第九章【3】
ショウは、静かに話し始めた。
「ここを出ることも、逃げ出すことも、かなわない……」
「………」
ワタシは、なんといっていいかわからず、ただただ、ショウを見つめていた。
唯一の希望が絶たれたのだ。
それは、痛いくらいわかっていた。
でも、今のショウの姿を目の当たりにして、どうして、泣き叫ぶことが出来るだろうか?
ショウは、ドアから一歩一歩ゆっくりとワタシの元へ歩き出し始めた。
右足も、怪我をしているようで、引きずる姿が痛ましかった。
重心がかかるたびに、顔をしかめている。
「この怪我、ワタシのために?」
ワタシの問いに、ショウは、自嘲した。
「こんな組織を信じた僕が馬鹿だったよ……」
「やっぱり、その傷……」
「僕のことは、どうだっていいんだ。僕がどうなろうと、それは、自業自得なんだから……」
ショウは、そういうと、部屋のなかほどで立ち止まった。
そして、まっすぐにワタシを見つめ、しっかりした口調で、こういった。
「出してあげることも、逃げ出すことも出来ないけど………
今すぐ、この苦痛から解放してあげるよ……」
ショウは、ゆっくりと背中に手をまわした。
右手には、いつの間にか、大きなサバイバルナイフが握られていた。
「………」
ワタシは、言葉を紡げなかった。
ショウが本気なのは、表情で分かった。
ワタシは、ショウに殺されるのだろうか?
でも、なぜか、怖くはなかった。
蛍光灯の光が反射して、ナイフの切っ先が鈍く銀色に光っていた。




