いもんじゃないほどの爆発的な閃光と共に、俺は地球上から姿を消した。
仁久 棒太郎 37歳 男 サラリーマン
持ち家無し 彼女無し 家族無し
こうして俺は、わけも分からぬまま異世界へと旅立った。