第九章【7】
「ククク……ハ…ハハ……」
ショウが、突然、笑った。
それは、諦めにも似た、自嘲的な乾いた笑い声だった。
苦しそうに半身を起こしながら、男に向き直る。
「彼女をここで失ったら、5億円の損失ってか?」
ショウは、男を睨みながら、吐き捨てるようにそういった。
一瞬で男の表情が険しくなった。
男は、ショウに駆け寄ると、半身を起こしているショウの胸元に渾身の力で蹴りをいれた。
「あー、お前、ホント、むかつくわ。お前ら、もう少し、可愛がってやれ!」
男の命令で、控えていた二人の男が、ショウに襲いかかる。
「ショウ!」
「ショウ!!」
ワタシは、殴られ続けるショウをただ、泣き叫び、見続けることしか出来なかった。
ひどい。
ひどすぎるよ……
リーダー格の男は、そんなショウと部下二人をまるでスポーツ観戦でもするかのように涼しい顔で眺めている。
涙があふれてきた。
ワタシは、男を睨みつけた。
そして、なにかいおうとしたが、もはや、言葉にはならなかった。
憎悪や、
哀願や、
不条理や、
やるせなさ……
物凄い感情の渦が、ワタシの心をズタズタにする。
そして、それらは、言葉にならない慟哭となり、ワタシの口から流れでてくる。
「あー、うるさい女だなぁ……ちょっとは、黙って見てろよ」
男は、辟易した様子で、胸ポケットを探っている。
そして、タバコを探し出し、火をつけながら、
「殺しゃしないよ。まだまだ、働いてもらわなきゃならんしな……」
ぼそりと、ワタシにしか聞こえない声で、つぶやいた。
「でも、でも、もう、ショウ、動いてないよぉ」
ワタシは、なんとか言葉を絞り出した。
先程から、ショウは、ぐったりと、二人の男に殴られるに任せている。
「ショウ、死んじゃうよぉー」
ワタシは、ひときわ大きな声で叫んだ。
ワタシの言葉が、二人の男に届いたのか、男たちは、攻撃の手を止め、ショウを怪訝そうに覗きこんだ。
ショウは、動かない。
地面に伏せたまま、ぐったりとしていた。
「ったく、しゃーねーな」
タバコの煙を吐き出しながら、めんどくさそうに、男がつぶやいた。
「おい、水持って来い」
男は、2人の男たちに、不機嫌そうにそういった。
すぐに、2人のうちの1人が、ドアから消えていった。




