第八章【6】
起きて客の相手をし、シャワーを浴び、お弁当を食べ、そして、また、客の相手をする。
再び、シャワーを浴び、帰ってきた部屋には、お弁当と薬が置いてある。
弁当を食べて、薬を飲む。
そして、眠くなったら眠る。
客の相手は、苦痛以外のなにものでもなかったが、それを除けば、とても、単調な日々だった。
「まるで、パパみたいだ……」
ワタシは、ベッドで膝を抱えながら、今の状況をパパの生活に置き換えていた。
パパは、市役所に勤めていた。
20数年間、無遅刻無欠席で、本当にそれだけがとりえのヒトだった。
少なくとも、ワタシは、今までそう思っていた。
そして、生真面目に淡々と日々の勤務をこなしているパパを、心のどこかで、馬鹿にしていた。
ワタシは、パパのように、なりたくない。
こんな単調な生活なんて、まっぴらゴメンだ。
学校を休んで、友達と遊ぶようになったのも、パパの生真面目さに、息苦しさを感じていたからだった。
いつか、ワタシは、モデルとか、芸能人になって、あるいは、素敵な男性にみそめられ、パパを見返してやるんだ!!
そう強く思っていた。
でも、それは、なんの裏づけも、根拠もないことだった。
多分、何回となく、他人には、可愛いといわれたり、綺麗だといわれたりしていたので、それだけで、ワタシは、気分が良くなり、なにか出来るような気になっていたんだと思う。
そして、その結果が、これだ……
ホントに情けなかった。
そもそも、高校3年の時、出席が足りなくて、留年となっていたところを、なんとか、追試を受けるように説得してくれたのは、パパだった。
パパが、わざわざ学校に出向いて担任に頼み込んでくれなかったら、ワタシは、退学していただろう。
パパは、だれよりも、ワタシのことを考えてくれていたのに……
それなのに、ワタシは、パパに、ひどいことばかりしてきた。
わがままばかりいってきた。
ワタシは、友達の前で、「カッパ頭は、キモイから早くどっかいって!!」って、平然と言い放っていた。
パパは、嫌な顔ひとつしないで、むしろ笑って、照れた仕草で、リビングから退散したが、いったい、どんな気持ちだったろう。
そもそも、パパの頭が、こんなになったのは、ワタシが迷惑や心配ばかりかけていたからかもしれないのに……
『パパもママも、きっと心配しているだろうな………』
でも、パパとママと再会するとき、ワタシは、いったい、どんな顔をしたらいいんだろうか?
その時のことを思うと、ワタシは、たまらなく心が重くなった。




