第九章【9】
「まって!ちょっと、待ってください」
ワタシは、とっさに、ショウに駆け寄ろうとしていた。
手首に激痛が走り、自分が縛られたままであることにあらためて気付く。
縛られたままの自分がもどかしくて仕方なかった。
すぐにでも、ショウの元へ駆け寄りたかった。
ショウを抱えた男たちは、ワタシの言葉に立ち止まり、そして、しきりに靴を気にしている男に向き直った。
男は、こんなことで、なぜ、わざわざおうかがいをたてるんだという表情で、黙ってドアを顎で指し示した。
男たちが、ドアに向かって歩き出す。
「まってよ!!」
ワタシは、叫んでいた。
「ショウ!」
ワタシは、去りゆくショウの背中に話しかけた。
「三ヶ月後、半年後でも、いや、一年後でも、三年後でもいいから会いに来てほしいな……」
ショウは、力なく首をうなだれたままだ。
「それだけで、
もう、それだけで
ワタシ、十分だよ」
男のひとりが、ドアに手をかける。
ショウが、行っちゃう……
「ショウ!!」
ワタシは、ひときわ大きな声で叫んでいた。
「もう、無理かもしれないけど……また、ショウのお弁当が食べたいな」
だらりとうなだれていたショウの首が、ゆっくりと、天を仰いだ。
そのショウの後ろ姿は、きっと溢れる涙を、流さないようにしているんだと、ワタシには、そう感じられた。
いつの間にか……
部屋には、ウエディングドレス姿で縛られたままのワタシだけが残されていた。




