第八章【12】
鶴は、100羽を越えていた。
ショウとは、あれから、一度も、会ってなかった。
連絡すらなかった。
それなのに、ワタシは、なぜか、不安じゃなかった。
どういうわけか、必ず、ショウが、迎えに来てくれると信じていた。
ショウは、3ヶ月我慢してくれといった。
でも、その期限は、とっくに過ぎていた。
ワタシは、なぜ、こんなに落ち着き払っているのだろう。
自分でも不思議だった。
ワタシは、ショウをたまらなく好きだ。
日が経つにつれ、その思いは、強くなっていった。
でも、ショウは、どうなんだろう?
最近、ぼんやりと、そんなことを考えるようになった。
ショウは、青アザだらけの身体を綺麗だって、いってくれた。
沢山のオトコにけがされたワタシの身体を、いつくしむように愛してくれた。
しかし、そこに、本当の愛は、あったのだろうか?
ショウが、思っていること、
それは………
後ろめたさ
罪悪感
哀れみ
慈悲
同情
ワタシの思うショウは、いつも、悲しそうな顔をしてワタシを見ていた。
ショウは、気付いたら、組織にどっぷり浸かっていたといった。
ショウが好んで、こんな仕事引き受けていないことは、明らかだ。
多分、やめられないのは、脅されているのか、辞めたくても辞められない理由があるからだろう。
ワタシが、ずっと、監視カメラで見張られているように、ショウも、きっと、組織に監視されているんだ。
でも、ワタシが、無事にここを抜け出すことが出来たら……
ショウに足を洗うように、
この組織を抜けるように、
そして、一緒に逃げようって、いってみよう……
ワタシは、思い出していた。
ショウの部屋の机の前の壁には、コルクボードに沢山の外国人との笑顔の写真が無造作に刺してあった。
多分、小さな頃、外国で長い間暮らしていたというのは、本当のことだろう。
外国語が堪能だろうし、その気になれば、いくらでも、海外で暮らしていけるだろう。
組織も、海外までは、追ってこないんじゃないか?
そして、見知らぬ土地で、しばらく暮らして、何年か経ってから、日本に帰国したら……
でも、仮に、ショウがその気になってくれたとして、ワタシは、ショウの助けになれるのだろうか?
ハハハ……
ワタシは、そこまで考えて、いつも、虚しく笑う。
いつも、
いつも、
そうだ。
ワタシは、ショウの足手まといにしかならないじゃないか?
ワタシには、なにもない……
誇れるものも、
得意なものも、
ヒトの助けになれるような、そんなもの、何一つもってないじゃないか?
そんなワタシと、ショウは、一緒に逃げてくれるだろうか?
ありえない。
ありえないよ。そんなこと……
ワタシは、今までの自分を呪わずにはいられなかった。
自分自身を、許せなかった。
ワタシは、今まで、自分に課せられた仕事すら、満足に出来てなかったじゃないか?
高校も、中退しかけたし、バイトも、続かなかった。
何かに、理由をつけ、逃げてばかりいたじゃないか?
店長と上手くいかなかったのだって、そもそも、ワタシが、無断欠勤や遅刻を繰り返したからじゃないか……
こんな何一つ出来ないワタシが……
ショウに、好きだと告白し、一緒に逃げてくれなんていえるわけがない。
ショウとは、なにもかも、違いすぎる……
でも、
でも、
それでも、ワタシは、ショウに告白しなきゃだ。
多分、ワタシは、捨てられるだろう……
でも、それでいいんだ。
今までの自分にサヨナラし、新しい自分を始めるんだ。
パパやママにも、謝らなきゃいけないし、今度こそ、きちんとした仕事を見つけて、まじめに働こう。
約束の期限は、とっくに過ぎていた。
なのに、ワタシは、自分でも、驚くほど落ち着いて、ショウとの再会を待っていた。




