第九章【4】
あれほど待ち望んでいたショウが、静かにワタシに近づいてくる。
ショウは、決意を秘めた真剣な表情をしていた。
ワタシをしっかりと見据えながら、足を引きずって歩み寄ってくる。
しかし、瞳の光だけは、なぜだか、優しげだ。
海底の闇の色ではあるが無性に包み込まれたい衝動にかられてくる。
表情とは裏腹に、優しく暖かな瞳だった。
それにしても、
ショウの姿は、惨たらしい。
おそらく、複数の人間から凄惨なリンチを受けたのだろう。
ショウが近づくにしたがって、様々な傷が、あらわになってくる。
ワタシは、ショウになんと声をかけたらいいのだろうか?
分からない………
自分が、死にたいのか、生き続けたいのかすら、分からなかった。
ショウは、ワタシが抱きしめてといったら、すぐに腕を廻してくれそうな距離で、立ち止まった。
ショウが、右手を振り上げ、一歩踏み込んだら、ナイフは、深々と私の身体を貫くだろう。
しかし、ワタシは、まだ、ショウにかけるべき言葉がまるで思い浮かばないでいた。
歩みを止めたショウは、ずっと、ワタシを見つめていた。
ワタシの言葉を待っているのだろうか?
それとも、ショウ自身も、最後にかけるべき言葉を探しあぐねているのだろうか?
随分と長い間、私たちは、身じろぎもせず、見つめ合っていた。




