第八章【5】
ワンさんの腕前は、本当に見事なものだった。
加えて、髪型や、化粧のレパートリーがとても豊富だった。
ワタシは、いろんな衣装を着せられ、様々な化粧を施されて、客の前に出た。
あの嫌な男が、客の好みを事前に説明した。
そして、ワタシは、その客が喜ぶように努めるようになった。
ショウがワタシを、ここから出してくれるために骨を折ってくれているのだ。
ワタシも、出来るだけのことをして、少しでも、ショウの役に立ちたかったし、足を引っ張ることだけは、したくなかった。
ワンさんは、スタイリストとしてワタシに接するだけでなく、今までと同じように、身の回りの世話もしてくれた。
お弁当や薬を持ってきてくれたり、トイレのカートリッジを交換してくれたりした。
客によっては、浣腸を強要するものもいたので、ワタシは、出来る限り、この部屋の簡易トイレで、すませていた。
そうしないと、客の前で、凄く恥ずかしい思いをしなければならなくなる。
もっとも、客は、そのほうが、喜ぶのだろうが……
ワンさんは、美容師として、凄い腕を持っているのに、嫌な顔ひとつしないで、時には、鼻歌を歌いながら、涼しい顔で、トイレの汚物を交換する。
ワタシは、ワンさんが、トイレのカートリッジを覗くたびに、申し訳ない気持ちになった。




